イー・アクセスは5月12日、敵対的買収を防ぐため、ポイズンピル(毒薬)と呼ばれる新株予約権を導入すると発表した。「企業価値向上新株予約権(eAccess Rights Plan)」と呼ばれるこの新株予約権は、有事に新株発行をするかどうかの判断を社外取締役で構成される「企業価値向上検討委員会」が決定する点が特徴だ。6月22日に開催予定の定時株主総会で承認を得た後に導入する。
ポイズンピルは第三者が敵対的買収を仕掛けてきた時に新株を発行することで、買収者の持つ株の比率を引き下げると同時に総買収コストを引き上げて買収を防ぐものだ。OracleのPeoplesoft買収やライブドアのニッポン放送買収などで導入されて一躍注目を集めた。
この手法は敵対的買収を防ぐ点で効果があるものの、買収を受ける側の経営陣が保身のために新株を発行して買収を防ぐことは株主利益に反するとの指摘が出ていた。これに対してイー・アクセスは、新株発行の是非を社外取締役の判断に委ねることで透明性を高める狙いだ。なお、イー・アクセスの取締役は10名のうち7名が社外取締役となっている。
また、検討委員会が新株予約権の発動を検討する制度にすることで、買収提案の妥当性や代替案について検討する時間的猶予を確保でき、企業価値の最大化につながるとしている。
このプランは発動時に設定される基準日において、原則として買収を仕掛けた株主以外の全株主に所有株式数に応じた新株予約権が発行される。このため、既存株主の持株比率が希薄化せず、株主の利益が損なわれずにすむという。また、3年ごとに定時株主総会で同プランの存続をはかることにしている。
2005年3月期の決算は予想値を上回る
イー・アクセスは同日、2005年3月期の決算も発表している。ISP事業のAOL買収や高速の50Mbpsサービスなどが好調で、2月に発表した業績予想を上回った。売上高は前期比51.8%増の579億700万円、営業利益は同124.9%増の93億900万円、経常利益は同196.2%増の80億6800万円、純利益は同296.9%増の93億5200万円となっている。 2月の予想値は売上高580億円、営業利益80億円、経常利益70億円、純利益80億円だった。
ADSL事業の加入者数は2005年3月末時点で1850万件、ISP事業の加入者数は314万件(イー・アクセスのADSL利用者を除く)となった。AOLはイー・アクセスの販売チャネルを使った加入促進が効果をあげ、2005年3月には加入者が3年ぶりに純増に転じたとのことだ。
2006年3月期の業績については、ADSL事業、AOL事業が引き続き好調に推移して増収となるものの、携帯電話事業の参入準備にかかる費用がかさむことから大幅な減益になると見込んでいる。携帯電話事業の費用は人件費や実証実験費用などで25億円となる見通しで、売上高は前期比1.0%増の585億円、営業利益は同24.8%減の70億円、経常利益は同31.8%減の55億円、純利益は71.1%減の27億円と予想している。
この予想を受けて、5月12日のイー・アクセスの株価は前日比1万円安(12%安)の7万1900円と急落した。この下げ率は全取引市場の中で8位だった。
携帯電話事業については、5月下旬にもMotorolaや富士通と共同で1.7GHz帯を使ったW-CDMAの実証実験を東京都内で行う。携帯電話端末からの接続実験のほか、固定と無線を融合させたサービスの実現に向けて無線LANとW-CDMAの接続実験も行うとしている。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」