オフィス用品メーカーのCorporate Expressは、Webサービスに関して優等生ともいうべき存在だ。
同社は、インターネット上でビジネスパートナーと情報共有するためにWebサービス技術を導入したが、この技術はこの目的のために考えられたものだ。しかし、Webサービスの最先端ユーザーである同社でさえ、同技術の最新の標準はセキュリティなどに関してあまりに複雑すぎるため、この導入を敬遠しているのが実情だ。
「多種多様な企業や団体がWebサービスの各仕様の策定に関与しており、仕様同士が重複している場合もある」と、Corporate Expressのテクニカル・アーキテクチャ担当バイスプレジデント、Andy Millerは語る。
Corporate Expressでは、Webサービスの通信およびデータフォーマットに関し、最新機能を試す代わりに、最も基本的な標準を使用し続けている。「(Webサービスの)将来的な方向性が不透明なため、なるべく単純な形を維持しようと考えている」(Mille)
Millerがこのような決断を下した背景には、Webサービスをめぐる混乱、すなわち各プログラムにインターネット上でデータ交換を行なわせるための技術仕様が、乱立状態にあるという事情がある。Webサービスの仕様に関しては、統一機関が存在せず、異なる標準化団体が各々策定しているというのが実情だ。政治問題化し、様々な論議を呼んでいるWebサービスの標準化プロセスについて、顧客らは傍観者的姿勢を取っているため、このまま標準の方向性が定まらなければ、Webサービス業界は技術開発に投じてきた巨額資金の回収が遅れるか、あるいは回収不能に陥る可能性がある。
「Webサービス標準のさらなる明確化、統一化が図られない限り、(Webサービスへの)新たな投資を行うつもりはない」と、某出版社のセキュリティ対策の専門家は匿名を条件にそう述べている。
Webサービス業界団体のWeb Services Interoperability(WS-I)は、多くの標準化団体からの雑音を克服すべく、混乱の打開に向けた取り組みを強化している。しかしWS-Iが、メッセージ交換の信頼性向上技術「Reliable Messaging」といった、より高度なWebサービス機能に取り組もうとすると、ベンダー間の内紛の調停という新たな難問に直面する。
WS-Iは、異なるプロバイダがリリースしたWebサービス製品が、宣伝通りに確実に互換性を備えるようにするため、ガイドラインの策定およびテストの実施を目的に、2年前に設立された。現在、100社以上のITベンダーが参加する同団体は、専門家グループが特定の問題に取り組み、技術的青写真を発表するという従来の標準化団体が採用してきた形式は取らず、代わりに異なるプロバイダが発売したWebサービス製品同士の確実な互換性を実現するための技術的ガイドラインを策定している。
WS-Iは、WebサービスがWorld Wide Web Consortium(W3C)、Organization for the Advancement of Structured Information Standards(OASIS)、Internet Engineering Task Force(IETF)といった他の標準化団体が策定した標準に準拠していることを証明する一種の承認証を発行する。
IT企業とその顧客の双方が参加するWS-Iは昨年、「Basic Profile」や一連のテスト、さらにサンプルアプリケーションを発表した。「Basic Profile」は、異なるプロバイダが発売したWebサービス製品同士が互換性を備えているか否かを評価するためのガイドラインである。またWS-Iの幹部がCNET News.comに語ったところによると、同団体は今夏末に、Webサービスに関連する数多くのセキュリティ標準と効果的に連携する方法を示した「Security Profile」を発表するという。
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