連載2回目はアジャイルメディア・ネットワーク(AMN)でコミュニケーションデザインを担当させていただいている安藤大からお届けさせていただきます。どうぞおつきあいください。
全国ニュースでFacebookのIPOが大々的に報じられ、Twitterも一般用語としてすっかり定着した2012年。日本国内ではソーシャルメディアは一時のブームではなく、前回の記事にあったようにインフラの一部として受け入れられてきているように思う。
アメリカなど他の先進国より、取り組みが遅れていると言われてきたソーシャルメディアのプロモーションへの活用も進んできている。
背景には、日本でも増え続けているソーシャルメディアの利用者数があるのだろう。「インターネット白書2012」(インプレスジャパン)によると、インターネットユーザーの約45%、人口比では約40%と、急激に増加している。
AMNにいただく相談内容も、今までのソーシャルメディア単体でのテスト的な活用から、プロモーション活動全体の中にソーシャルメディアを組み入れる内容にシフトしてきている。
今回のコラムでは、そんな統合が求められているマスとソーシャルメディアの役割を、時代ごとの関係性の変化を追いながら整理してみよう。
なお、今回はマスとソーシャルメディアの特徴をわかりやすく比較するため、セールスプロモーション(SP)やパブリックリレーションズ(PR)などの要素を含まない考察になっている。
まずはソーシャルメディア誕生前の20世紀後半、テレビCMが中心のマーケティングにおける、マスメディアの役割を整理してみる。
以下はご存知の方も多いかと思うが、ソーシャルメディア誕生以前の生活者が、商品を購買するに至るステップ、「AIDMA」という考え方だ。
これは、受け手が「Action(行動=購買)」という行動を起こすまでに必要な情報のすべてを、マスが担当するモデルである。
例えば、お茶の間でテレビCMを見て商品を知っても、関心を持つまでに至らなければ、実際に購入するために販売店に足を運ぶことはない。
このように情報源の中心がテレビだった時代のCMは、「注意や関心のみならず、欲求をかきたて、さらに覚えやすい」ものでなければならず、担う役割が大きかった。
このテレビCM全盛の時代は、1941年のメジャーリーグ戦「ブルックリンドジャース対フィラデルフィアフィリーズ」の開始10秒前に流れた世界初のテレビCM放映から実に60年間(!)も続いたことになる。
インターネットが一般家庭に普及した2000年頃、ブログやネット上の掲示板など、Consumer Generated Media(CGM)と言われる初期のソーシャルメディアがにわかに注目されるようになった。
この時代の行動パターンとして、有名なAISAS(※1)を元に整理してみよう。
(※1:AISASは電通の登録商標)
AISASでは「プッシュ性」のあるマス広告が担当するのは「Interest(関心)」まででOK。その後の「Search(検索)」からはユーザーの自発的な行為を受け止める「プル性」のある情報が担当となる。「続きはウェブで検索」などのテレビCMは、この象徴的な形といえるかもしれない。
ここで大切なのは、ユーザーに必要とされるプル性のある情報は、ブランドサイトでの価格やスペックなどのファクトだけでなく、商品の購買者のブログ記事や価格比較サイトなどの投稿(レビュー)が含まれるという点だ。このレビューは、実際に購入し商品を利用したユーザー自身が作り出し、新たにSearch(検索)してきたユーザーに「プル」されることで、共有から検索までの循環を作る事ができる。
この時点では「プッシュ性」のある情報は、マスが中心であり、ソーシャルメディアが担当していたのは「プル性」のある情報だけ。ソーシャルメディア上でのコミュニケーション設計のキモは、「いかに購買者に良質なレビューを作ってもらうか」、さらにそのレビューを、「いかにマスからの検索流入者にリーチさせるか」だった。
このモデルは、日本語のブログ投稿数が英語のそれを超える2006年頃にピークを迎えたようだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力