VCになったビル・ジョイに聞く、テクノロジーの未来

Dawn Kawamoto (CNET News.com)2005年04月14日 12時43分

 今年のはじめに、Bill JoyがKleiner Perkins Caufield & Byers(KPCB)のパートナーに就任したと聞いたとき、その意外な取り合わせに当惑した人もいるだろう。

 シリコンバレーを代表するベンチャーキャピタルが、「黙示録の第5の騎士」とあだ名される人物を、その中枢に招き入れるとは(訳注:新約聖書「ヨハネの黙示録」によると、世界の終わりには「疫病」「戦争」「飢饉」「死」を象徴する4騎士が現れる)。

 しかし、このようなあだ名は、この有名な開発者と、彼が5年前に「Wired」誌で発表した刺激的な論考を曲解したものだ。

 先端分野--生物学とテクノロジーを融合させた遺伝子工学など--の研究がはらんでいる倫理上の問題に光を当てたこの論考は、発表と同時に一大論争を巻き起こした。しかし、これは科学技術者として数多くの功績を残してきたBill Joyが、長年の経験からたどりついた見解だった。

 Joyはカリフォルニア大学バークレー校の大学院生だった当時、Unix系のオペレーティングシステムを開発した(このプログラムは後に高い人気を得ることになる)。その後、彼は仲間と共にSun Microsystemsを創業し、同社のSolarisオペレーティングシステムやUltraSparcプロセッサの開発を率いた。

 厳密にいえば、Joyがベンチャーキャピタルに関与するのはこれが初めてではない。Joyは2003年にSunを退社した後にも、Sunの元社員だったAndreas Bechtolsheim(現在はSunに復帰)、Roy Sardinaと組んで、HighBar Venturesというベンチャーキャピタルを立ち上げたことがある。同社が支援したベンチャーとしては、昨年4億7500万ドルでSymantechに買収されたスパム対策企業BrightMailが有名だ。

 先日、CNET News.comはJoyにインタビューを行い、産業社会におけるテクノロジーの利用について、またベンチャーキャピタルの視点から見たITビジネスの今後について話を聞いた。

--あなたの論考が『Wired』誌に掲載されたのは2000年のことでした。21世紀の社会にとって、テクノロジーは善なのか、悪なのか--その答えは出ましたか。

 当時と比べて、テロリズムに対する認識が高まったことは間違いありません。テクノロジーが濫用される可能性も、広く認識されるようになりました。しかし、テクノロジーには大きな善を成し遂げる力もあります。現代人が直面しているさまざまな問題--たとえばインフルエンザの蔓延などは、テクノロジーを利用することで解決できる可能性があります。

--産業社会におけるテクノロジーの利用に関して、あなたが最も懸念していることは何ですか。

 利潤動機と責任ある管理の両立です。利潤動機は人々の創造性を刺激し、倫理的な行動を促しますが、一方でテクノロジーの濫用を招く危険性もあります。科学的な社会では通常、両者のバランスは法と規制によって実現されていますが、バランスを保つことの意義は強調しておかなければなりません。

 4年前の同時多発テロを機に、この種の危険性は明確に認識されるようになり、人々の考え方も進化しました。

--シリコンバレーは新しい技術の開発に慎重になるべきだと思いますか。

 新しい技術がもたらす影響は、個々の研究者が研究の過程で対処しきれるようなものではありません。求められているのは個人責任ではなく、集団責任です。たとえば、強力な新技術が続々と生み出されている生物学の世界では、研究者は自分の研究分野だけでなく、学問領域全体に目を配り、そこで起きているさまざまな事柄に対して、意見を述べることが非常に重要です。

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