NECは16日、独立行政法人 物質・材料研究機構、独立行政法人 科学技術振興機構と共同で、固体電解質中での金属原子移動を利用したスイッチであるNanoBridgeを開発したと発表した。NEC支配人の福間雅夫氏によると、NanoBridgeは製品化までの技術的道のりは困難だが、「製品化された際の市場は非常に大きい」としている。
FPGAやDRPなどのプログラマブルロジックは、回路組み替えが可能で設計期間の短縮にも結びつき、回路機能の変更もできるため便利だが、粒度が大きいため用途が限られる。いっぽうCBIC(Cell-Based Integrated Circuit)は、高速処理や様々な機能を実現できるため用途が広くて便利だが、回路の組み替えが難しい。「この2つのよい点を合わせたプログラマブルCBICを提案し、NanoBridgeとして開発を進めている」と福間氏は説明する。
NEC支配人、福間雅夫氏 | |
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NanoBridgeは、個体電解質中での金属原子移動に基づく金属微細架橋のスイッチング現象を利用して、CBIC並みに応用範囲の広いプログラマブルロジックを実現したもの。従来のプログラマブルロジックで用いられる配線切り替えスイッチに比べ、スイッチサイズが約30分の1と小さく、スイッチを配線層中だけに作成することが可能なため、チップ面積を数分の1まで小型化し、チップコストを低減させることが可能だという。またスイッチ抵抗が数十分の1となるため、配線遅延が20〜40%改善されることも特徴だ。さらに、同スイッチを用い、小規模で単機能的ロジックセルを多数接続することにより、従来のプログラマブルロジックに比べ、回路使用効率が約10倍高い回路構成が可能となる。ロジックセルの組み合わせ自由度が高く、並列化によって演算処理が高速化されるため、回路の応用範囲が広いという。
この技術開発により、モバイル機器やデジタルテレビなど多くの電子機器における性能向上と低価格化が実現するとともに、回路切り替え動作により、携帯電話のようなポータブルな機器でも様々な機能が実行できるという。
福間氏は、「新しい装置を作る際、ハードウェア検証のためにいきなりCBICを利用するとコストがかかる。そういう場合にFPGAなどが使われ、そこでプログラムの修正や機能追加を行う。ただし、これではチップの面積が大きく高価なため、一般のマスプロダクションにおいて製品内にFPGAが入ることはない。つまりFPGAは開発用や小規模の生産用で、大量生産などにはCBICが採用されるのが一般的だ。今回発表したNanoBridgeが実用化されれば、チップのコストが約10分の1となるため、開発だけでなくそのまま製品にも搭載されることになるだろう」と説明する。
スイッチを小型化して低抵抗にするための技術開発は、これまでにも行われてきた例があるというが、「それをプログラマブルロジックに応用するという発想はなかった」と福間氏は述べ、この技術の斬新さをアピールした。
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