総合電機、大手家電メーカーなど主力ハイテク企業の2005年3月期第3四半期(2004年4〜12月)の決算が出そろった。デジタル家電製品の需要に陰りが見えるなかで、各社の対応力の差が一段と浮き彫りになっており、今3月期の業績見通しにも明暗が分かれた。その背景を探った。
今回の決算では、広い意味でのデジタル家電製品(パソコン、携帯電話機も含む)の需要落ち込み傾向と、それに伴う販売価格の低下により、今3月期の業績見通しの下方修正を強いられる企業が目立った。
まず下方修正組から振りかえってみると、ソニーは今3月期の連結業績見通し(米国会計基準)を下方修正し、営業利益ベースで従来予想の1600億円を500億円下回る1100億円(前期比11%増)とする大幅な減額修正となった。これは、デジタル家電の競争激化による価格の低下が響き、エレクトロ二クス部門の売上高、利益が想定を下回る見込みとなったことが背景にある。業績下方修正の要因をひとことで表現すると「ソニーブランドのプレミアム価値の低下傾向に歯止めがかからず、実際の販売価格の低下で利益が大きく圧迫された」ということになりそうだ。特に、主力のエレクトロニクス部門でブラウン管テレビ、薄型テレビ、DVDレコーダー、ビデオカメラなどの販売価格の低下が響いた。
京セラは、第3四半期の連結決算(米国会計基準)を発表すると同時に、2005年3月期の連結業績見通しについて下方修正を発表した。この業績下方修正は、通信機器事業、デジタルカメラ事業の赤字拡大と、電子部品需要の鈍化などが主因とされている。売上高を従来予想比1100億円減の1兆1500億円(前期比0.8%増)、税引き前利益を同400億円減の1000億円(同13%減)、純利益を同260億円減の590億円(同13%減)とそれぞれ減額した。
NECは、今3月期の連結業績(米国会計基準)予想を下方修正し、売上高が従来予想比300億円減の4兆8700億円、営業利益が同150億円減の1350億円、税引き前利益が同150億円減の1200億円になる見通しだと発表した。ただ、最終利益は従来予想の600億円を据え置いた。半導体市況の悪化に伴う半導体子会社NECエレクトロニクスの収益回復の遅れや、携帯電話機の販売不振などが業績下方修正の理由だ。そのNECエレクトロニクスの今3月期の連結営業利益は、液晶パネル駆動用ICなどの低迷による売上減、稼働率の低下が響き、従来予想比170億円減の330億円(前期比42%減)となる見通しとなった。
富士通も、今3月期の連結業績を下方修正した。営業利益は従来予想を300億円下回る1700億円に、同純利益は従来予想を150億円下回る550億円に止まる見通し。主力のソフト・サービス部門が計画より落ち込むのをはじめ、プラズマディスプレイパネルなどの電子部品の採算が予想を下回ったことが響いた。
東芝は今3月期の連結営業利益(米国会計基準)を従来予想の1900億円(前期比9%増)に比べ300億円減の1600億円(同8%減)と、増益予想が一転減益となった。デジタル家電向けを中心に半導体の価格下落が進み、電子部品の採算が悪化しているためだ。
さらにパイオニアも、カーエレクトロニクスをメインに、プラズマテレビ、DVDレコーダーなどデジタル家電に注力しているが、今3月通期の連結業績見通しを下方修正した。今期の連結業績は、デジタル家電の競争激化と製品価格低下を主因に、連結経常利益は従来予想の250億円から収支トントン(前期は418億円)に、最終損益は同100億円の黒字から一転して80億円の赤字(同248億円の黒字)となる見通しだ。
一方、周辺の事業環境の悪化にもかかわらず、堅調な業績推移をみせている企業もある。松下電器産業は、今3月期通期の連結営業利益について、前回予想に比べ200億円増の3000億円に上方修正した。今期から松下電工とパナホームが連結対象に加わったため単純な比較はできないが、プラズマテレビなどの薄型テレビや、デジタルカメラといったデジタルAV機器の売上が堅調に推移した。特に、プラズマテレビの通期売上高は前期比1.8倍の2300億円になる見込み。
シャープの今3月期第3四半期の連結決算では、前年同期比12%増収、最終同18%増益と収益力が向上した。今3月通期の業績見通しについても、従来予想の最高益更新見通しを変えておらず、市場では「デジタル家電の勝ち組」として改めて評価されている。デジタル家電のメイン製品である液晶テレビで、液晶パネルからの一貫生産により競争力を確保、また、採算の高い中小型液晶パネルが多様な表示機器向けに伸びたことが、収益力の向上につながっている。今3月通期の連結業績は、下方修正を強いられる企業が多いなかで、従来予想の営業利益1500億円(同23%増)、純利益750億円(同23%増)を据え置いている。
三菱電機も第3四半期の連結決算を発表、産業用メカトロ二クス、電子デバイス、家電部門が好調で、重電や情報システムの伸び悩みをカバー、連結純利益が前年同期比2.4倍と急伸した。今3月期通期の連結業績見通しも、税引き前利益1000億円(前期比18%増)、純利益700億円(同56%増)と従来予想を変えず、大幅増益の会社側見通しにあり、収益変化率の高さは注目に値する。
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