Mozilla.orgは1998年、NetscapeがMicrosoftのIEブラウザとの競争から方向転換するために開始したプロジェクトだ。ApacheウェブサーバソフトウェアやLinuxオペレーティングシステム(OS)などの草の根開発プロジェクトとは対照的に、Mozilla.orgは企業主導のオープンソース開発プロジェクトというコンセプトの先駆けとなった。
Mozillaは、当時AOLの一部だったNetscapeがMozillaベースのブラウザを開発するまで、32カ月もの期間をイライラと作業に費やしてきたが、この最初のリリースは痛烈な批判を浴びた。その後リリースされたMozillaベースのブラウザは、質は向上したもののサイズが膨れ上がったため、Apple Computerは昨年リリースしたMacintoshのSafariブラウザで、Mozillaを避けてKHTMLオープンソースプロジェクトを採用したほどだ。
Mozillaは、アプリケーションのベースとなるコードの肥大化について不満の声に応えようと、簡素化したスタンドアロンのブラウザ開発をスタートさせた。この計画は、その名称をめぐって揉めていたが、最終的にFirefoxプロジェクトという形となった。
一方AOLは、Microsoftと反トラスト法訴訟で和解に達し、Netscapeを買収して以来続いていたブラウザ戦争でついに負けを認めた。AOLは、同社のオンラインサービスでIEを使用することに同意し(ただし同社は今後も、MozillaベースのNetscapeブラウザのアップデートは続ける)、Mozillaを非営利団体に分離独立させていた。
Mozillaがアプリケーションの減量に力を入れているのは、現在の市場の要求に答えるためだが、同時にこれはMozilla.org発足時の目標でもあった。
1998年当時、同プロジェクトを先導していたNetscapeのエンジニアらは、簡単に各コンポーネントに分割できるようなブラウザを開発しようと考えていた。そうしておけば、開発者らが必要に応じて各パーツを選べるからだ。ところが数年後にNetscapeの親会社がこのビジョンについて口を差し挟み、Mozilla 1.0は自社の「AOL Everywhere」戦略に沿ったものでなくてはならないとし、PC以外のさまざまなデバイス向けのブラウザ開発も行われることになった。
贅肉をそぎ落として
Nokiaが資金提供する「Minimo」プロジェクトで、Mozillaはついに軽量化に成功し、企業ユーザーにとって魅力的なものになったようだ。
完全版のMozillaスイートは、メールクライアント、IRC(Internet Relay Chat)、HTML(Hypertext Markup Language)エディタを含むが、それでもサイズは8.9Mバイトしかない。さらに、スタンドアロンの「Firefox 0.9 for Windows」は4.7Mバイトと、Mozilla完全版の約半分で、前バージョンの「Firefox 0.8」の6.2MBと比較しても大幅に軽量化されている。
Mozillaによると、「Minimo」はかなり軽量化されているため、他の携帯電話用ブラウザと十分互角に戦えるという。
MozillaのエンジニアディレクターChris Hofmannは、「われわれの製品にはかなりの競合力があるようだ」と述べている。
Nokiaは長い間、Opera製のブラウザを自社の携帯電話に採用しており、それとは別に独自のブラウザもある。だが、Minimoが無償の選択肢として浮上しつつあることから、Operaブラウザの先行きに対して疑問が投げかけられる事態にもなりかねない。
Operaは、ライバルのMozillaに対して賞賛の意を表しつつも、同オープンソースグループがこのプログラムを自社製品と競合できるサイズまで縮小できるかどうかについて疑問を呈している。
「Mozillaの関係者に対しては大いに敬意を抱いているが、彼らが同ブラウザをOpera製品と競合できるレベルまで小型化できるかどうかは、また別の話だ」と、Operaの最高技術責任者(CTO)Hakon Lie。「Mozillaから一部のパーツを取り除くことはできる。だが、とても小さな端末に載せられるほど小型化できるだろうか」(Lie)
「Firefox 0.9」には、「1クリック・マイグレーション」という新しい機能がある。これを使うことで、ユーザーは自分のブックマークやクッキー、パスワードを、IEやOpera、他のMozillaベースのブラウザから、Firefoxに移すことができる。また、ソフトウェアのアップデートがリリースされた際にこれを知らせるアラート機能もある。
3つめの新機能は、200近くあるサードパーティのFirefox向けアドオン機能を管理できるというものだ。Mozillaによると、最新版ではバグが修正されており、性能も向上しているという。
Mozillaは、6月16日に電子メールアプリケーションの「Thunderbird 0.7」、HTMLエディタの「Nvu 0.3」、200ページにもなるMozillaユーザーズマニュアルをリリースしており、これらを含んだMozillaはMozillaストアから入手できる。バージョン1.7となるMozillaスイートのフルアップデートは、先週リリースされている。Netscapeは、この「Mozilla 1.7」をベースとしたバージョン7.2を発表することになっている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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