中国政府と、米ハイテク業界の蜜月が終わりを迎え、両社の間に存在していた好意的な感情はしばらく戻ってこないかもしれない。
中国の当局は、ここ数カ月の間に数々の規制を設けたが、少なくとも西側諸国から見ると、これらの規制は国内メーカーを支援し、多国籍企業には中国国内でのオペレーション拡大を強いるよう計算されたもののように見える。
中国が開発した独自のWi-Fiセキュリティプロトコル「Wired Authentication and Privacy Infrastructure(WAPI)」もその1例だ。6月1日より、中国で販売される全てのWi-Fi機器は、このプロトコルに準拠しなければならなくなるため、西側諸国のチップメーカー各社は、特定の中国企業にチップ1基ごとにロイヤリティを支払うか、こうした企業と開発提携を結ぶかしなければならない。WAPI技術は中国国外に出せないため、西側諸国が中国市場に参入したければ、現地の製造施設を利用しなければならない。
「ドライバごとに、文字通り何千時間をかけてテストを行わなければならない。さらに、こうした作業は全て中国の従業員が行わなくてはならない」と、BroadcomのHome and Wireless Networking担当バイスプレジデント、Jeff Thermondは述べている。同社は6月のWAPI法施行後には、中国のWi-Fi市場から撤退することを決定している。
また中国は、輸入された半導体に付加価値税をかけ続け、外国のチップメーカーに中国でのチップ製造設備建設か、もしくは中国のチップ製造メーカーと提携するよう働きかけている。付加価値税の税率は、輸入製品が17%であるのに対し、中国製品はわずか3%でしかない。ブッシュ政府は18日(米国時間)、世界貿易機構(WTO)に対して、この付加価値税の問題を提訴した。
「この税率の差は、米国の企業に無理やり中国に投資させるための、作為的なやり方だ」とSemiconductor Industry Associationの公共政策担当バイスプレジデント、Daryl Hatanoは述べている。
米国のRobert Zoellick通商代表は、中国に税政策の変更とWAPI法の廃止を求める声明を発表した。またDonald Evans商務長官と、Colin Powell国務長官も、中国の呉儀副首相などに法の再検討を求める書簡を送っている。
「中国はWTO加盟国に課された義務を果たさねばならない。米国製品を差別する施策を押しつけることはできない」と、Zoellickは声明で述べている。
第3世代(3G)携帯電話向けのTD-SCDMA標準に関しても、衝突が起こりそうだ。中国政府は現在この標準を審査中で、今年中には通信会社4社にライセンスを発行する。しかし西側企業がこの競争に参加するには、中国企業のパートナーを探す必要がある。ドイツのSiemensは中国のHuaweiと1億ドルのジョイントベンチャーを設立し、このプロジェクトで200名の従業員を雇用する。
各国の政府と同様に、中国政府も政府公官庁で、国内製ソフトウェアを購入する取り組みをスタートさせている。
歴史を振り返ると、この種の貿易問題は長引く可能性があることがわかる。1980年代には、日米の半導体業界が常にやり合っていた。両社が休戦したのは、90年代に日本経済が下降線をたどり始めた後のことだった。さらに、こうした貿易問題からは後年まで後を引く世界的な分裂が生じ、輸入者・輸出者の双方にダメージを与える可能性もある。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向け に編集したものです。
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