情報処理推進機構(IPA)は9月26日、「ストリーム暗号」の1種である「Toyocrypt」の解読に成功したことを発表した。
Toyocryptは、2000年に東洋通信機が開発した暗号であり、2000年当時は「解読するのに100億年かかる」といわれ、実質永久に解けない暗号とされていた。しかし、2002年頃から「代数的攻撃法」と呼ばれる手法を用いれば、理論的には解読可能とされ、暗号の国際的な学術会議で実際に解読できるかどうか議論の対象となっていた。
「IPA-SMWはストリーム暗号以外にも対応可能」と言う杉田誠・IPA研究員 |
IPAは、暗号の安全性を評価手法を開発する目的で携帯電話などの無線通信に使われるストリーム暗号の1種であるToyocryptを解読するプロジェクトを2004年に立ち上げた。プロジェクトでは暗号解読のための「IPA-SMW」というプログラムを開発し、IPAが運用する暗号研究専用のグリッドコンピュータに実装し、Toyocryptの解読に挑戦してきた。なお、暗号解読に用いたグリッドコンピュータは、周波数2GHzのCPU128個で構成されている。
暗号解読プロジェクトは、9月20日にToyocryptを27分間で解読することに成功した。プロジェクトのリーダーである杉田誠・IPA研究員によれば「9月26日現在、約20秒台で解読できるようになっている」という。
IPAと同様にコンピュータを使ってToyocryptを解読しようとする試みは「フランスやイギリス、ベルギー、アメリカの民間企業や研究機関でも進められている」(杉田氏)が、実際に解読できたのはIPAが世界で初めてという。
今回のプロジェクトには杉田氏の他に、IPAの「スーパー・クリエータ」に認定された光成滋生氏と渡辺秀行が参加した。光成氏と渡辺氏は、杉田氏が開発した解読手法をコンピュータ・プログラミングに落とし込む作業をしている。
IPAでは今後、ストリーム暗号の1種であり、PCと周辺機器とを無線でデータ通信するBluetoothに用いられる暗号「EO」をIPA-SMWで解読できるかどうか検証していくとしている。また、電子政府の情報セキュリティを保持するための「電子政府推奨暗号」に含まれる128ビットブロック暗号「AES」に対しても、IPA-SMWで解読できるかどうか検証していく方針を明らかにしている。
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