中国と米国は21日(米国時間)、両国が貿易と技術に関する包括的な合意に達したと発表した。中国は独自のWi-Fiセキュリティ標準確立に向けた取り組みへの姿勢を軟化させ、またこの合意の一環として新たに厳格な著作権侵害防止政策を採用することになった。
中国政府の関係者は、各製品メーカーに対して中国で販売する自社製品に同国のWireless Authentication and Privacy Infrastructure(WAPI)標準を組み込む期限を6月1日に設定していた。WAPIの仕様は、中国政府がワイヤレスネットワーク経由でやりとりされる国民のあらゆる通信を解読できるようにつくられている。
WAPIは現行の各Wi-Fiセキュリティ標準と互換性がない。製品へのWAPI組込が強制されれば、アジア諸国で製品を販売できるメーカーの数が限られてしまい、注目を集める米中間の技術戦争の発端ともなってしまいかねない。
両国間の交渉に詳しい情報筋によると、中国はWAPIの実装義務付けをすでに発表していた期日には行わず、WAPIに関する指令の施行を無期限延期することに同意したという。その一方で、同国は国際標準化団体のIEEEと協力しながら、同標準の完成に向けて作業を進めることとなった。
中国のWAPIに関する判断は、米通商代表部および商務省関係者と中国の呉儀副首相が行った高官級会談の終了後に発表された複数の合意事項の中の1つ。この会談は米中合同通商委員会の一環として21日にワシントンDCで行われた。
同委員会はさらに、音楽や映画などの違法コピー流通の抑制を狙いとした、著作権関連の新たな政策を採用することに中国が同意したことも発表したと、RIAA(全米レコード協会)は述べている。
著作権関連の合意事項の一環として、中国はCDなどの違法コピー抑制を狙ったキャンペーンを展開し、こうした行為を行った犯人に対する刑罰を強化し、さらにインターネットでの著作権侵害作品の違法コピー防止を狙って中国の法律を国際著作権条約へ準拠させる。
RIAAはさらに、米国人アーティストが中国国内で合法的に作品を配付できるよう、中国に対して貿易障壁の排除と検閲手続きの簡素化も求めた。
今回の合意は、ITをめぐって米中両国間で高まっていた緊張関係の緩和につながる可能性がある。たとえば、WAPIは両国間の貿易摩擦の中心的な懸案事項となっていた。
中国側は、自国の規制の多くは国家の安全保障にとって重要なものだと主張。これに対して、米国企業側ではこれらの規制について、そのほとんどが中国への雇用の移転をねらいとしたもので、なかには知的財産の利用をねらったと考えられるものもあるとしていた。
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