Webサービス標準策定をめぐる混乱と、WS-Iによる解決への取り組み - (page 2)

Martin LaMonica(CNET News.com)2004年07月05日 10時00分

Reliable Messaging技術仕様をめぐる激しい対立

 WS-IはSecurity Profileの完成後すぐに、Reliable Messaging技術への取り組みを開始する見込みだ。Reliable MessagingはWebサービスをプロプラエタリの統合ソフトの代用品として使用する上で重要な技術である。基本的なWebサービスプロトコル策定の初期段階では多くの合意がなされていたが、現在はそれぞれ別のReliable Messaging仕様案を支持する2つのグループ--すなわちIBMやMicrosoft、BEA Systemsおよびそれらの技術提携企業からなるグループと、OracleやSun Microsystems、日立らで構成するグループとの間で、激しい対立が続いている。

 2つのReliable Messaging仕様の対立は非常に熾烈で、あるソフトメーカーの幹部は、標準化団体OASIS が開発しているWS-RM (Web services Reliable Messaging)仕様について、IBMが「暗殺を企てている」と非難した。IBMのある幹部は、4月末に開かれた会合でWS-RM仕様の技術面について批判していた。IBM、Microsoft、BEA 、Tibcoの4社は別の仕様案を支持しているが、それはまだいずれの標準化団体にも提出されていない。

 IBMの幹部でWS-Iの会長を務めるTom Gloverによると、WS-Iは対立する2つのグループに対し、技術委員会の策定作業を最終的に統合するよう説得する予定だという。

 「Reliable Messaging Profileの作成に取り組む必要があるという点では合意ができている。その合意が、それぞれ異なる仕様案を支持する人々に、ある種のプレシャーを与え、互いに協力し合意を模索するよう促している」(Glover)

多すぎる標準化団体、早すぎる標準策定

 平行して行なわれている標準化の取り組みから生まれたその他の紛争も、解決策を必要としている。IT企業11社の幹部は、今月はじめにW3Cに公開書簡を送付し、2つのWebサービス仕様間の「妥協点」を見出すための諮問委員会の設置を要請した。

 Lucash, Gesmer and Updegrove法律事務所に所属するAndrew Updegrove弁護士によると、整合性を欠くこれら2つの標準化プロセスは、各ベンダーが自分らに都合の良い標準化団体に既存の自社技術を提出するという、いわゆる「フォーラムスワッピング」の慣行に端を発しているという。

 標準を専門とするUpdegrove弁護士は、「この慣行こそが現在のWebサービス業界の混乱を招いている。業界内では、Microsoft、IBM、BEAおよびその他の企業数社を中心に構成される様々な企業グループが、事前に標準を策定し、それを標準化団体に提出している」と指摘する。

 しかし標準を事前に策定している企業は、そのような慣行があるからこそ、より質の高い技術仕様をより早く策定できると主張する。BEAの最高技術責任者(CTO)で標準策定を担当しているScott Dietzenは、IBM、Microsoft、BEAといった、市場シェアと経験を兼ね備えた企業が、 Reliable Messagingやビジネスプロセスワークフローなどの技術仕様に最初に取り組むべきだと語る。

 Dietzenは「20〜30社のベンダーを1つにまとめ、全員が納得のいくものを設計するのは不可能だ。さらに、すでに数多くの知的所有権(IP)が揃っている」と述べ、さらに「招待されなかったベンダーは怒っているが、(標準策定の)モデルは機能している」と語った。

 WS-Iは設立時に、同じ標準に関して業界全体の合意が得られても、長年の対立関係は解消されない、ということを実証した。Sun Microsystemsは当初、Microsoft の要請によりWS-Iの設立メンバーから締め出されたため、同社最高経営責任者(CEO)のScott McNealyはWS-Iの「政治的陰謀」を非難することになった。しかし、結局SunはWS-Iに加入し、昨年、同団体の理事会メンバーに選出されている。

 WS-Iの幹部によると、同団体はそれぞれの仕様の技術的利点や市場の支持に基づいて決断を下すことにより、メンバー間の政治論争の仲裁役を果たそうと務めて来たという。統合ソフトメーカー、WebMethodsの幹部でWS-Iの理事会メンバーでもあるAndy Astorは、類似のWebサービス標準であっても、若干でも互換性を欠いていれば、受け入れることはできないと語る。

 「決定プロセスが最適と言えるか?それは市場が決めることだ」とAstorは述べ、さらに「技術的なエリート層は間違いなく存在する。政治的、財政的影響力も無論関係している」と語った。

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