米国と中国の貿易摩擦が高まるなかで、IntelとBroadcomは、中国政府の義務づける暗号化技術標準を理由に中国へのWi-Fiチップ販売を5月末で中止する。
中国政府は、国内で販売されるすべてのWi-FiチップにWired Authentication and Privacy Infrastructure(WAPI)標準への準拠を6月1日から義務づける法案を可決していた。この暗号化のためのアルゴリズムは中国で開発され、現地の中国企業が管理している。
Intelの広報担当、Chuck Mulloyが米国時間10日に語ったところによると、同社や他のメーカーはこの技術について検討を行ったが、この標準を自社の既存のWi-Fiチップに満足のいく形で組み込む方法は見つけられなかったという。その結果、準拠しない製品の販売が違法となるため、Intelは中国でのWi-Fiチップ製品の販売を6月初めから中止することになると同氏は説明した。
同社では、引き続き現地のPCメーカー各社や政府とこの問題の解決に取り組んでいるが、WAPIに準拠したチップ出荷の可能性の有無やその時期を判断しようにも、同標準に関する情報が現時点では十分にないという。
「我々が顧客の求める品質の製品を提供できるかどうかについての深刻な懸念がある」とMulloyは述べ、さらに「我々は3月に顧客への説明を行うと約束していた。そして今回、技術的観点から6月1日の期限には間に合わないとの結論に至った」と付け加えた。
大手Wi-FiチップメーカーのBroadcomも、中国へのチップ出荷を中止する計画だが、同社では問題解決を試みているという。
「我々は当該の法律の遵守を目指しているが、現時点では(WAPIへの)対応に必要な情報が十分にない」とあるBroadcom関係者は語り、さらに米国やヨーロッパのメーカー各社も同社に追随する予定であると付け加えた。
WAPIの問題は、米中間の通商関係の火種になっている。中国の規制では、既存のチップメーカーがWAPI技術を合法的に入手するためには、Lenovoなどの現地企業とライセンス契約を結ぶか、もしくは提携を行わなくてはならない。そのため、この規制が自国のWi-Fi関連業界を一気に発展させるための手段なのではないかとの懸念を生みだしている。
今月初めには、Donald Evans米国商務長官、Colin Powell国務長官、そしてRobert Zoellick通商代表が、中国の呉儀副首相などに、この法律の見直しを求める書簡を送っている。
「我々は、この新しい規制が外国メーカーに対して、中国企業との合弁企業の設立やそれらの企業への技術移転を要求している点に、とりわけ懸念を抱いている。このような強制的な投資は、中国がWTO加盟の際に誓った約束と矛盾しているように見える」と、この書簡には記されていた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」