総務省は3月12日、「アジア・ブロードバンド・シンポジウム 広がる可能性〜アジアの未来はブロードバンドから」と題したセミナーを開催した。基調講演には慶應義塾大学環境情報学部教授の村井純氏が登場し、ブロードバンドがもたらす可能性について語った。また、アジア各国の代表者によるパネルディスカッションも行われた。
総務省は2003年3月、アジア地域におけるブロードバンド環境の整備に向けた行動計画を「アジア・ブロードバンド計画」として策定。これに基づいて各国政府とさまざまな共同実験などを行っている。今回のセミナーはこの活動について紹介するものだ。
村井氏はブロードバンド化によってもたらされるメリットの例として、慶應大学が行っているインターネット教育プロジェクト「SOI(School of Internet) Asia」について紹介した。これは高速衛星通信回線を利用して同大学とアジア各国の高等教育機関を結び、遠隔授業を行うものだ。
回線を安価かつ短期間に構築するためにインターネットと衛星通信を組み合わせた点が特徴。慶應大学からアジア各地への映像配信には衛星回線を利用し、高画質の映像を送る。ただし、衛星を利用して送信を行うには大規模なアンテナなどが必要なため、各地から慶應大学への質問などにはインターネット回線を利用する。この仕組みであれば、受信側は150万円程度の小さいアンテナを設置するだけで9Mbps程度の高速回線が手に入る。また、山間部など高速通信網の設備がない地域でも簡単に導入できるという。
同プロジェクトによって、今までに7カ国11カ所でインターネット基盤の構築が行われている。村井氏は、2001年の段階でインターネットの商業利用が認められていなかったミャンマーで、このプロジェクトのために特別に政府からインターネット利用許可を得て環境整備が行われたたと紹介し、同プロジェクトの成果を強調した。
村井氏は世界各地をつなぐインターネットを地球の血管にたとえ、「血管はパイプであり、そこを流れるデジタル情報を送り出す心臓が必要だ。アジア地域の心臓をつくるのがアジア・ブロードバンド計画だ」として講演を締めくくった。
会場ではインド、マレーシア、モンゴル、ミャンマー、パラオの政府代表者が出席し、それぞれの国の情報通信政策の現状と課題についてディスカッションを行った。いずれの国も独自のIT政策のもとに環境整備や法整備を進めているが、都市部と農村部のデジタルデバイドが大きな問題となっているという。コーディネータを務めた通信総合研究所 特別研究員の佐賀健二氏は、インターネットやメディアアクセスなどが行える多目的なテレセンターを農村部に設立することが重要だと話す。各国の代表者は日本政府への要望として、資金的な援助だけでなく、技術的なアドバイスや継続的な活動支援などが必要と訴えた。
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