現在コミュニケーション業界は、ソーシャルメディアもクロスさせた統合マーケティングコミュニケーションの時代を迎えているが、そんな時代環境の中、動画コンテンツは、ますます重要になっていると感じる。もちろん1本のビデオで全てを解決することなど不可能だが、それでも共有化の時代を迎え、動画の持つ力は果てしなく大きい。
筆者はもともと広告会社でマス広告の制作者として1990年からテレビCMを制作してきたが、バイラルCMの誕生とともに、この分野の可能性にいち早く着目し、長年にわたりバイラルCMの研究をおこない、世界の動向をウォッチしてきた。
その観点からすると、バイラルCMを作る立場にない方にとっても“バイラル的なるもの”を知ることは、とても重要だと思う。またバイラルCMについて今回のようにまとめた記事は、今まであるようでいて意外にないと思うので、最後までのお付き合いを願うと同時に、誌面の都合上、超・概略版となることを、あらかじめお許しいただきたい。
バイラルCMとは、インターネット上のクチコミによりウィルス(viral)のように、人から人に話題が加速度的に伝播していくことを目的として制作され、ネットで公開されるCMでのことある。
この分野での世界の動向を一言でいうと、バイラルCMにも歴史があり、純度の高い進化と発展を遂げてきた。例えばメッセージひとつとっても、初期にはマイナーなものが多かったが、次第に社会的なメッセージを持つものが生まれてきた。また映像のあり方でも、初期には低予算ものが多かったが、やがてソニーやナイキ、キャドバリーの事例等、圧倒的な映像詩の世界や、そもそもパロディにされることを目的として作られるCMや参加型、プロモーションの記録をまとめたものまでさまざまな発展を遂げて今に至っている。
補足としては、バイラルCMはネットだけで配信されるものもあるが、テレビでオンエアされるCMも実際には多いという点には注意が必要だ。つまりテレビのチカラを無視しているわけではないということ。バイラルCMとして有名なCMの数々も、実際はTVでもオンエアされていることが多い。つまり、まずは知ってもらうためにテレビCMとしてオンエアし、伝播する場としてネットを活用するという構造だ。
ただし初期のバイラルCMには、その内容の過激さから、抗議が寄せられ、テレビでのオンエアが中止になったものも多い……(苦笑)。マイクロソフトが英国でオンエアしたゲーム機「XBOX」CM「CHAMPAGNE」(2002) は、テレビでの放送が中止になったという。
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