「ソフトバンクはラッキー」--孫氏が語る携帯電話事業の勝算

永井美智子(編集部)2006年05月11日 00時52分

 「100年前も、そして100年後も、こんなに金利の安いときはない。大きな投資をするには今が絶好のタイミングだった。後世の人は『あのときソフトバンクはラッキーだった』と言うだろう」--ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は5月10日、ボーダフォンの買収についてこのように述べるとともに、今後の戦略を語った。

 ソフトバンクは4月27日にボーダフォンを買収し、携帯電話事業に参入した。買収総額は1兆6613億円で、このうち1兆1660億円を銀行からの借り入れでまかなっている。金利は期間によって異なるが、2.5%〜3.5%となっている。

 「今は(通信)技術が根底から変わっている時期でもあり、今がピンポイントだ」と孫氏は話し、第2世代携帯電話(2G)から3Gへの移行が進んで、携帯電話の通信もブロードバンドになるこの時期に携帯電話事業に参入することに勝機を見いだしているとした。

 今後の戦略については、まず2007年3月までに基地局を4万6000局増やして3Gのカバーエリアを拡大する。「ボーダフォンは3Gに800MHz帯を利用できるため、1つの基地局で広いエリアをカバーできる。さらにバックボーンをIP化することで設備投資を抑える」(孫氏)

 端末についても、ユーザーの多様なニーズに応えるべく、国内メーカーと海外メーカーの両方から調達する。国内メーカーとしては新たに、パナソニック モバイルコミュニケーションズの端末を年内に発売する計画だ。

 また、通信速度が上り最大14.4Mbpsの高速移動体通信技術であるHigh Speed Downlink Packet Access(HSDPA)を使ったサービスを2006年秋に開始することも明らかにした。同様のサービスはNTTドコモが2006年夏に開始することを明らかにしている。

 Yahoo! JAPANのコンテンツを生かしたモバイルサービスや、Yahoo!メールと連携したメールサービスなども検討しているといい、「番号ポータビリティ制度が始まる秋ごろには、ソフトバンクらしいサービスをいくつか提供できるだろう」とした。

 ソフトバンクは同日、2006年3月期の通期連結決算も発表している。携帯電話事業の参入に向けて財務面の立て直しを図るべく、販売促進費用を抑えたことが寄与して、営業利益が5期ぶりに黒字となった。また、日本テレコムの買収により、創業以来初めて売上高が1兆円を突破している。

2006年3月期の業績
金額(円) 前期比(%) 前期比(円)
売上高 1兆1086億6500万 32.5 2716億4600万
営業利益 622億9900万 - 876億5800万
経常利益 274億9200万 - 727億4000万
純利益 575億5000万 - 1174億2200万

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