ひとつの時代の終焉か
一部のソニー幹部は、パッケージメディアの時代が終わりに近づいていると感じており、このことがダウンロードサービス提供への動きを加速している。同社がCDの普及促進に一役買い、そのライセンス収入から計り知れない利益を上げたことを思えば、これは驚くべきことといえる。
その一方で、インターネットを使ったメディア配信の動きは勢いを増しているが、ただし、Jupiter ResearchアナリストのMichael Gartenbergによると、パッケージメディアが衰退するまでにはまだしばらく時間がかかるという。
「利便性の高い曲単位の販売方式など、新しい販売モデルが消費者の共感を呼んでいるが、コンテンツダウンロードサービスがCDに取って代わることはないだろう。これらは共存していく」(Gartenberg)
両者が共存するとなれば、ソニーは自社のインターネットサービスが抱える問題を処理するための時間を手にすることになるはずだ。
Sony Connectに対して厳しい見方をする人々は、同音楽配信サービスのさえないインターフェースと人気のなさをこき下ろしたが、同社経営陣は、ここから多くのことを学んだと述べている。また彼らはアップデートも徐々に行っているとし、今年半ばには大規模な変更が予定されているという。
「音楽分野での失敗を繰り返さぬよう、ビデオの配信にあたってはあらゆる問題点を早急に解決しなくてはならない」とStringerは述べ、さらに「われわれは音楽分野では不利な立場にあるかもしれない。だが、ビデオ分野ではサービス内容を改善し、短期間で成長するための十分な時間がある」とした。
そこで問題となるのは、果たして消費者が音楽のときと同じように携帯型のビデオコンテンツに飛びつくかということだ。
ソニーはかつてこの分野への進出を目指し、テレビ版WalkmanというべきWatchmanを投入したことがあるが、この試みは結局失敗に終わった。しかし、いまでは状況も変化しており、また音楽に関しては成功を収めたお手本もすでに存在する。
一方、他社も同様のサービスやハードウェアの開発に取り組んでいる。たとえばMicrosoftは、SamsungやCreativeの携帯プレイヤーに対応したWindows Media Centerを開発し、またCinemaNowと共同で映画配信サービスも立ち上げた。こうしたサービスに対する人々の反響は、少なくとも初期段階の現時点では芳しいものとはいえないが、これはハードウェアに対応するコンテンツが多くないためだ。しかし、多彩な娯楽ソフトを抱えるソニーのような会社が参入すれば、こうした状況も変わるかもしれない。
ソニーについて言えば、全売上高に占める割合が最も大きいエレクトロニクス部門での大きな失策が、新たな切迫感へとつながっている。エレクトロニクス業界は、利幅の減少と競争の激化に苦しんでいる。それと同時に、ソニーはこれまで独占的な地位を築いていたテレビと携帯型音楽プレイヤーという2つの分野で、新製品の投入が遅れてしまった。同社は、薄型テレビの大流行を早めに見通すことができず、またハードディスクを搭載した音楽プレイヤーについても、製品を投入したのはつい最近のことだ。さらに自社の音楽プレイヤーでMP3ファイルをサポートすることも、最近になってやっと決まった。
また、ソニーの各グルーブが何年も社内での確執を続けている間に、5年前には同社が注意を払いもしなかった企業が市場を独占するようになった例もある。
ソニーは、多種多様な事業を展開していることを理由に、今でも自社に利があると考えているが、こうしたアドバンテージも徐々に失われつつある。たとえば、かつては一流と言われ、米国では今も上位に食い込んでいるそのブランド力にも、生まれ故郷の日本や中国では陰りが出はじめている。
しかし、ソニーの経営陣は、全社的な協力をさらに進めることで、かつて自社が独占していた携帯音楽プレイヤー市場をAppleに乗っ取られるなどという過ちは繰り返さずに済むと信じている。
「われわれは(携帯音楽プレイヤー)市場の変化を十分認識していた。そして、これらの変化に対応するためにはどうすればいいかもはっきりと分かっていた。問題は、素早く行動しなかったことだった」(Wiser)
ソニーの経営陣は、事業部間の考えを一致させ、相互の意思疎通を改善することで、エレクトロニクス事業だけでなく、全社共通の利益につながる問題として、業績の改善を認識させたいと考えている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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