ユーザーのシナリオ(ユーザー心理と行動導線)に注目し、費用対効果の観点からリニューアル対象範囲を限定する点が「シナリオベースリニューアル」の特徴です。全面リニューアルが理想的ではあるが予算制約が大きく実施が困難な場合などにおすすめする手法です。
まず、ユーザー行動観察調査やアクセス解析などの定性・定量調査を活用し、現在のウェブサイトがユーザーにどう使われているのかを調査します。コンバージョンに至るまでのユーザーのウェブサイト利用導線上のどこにボトルネックがあり、改善することでどれくらいの効果が期待できそうか、という仮説を立てます。
単に「アクセス数と離脱率が高いページを上位10ページ」などとページ単位で判断するのではなく、ページ間を遷移するユーザー行動と心理変化を考慮し、流入ページとゴールページを結ぶ線が通る点として個別ページを洗い出すことが重要です。
つまりリニューアル対象範囲の候補は、ゴールに至るまでの一連のユーザー行動導線にある各画面となります。あくまでユーザー心理と行動に立脚すること、これが「シナリオベース」という言葉を用いる理由です。
これに基づき、実際にかけられるコストから、リニューアル対象範囲を最終的に定義します。このとき、必ず「ボリューム」と「伸びしろ(改善余地)」を考慮する必要があります。どんなに現状からの大きな改善が期待できる画面でも、ページで扱う商品にニーズがなく月に5人しかアクセスされないページであれば成果への貢献度は低く、費用対効果が高いリニューアルとは言えません。
「ボリューム」や「伸びしろ」を検討するためには、定量的な数値としてアクセス解析データと成果指標(資料請求数や販売金額)との結びつきを明確にできると理想的です。
より具体的に、保険商品を紹介するウェブサイトを架空の事例とし、リニューアル対象範囲策定の手順をご紹介します。
このウェブサイトにおける代表的なユーザー行動として、「トップページから商品一覧ページをたどり、がん保険Aの商品ページへ遷移する。特長をさらっと流し読みした後はシミュレーションを行い、興味があれば資料請求する」という大まかな流れが各調査から発見されました。
これにより、「トップページ」「商品一覧ページ」「がん保険Aの商品トップページ」「商品特長ページ」「シミュレーションページ」をリニューアル対象範囲の候補として洗い出しました。
しかし、この全てのページをリニューアルする費用はかけられなかったため、資料請求というビジネスゴールへの誘導を妨げる最も大きなユーザーの行動阻害要因を把握し、費用対効果を検討した上でリニューアル対象範囲をさらに絞り込む作業を行いました。
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