次世代のディスプレイとも言われる有機ELが、ついに携帯電話のメインディスプレイとして利用されることになりそうだ。
東北パイオニアは10月20日、携帯電話のメインディスプレイで利用できる有機ELディスプレイを2004年度中に量産化すると発表した。すでに納入先は決まっているといい、2005年春の納入開始を目指す。
東北パイオニアは1997年に世界で初めてパッシブ型有機ELディスプレイの量産を行った企業で、現在は富士通製のNTTドコモ向け携帯電話端末の背面ディスプレイなどに採用されている。同社の有機ELパネル出荷累計数は2004年3月に1500万台を突破し、2005年3月までに2000万台を超える見通しだ。
今回同社が開発したのはアクティブ型と呼ばれる方式。パッシブ型に比べて低電圧、小電流でも輝度が高く、高精細化しやすいのが特徴だ。東北パイオニア代表取締役社長の山田昭一氏は「これまで有機ELは“液晶を超える次世代のディスプレイ”と言われながらも、開発は遅々として進まなかった。しかし、パッシブ型の量産から7年経ち、アクティブ型もいよいよ一般の利用者に使ってもらえるレベルに達した」と話す。
すでに子会社のエルディスが有機EL向けのTFT(薄膜トランジスタ)基盤の量産を10月から開始しているといい、今月中にも東北パイオニアに納入が始まる見通しだ。
アクティブ型有機ELディスプレイを搭載した試作品 |
同日からパシフィコ横浜で開催中のフラットパネルディスプレイに関する展示会「FPD International 2004」では、量産予定の2.4インチディスプレイが50枚ほど展示されている。26万2000色のフルカラーで解像度はQVGA(240x320)、輝度は150cd/m2、コントラストは500:1以上、パネルの厚みは1.66mmとなっている。寿命は輝度150cd/m2で5000時間、100cd/m2で1万時間程度という。
東北パイオニア 有機EL事業部 常務取締役 事業部長の西岡亮氏によると、展示品は量産ラインで製作されたものといい、「200枚以上を作ったが、ほぼ均質なものができた。ある人には、『昨年発表した試作品では20カ所ほど欠陥を見つけたが、今回は見つけられなかった』と言われたほどだ」と自信を見せた。
ただし価格については、「液晶とは比べ物にならないほど高い」(山田氏)という。「取引先とはアプリケーションに応じて価格ターゲットを決め、一定の期間内にそこまで値段を抑えるという約束で納得してもらっている」(同氏)
2006年度には売上高200億円、単年黒字化へ
今後の事業予測については、「(パッシブ型とアクティブ型を合わせた)有機EL事業は2006年から2007年に単年黒字化を目指す」(山田氏)とする。同事業の売上高は2006年度に200億円を予定している。なお、パッシブ型有機EL事業は2003年度に売上高150億円超、単年黒字化を果たしている。
当面は携帯電話のメインディスプレイをターゲットとするが、将来的にはデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ向けの2.5インチQVGAディスプレイや、デジタル放送が受信できるポータブルテレビ向けの4インチVGAディスプレイなども手がけていく予定。また、カーナビゲーション向けの中型サイズも視野に入れているという。
ただし据え置き型テレビ用の大型ディスプレイについては、「投資額が大きくなり、体力勝負では勝てない」と山田氏は話しており、中小型に絞って勝負する方針としている。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」