ブランドは消費者、メーカー双方にとって有用なものである。消費者にとっては、ブランドを識別手段とすることによって、低い探索コストで自分が欲しい製品を手に入れることが可能となる。メーカーにとってのメリットはマーケティング上のものもあれば財務的なものもあるが、このようなメリットに近づく第一歩はブランド側からの情報の発信である。
【ブランドからの情報発信】
ブランドの価値はそのブランドから発信された情報の量と質の累積によって決まる。
従って、ブランドが強みを発揮するためには長期的なビジョンのもとに一貫したメッセージを発信し続けることが重要である。こうした点から見れば、ブランディングは企業にとって経営戦略そのものであるといって過言ではない。
ウェブサイトを通じたブランディングでも、ブランドのコンセプト、さらにはその向こうにある経営戦略や経営ビジョンを理解した上で取り組むことが重要となる。
【顧客の愛顧】
ブランドの価値を決める最も重要な要素は顧客の愛顧である。さらに、企業ブランド価値の決定者には、顧客のほか株主や従業員など様々なステークホルダーが加わっている。
【ブランド体験】
顧客がそのブランドから情報を受け取るルートには様々なものがある。主な接点には製品そのものや、営業員や店員、販売店、マスメディアを通じた広告などがある。
顧客はこうした接点を通じてブランドを体験し、愛顧の度合いを高める。ウェブサイトは新たなブランド体験の場として、まだまだ大きな可能性を秘めていると考えられる。
【情報発信(メディア)としての機能+ブランド体験の場】
ウェブサイトは企業が自社で持てるメディアである。ウェブサイトが登場する以前は、広報誌のように限られた対象者に向けられた媒体のほかは、マスメディアという第三者の媒体に記事として取り上げてもらうか、広告料を払って媒体のスペースを購入するしか、企業がメディアに露出する機会はなかった。
しかも、ウェブサイトでは、他のマスメディアのように一方的にユーザーに情報をプッシュするだけでなく、ユーザー側が能動的にアクションをすることを通じて様々なブランド体験の場を提供することができる。
【他メディア依存性−企業サイトまでの導線が必要】
他のメディアに比べるとはるかに低コストで多くの情報を伝えることができるウェブサイトだが、単にウェブサイトを開設するだけではユーザーは来てくれない。
企業の知名度に応じて来訪者が多くなる傾向にある一方、その元となる知名度はマスメディアなど他メディアを通じて形成されたものである。
広告によって集客することも必要である。検索サイトも含め、広告によって成り立っているメディアサイトは、企業サイトにユーザーを誘導する役割を果たしている。一言でウェブサイトと言っても、企業サイトとメディアサイトでは成り立ちが違うため、分けて考える必要がある。
このように、ウェブサイトを通じて自社のブランディングを行う前に、ウェブサイトそのもののブランディングが必要となるが、そのためには企業ウェブサイトは他のメディアの力を借りて自社サイトまでの導線を構築する必要がある。
【効果測定が可能】
よくウェブサイトのメリットとして、効果測定が可能ということが挙げられる。確かに限られたサンプルから得られたテレビの視聴率と比べると、全数調査でありしかも接触以降の行動も把握することができることは大きなメリットといえる。もっとも、アクセスログにはユーザーの内心や、パソコンの前を離れた後の行動まではわからないため、効果の全てが測定可能というわけではない。
ブランディングの目標値として、次の3つを掲げることができる。
そこで、これから3回にわたり、ブランディングの目標値を実現するための方法論と、そこから見たウェブブランディングの方法論の位置付けを明らかにしたいと思う。さらに、最終回ではウェブブランディングはこれからどういう方向に進んでゆくのか、私の未来予想を試みたいと思う。
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