ニッポン放送がフジテレビジョンに対して行う予定の新株予約権の発行について東京高等裁判所は3月23日、ライブドアの主張を認めて発行の差し止めを命じた東京地方裁判所の仮処分を支持した。ニッポン放送は、3月11日の東京地裁の仮処分決定を不服として3月16日に東京高裁に保全抗告していたが、これが棄却された。
ニッポン放送はこの棄却を受けて、「正当性を確信してきたが、認められずまことに遺憾だ。今後の対応については検討する」とコメントし、3月24日にフジテレビを割当先として予定していた新株予約権の発行を中止した。新株予約権は、1株あたり5950円で発行済み株式総数の3280万株を最大で1.4倍も上回る4720万株の新株を購入できるものだった。
ライブドアは、東京高裁の棄却を受けて記者会見を開いた。冒頭に代表取締役社長兼CEOの堀江貴文江氏は、「東京高裁の判断はきわめて妥当なもので、ニッポン放送の新株予約権の発行は不可能になった。これまでどおり、ライブドアはニッポン放送への資本参加、フジサンケイグループとの事業提携を通じて、メディアとインターネットを融合した事業展開を目指していく」と語った。
ニッポン放送株式の保有比率については、「議決権ベースで過半数近くの株式をすでに保有していることはたしかだが、『過半数を取得している』というプレスリリースを出したことはない」として、現時点で過半数を超えていないことを示唆した。
そのうえで「大株主としてニッポン放送の経営に参画させてもらうつもりで、その詳細は協議して進めていく考えだ。協議できるようになったので、一歩前進した」と述べ、ライブドアとフジテレビがニッポン放送の価値を高めるために、業務提携の可能性などについて担当役員レベルですでに協議を行っていることを明らかにした。「ニッポン放送はフジテレビ株式の22.5%を保有しているので、これを活かすためにはフジテレビとの友好的な業務提携は欠かせない」と説明した。
ニッポン放送への役員の派遣については「今は考えていない」とし、「一部報道では従業員が懸念しているとも伝わるが、従業員や取引先と共に企業価値を高めていくことを目指している。現場のオペレーション体制を最初から変えてもらうことはしないし、亀渕昭信社長をはじめとする現状の役員にも続投してもらいたい。我々は放送事業に関しては素人同然なので、教えを請うて一緒に活気あふれたニッポン放送にするためにもり立てていきたい」と力を入れて語った。
また、具体的なニッポン放送との事業については「ニッポン放送には音声メディアとしてノウハウと経験がある。これとインターネットをうまく連携させ、聴取者をインターネットへ誘導してネットラジオ的なものや音楽コンテンツのネット流通、通販など収益の多角化を考えている」とし、「収益はレベニューシェアなどの形を採りたい」と言う。また、「ライブドアクレジットやライブドア証券で培った金融テクノロジーやノウハウを駆使して、効率的な運用アドバイスもできる」と、ニッポン放送の金融資産についても話はおよんだ。
この一方で、フジテレビ株式の保有比率については「どのくらい保有しているかは言えない。言わなくてもいいぐらいしか持っていない。ただし、現状でフジテレビの株式を買い増す考えはない」と、こちらも詳細は避けた。そのフジテレビは3月22日に、ライブドアからの敵対的買収に対抗するために、3月30日から2年間にわたりいつでも迅速に500億円分の株主割り当て増資ができる新株の発行登録を行うことを発表した。これについて考えを求められると、業務提携へ向けた協議への配慮なのか「答えは保留したい」と述べるにとどまった。
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