日本IBMは25日、オンデマンドテクノロジーに関する同社の取り組みについての説明会を行った。同社によると、オンデマンド環境の実現を支えるのは、オートノミックコンピューティングとグリッドコンピューティング。それぞれの分野における米国担当者が来日し、両技術の重要性を語った。
オートノミックコンピューティングとは
米IBMオートノミックコンピューティング担当バイスプレジデントのアラン・ガネック氏によると、現在のIT環境は非常に複雑化しており、まずこの複雑さを解決することがオンデマンド達成のために重要だという。「システムエラーの40%はオペレーターの人的エラーによるものだ。また、管理者の仕事の25%から50%は問題の分析に費やされているという。さらに、IT投資の5分の4は新しく収益を生み出すための投資ではなく、運用管理などのマイナーな拡張のために使われている。
米IBMオートノミックコンピューティング担当バイスプレジデント、アラン・ガネック氏
ガネック氏によると、オートノミックコンピューティングの主要な構成要素となるのは、環境の変化に柔軟に適応できるための「自己構成」技術、障害を発見し、診断およびその防止策までを支援して回復力を高める「自己修復」技術、リソースとワークロードバランスを調整して効率のよい運用が実現できる「自己最適化」技術、攻撃を予測し、探知・識別や防御までを行うための「自己防御」技術の4つだという。それぞれの技術においてIBMでは、DB2 Configuration Advisor(自己構成)、Tivoli System Automation(自己修復)、WebSphere Load Balancing(自己最適化)、Tivoli Identity Manager(自己防御)などの製品を用意している。
「オートノミックコンピューティングを導入することで、ITインフラにインテリジェンスを与えることができる。つまり、複雑なITシステムを簡素化し、管理の時間とコストを削減することができるのだ。これにより顧客は、機敏性、柔軟性および適応性の向上が望める」とガネック氏は述べた。
グリッド技術についても説明
米IBMグリッドコンピューティング担当バイスプレジデント、ダニエル・パワーズ氏 | |
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いっぽうグリッドコンピューティングに関しては、同技術担当バイスプレジデントのダニエル・パワーズ氏が説明にあたった。「グリッドはオンデマンドビジネスを支えるための第一歩だ」とするパワーズ氏は、まず整備されたオペレーティング環境が必要だと語る。同氏によると、整備されたオペレーティング環境で重要となるキーワードは、統合化、オープン、仮想化、オートノミックの4つだ。なかでもグリッド技術で最大要素となるのが仮想化だとパワーズ氏。仮想化により、分散されたIT資源を統一し、単一のコンピュータのように資源を共有することができると同氏は説明する。
「ネットワーク上には、異機種で分散した様々なコンピュータ資源が存在する。これを動的に連動させてユーザーにひとつの仮想的なコンピュータとして提供する、これがグリッドコンピューティングだ」(パワーズ氏)
グリッド技術で提供できることとしてパワーズ氏は、スケジューリング機能、プロビジョニング、ワークロード管理、トランザクション管理などをあげている。これらすべてにおいて、オープンスタンダードを推進しているのだとパワーズ氏。「メインフレームでは、うまくグリッドコンピューティングが機能していたと言っていいだろう。そこでIBMでは、長年の経験で学んだメインフレームでの強みをオープンスタンダードにも適応していきたいと考えている」(パワーズ氏)
他社との違いは?
業界内では、グリッドコンピューティングやユーティリティコンピューティングという言葉が氾濫しているようにも見えるが、パワーズ氏によると、IBMではユーティリティコンピューティングという言葉はあまり使わないようになったという。それは、コンピュータ資源というものは、公共資源のように誰もがほぼ無料のような感覚で使えるものではないからだとパワーズ氏は説明する。そこでユーティリティをオンデマンドという言葉に置き換えたようにも見えるIBMだが、同社と他社の戦略の違いについて聞くと、「他社の技術は自社製品を売るための戦略でしかなく、オープンな環境でのグリッド技術が確立されていない。IBMでは他社製品もサポートすることで、異機種が混在する環境でもグリッドを実現している」とパワーズ氏は語った。
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