ファイル交換ネットワークの規制方法をめぐり米議会内で戦わされている激しい論争が意外な展開を見せている。
米著作権局はInduce Act(誘発法)の新たなバージョンを策定した。同局はこの新Induce Actにより、携帯型ハードディスクやMP3プレイヤーなどのハードウェアは合法としたまま、KazaaやMorpheusといったPtoPネットワークだけを禁止できると考えている。
Induce Actの原案は、Apple ComputerのiPodのような製品も著作権侵害行為を誘発し得るとして違法となる可能性があることから、激しい批判を浴びてきた。
米第9巡回区連邦控訴裁判所が8月19日に、GroksterとMorpheusの両ファイル交換ネットワークの運営を合法とする判決を下したことで、米議会には衝撃が走った。そのため、全米レコード協会(RIAA)などの業界団体とレコード/映画業界の族議員は、同判決を覆す可能性のあるInduce Actなどの法制定に躍起になっている。
著作権局が2日付で作成した4ページからなる「討議草案」は、CNET News.comで一読した限り、著作権侵害行為を理由に企業に法的責任を問うのがさらに困難になっており、侵害行為の徹底排除を目指す元のInduce Actから後退しているような印象を与える。同草案では、著作権侵害行為を「故意に誘発した」者は法的責任を負うと定めているが、ここに言う「誘発」とは、「それを受けた個人あるいは複数の人間が(著作権法違反行為に)及ぶことが当然予想される、積極的かつ明白な(1つ以上の)行為」と定義されている。
しかし著作権局案に対しては、同案が原案と同じ欠陥を数多く抱えている点を憂慮する消費者団体やインターネットサービスプロバイダ(ISP)から反対の声が上がっている。同案には、たとえば著作権保持者による著作権侵害者の身元特定の取り組みを「積極的に妨害」した企業は法的責任を負うと定めた項目がある。
これについて、大手通信事業者Verizon Communicationsのバイスプレジデント兼法律顧問のSarah Deutschは次のように述べている。「仮にレコード業界から加入者氏名の開示を要求されたとして、その要求を断ることは、彼らの侵害者特定の取り組みの妨害行為に当たるのか。恐らくそうだと考えられる」
また別の項目では、ISPおよびIT企業は、著作権侵害行為を防止するための当然実施可能な全ての是正装置を講じなければならないと定められている。これについてもDeutschは、「著作権を保持する大手企業などからデジタル著作権管理(DRM)技術を施した製品を購入しなければ、それは是正措置を講じなかったとことになるのか」「(サービスの)中断/停止の要求に応じない場合はどうなるのか」などの疑問を呈している。
なお、2日に著作権局に対しコメントを求めたが、即答は得られなかった。
著作権局は連邦議会のもとで組織された強い影響力をもつ団体で、8月26日に開かれた上院司法委員会の会合を受けてこの新案を起草した。なお同委員会の Orrin Hatch委員長(ユタ州選出、共和党)は今年中にInduce Actのいずれかの案を施行させることを強行に主張している。先週の会合には、IBM、Apple、Hewlett-Packard、Business Software Alliance、RIAA、全米映画協会(MPAA)などの企業や団体から代表者が参加していた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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