Webサービスの「ウィッシュリスト」

 Webサービスの登場から4年。その間にこのテクノロジーが猛烈な勢い――いわゆる「インターネット時間」で進化してきたことはほとんどの人が認めるだろう。

 もっとも、Webサービスの急成長は当然とも言える。Webサービスはすでにあるテクノロジーの第2世代なのだ。第1世代のテクノロジーは、ユーザーをHTML(Hypertext Markup Language)で書かれたWebページに結びつけるものだった。しかし、第2世代のWebサービスが目指しているのは、企業のビジネスアプリケーションを顧客、パートナー、そしてサプライヤーのそれと結びつけることだ。

 これが実現すれば、大規模な分散コンピューティングが現実のものになる。また、顧客のニーズに迅速に応え、市場機会を確実にとらえることのできる安全で信頼性の高いアーキテクチャを構築するためにも、Webサービスは重要な役割を果たす。

 しかし、道はまだ半ばだ。

 年頭に当たり、このテクノロジーのさらなる飛躍に期待をこめて、2004年のWebサービスに対する私の「ウィッシュリスト」を公開しよう。

<第1の願い>

WS-I(Web Services Interoperability Organization)のWebサービス標準「Basic Profile」が普及する

 標準が重要だと言う人は多いが、問題の核心は別にあると思う。ハイテク業界にとって標準が重要であることは言うまでもないが、本当に求められているのは標準への準拠というよりも、それによって実現する「相互運用性」ではないか。たとえば、Webサービスを相互運用性に関するガイドライン「Basic Profile」に基づいて設計すれば、第三者がWebサービスにアクセスし、期待通りのサービスを受け取ることのできる確率も飛躍的に高まる。

 Webサービスに関する業界のベストプラクティスを見落とす心配もない。

<第2の願い>

業務を効率化するためにWebサービスを利用する企業が増える

 Webサービスがめざましい効果を上げている分野の1つが業務効率だ。多くの企業はサプライチェーンを統合する目的でWebサービスを利用している。メッセージングミドルウェアを導入する企業が増え、インターネット接続環境が普及したことで、Webサービスはデータベース参照やトランザクションを高速かつ安全に処理する方法になっている。トランザクション数(throughput)の面で不満が残るかもしれないが、そうした問題の多くは負荷やパフォーマンスを適切に管理することで解決できるはずだ。

 顧客が必要とする情報をリアルタイムに提供することができれば、顧客は満足し、定着率は高まる。そのよい例がコールセンターだ。コールセンターをERPシステム、在庫管理アプリケーション、配送データベースと接続すれば、顧客に正確な情報をタイムリーに提供できるようになる。発注を正確かつ高速に処理し、納品までの時間を短縮することも可能だ。

<第3の願い>

Webサービスの用途が広がる(情報の質の強化、受注の改善、デリバリーの高速化)

 Webサービスを導入すれば、メーカーや製品構成の異なるシステムにも同じような外観を与えることができる。同じベンダーのソフトウェアでシステムを統一するつもりでも、不測の事態が起きる可能性は十分にある。社内のIT責任者(CIO)が変わっただけで方針が変わることもあるし、合併や買収となればなおさらだ。

 合併・買収の場合は、素早い統合が何よりも重要になる。インフラの統合に手間取って商機を失っては元も子もない。今のところ、Webサービスは「サービス志向アーキテクチャ(SOA: service-oriented architecture)」を実現する最良の方法と考えられている。SOAは、コンポーネントをどこにどう実装するかではなく、どんな機能やサービスが必要なのかに着目してインフラを構築することを指すIT用語だ。SOAでは異なる組織やベンダーのシステムも容易に接続することができる。

<第4の願い>

M&A関連

 Webサービスを使えば、事業の統合を速やかに進めることができるだろう――そう考えて、合併・統合に踏み切る企業が出ることを期待したい。

 この4つの願いをかなえることができれば、2004年はハイテク業界にとって、Webの可能性をさらに引き出すことができた年となるだろう。

筆者略歴
Bob Sutor
IBMのWebサービス担当ディレクター。プリンストン大学で数学の博士号を取得。IBM入社は20代前半にさかのぼる。

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