創業者が明かすテクノラティの魅力と勝負どころ - (page 2)

インタビュー:別井貴志(編集部)
文:野田幾子
2005年07月29日 13時42分

ブログによる既存メディアの駆逐は、あり得ない

--2004年の7月の民主党全国大会の期間中に、CNNとタッグを組んだプロジェクトがありましたね。放送の内容や発言などに併せて、政治系ブログの論調や意見などをリアルタイムで分析を求められたものでしたが、テレビとブログを本当の意味でうまく結びつけた取り組みだったと考えます。この経験から学んだことや感じたことなどを総括していただけますか

 とにかく、非常におもしろい試みでした。そもそも、CNNのプロデューサーから電話が来たのが、コンベンションの13日前だったんですよ。専門サイトを作ってくれとか、テレビに出てくれとかいう依頼があって……。電話があった30分後には、ほぼ強制的にボードミーティングを始めていました(笑)。今なら、例えば貧困撲滅に向けた大規模な国際キャンペーン「Live8」のサイトは2日間で作れましたが、当時はなにぶん初めての経験でインフラも整っておらず、難しかったけれどそのぶん達成感と喜びもひとしおでした。

 民主党全国大会の1カ月後に行われた共和党全国大会までには、さらにアテンションインデクス(政治注目度指数)を作りました。どんなブログや論調が注目を集めているかがわかりやすくなったのがよかったと思います。

 また、テレビは本当に「早い」メディアだとつくづく感じましたね。例えば、クリントン氏のスピーチが終わったらテレビの場合は30秒後には放映できるでしょうが、ブロガーがそのことについて投稿するのに30秒ではまったく足りず、一番投稿や話題が活性化するのは30分から半日後です。しかし、新聞だったら1日、雑誌だったら1週間以上かかります。だから、ブログはテレビと紙媒体をつなぐ、非常に効率のいいツールだと思っています。また、この30分から半日後の部分が、Technoratiとしてももっとも力を発揮できるところでしょう。

--ブログは新聞や雑誌と競合するものでなく、補完するような新しいメディアということですね。その一方で、「ブロガーの存在が、大手メディアを駆逐するのでは」という意見も聞かれます。例えばある専門分野に関しては、大きなメディアに所属する記者よりも一般人の方が知識を蓄えており、鋭い意見を自分のブログに掲載していることがままあります。Technoratiを使えばそういった役立つ意見を集約することも可能ではないですか

 私は、ブログの隆盛がメディアの体制を破壊するとはまったく思っていません。なぜならブログの投稿には、ブランドやそれに伴う記事への信頼がまだ欠けている状態ですから。

 私は毎日ニューヨークタイムズ紙を読んでいますが、ブログでもニューヨークタイムズの記事に関する何百万もの投稿が存在します。この中には政治に明るい人の意見もあるし、テクノロジーに関してより詳しい解説を載せている人もいます。

 しかし、私はニューヨークタイムズの記者たちが選ぶトピックとその中で彼らが重要視しているポイント、そしてストーリー展開を信頼しています。彼らは記事を書くにあたり、独自にリサーチしています。記事に公正さや客観性を持たせるために。その点が私の大切にしている点なのです。

 繰り返しますが、ポイントは「信頼」です。もちろん、ブロガーたちを信頼していないわけではありませんよ。しかし、Technoratiとしては、すべてのブロガーの投稿した内容を読むわけにはいかず、たといえば内容の保証はしきれないのです。

 ブロガーがすばらしいと思うのは、ニューヨークタイムズなどの記事に誤りがあったり、偏見があったりした場合に指摘できることです。これはメディアの1つとして記事や論調のバランスを保つのに一役買っているでしょう。つまり、既存の大手メディアとブログ、どちらかがどちらかを駆逐するという関係ではないのです。

--Technoratiは、話題になっているキーワードや情報に対して、信頼できるメディアと一般人の最大公約数的な意見が得られるサービスということでしょうか。Technoratiのサービスを単純なブログ検索サービスだと考えている人が多いような気がするのですが。

 受け取り方は、人によって異なりますよね。ブログのことをあまり詳しく知らない人には、ブログ用サーチエンジンという説明で十分だと思います。しかし、メディアの1つとして捉えている人に対しては、「ブログ、ひいては世間の現在の評判がわかるサービス」と言ってもらえばいいかと思います。

 例を挙げてお話ししましょう。Technoratiのハイパーリンクは評判に左右されます。誰かがおもしろい話題をポストしたとして、その情報が信用たり得るかどうか──TechnoratiにそのブログのURLを入力すれば評判がわかるので、信用できるかどうかを判断する材料にできるのです。RSSのウォッチリストもありますから、興味のある話題が投稿されたかどうかがすぐにわかるコミュニケーションツールとしての側面もありますし。Technoratiの説明を1つの言葉で単純に説明するのは、いまはまだ難しいでしょう。

 このように、ウェブサイトを多面的に見たり使ったりするということ──それは、私のビジョンにもつながっています。これまではウェブ「ページ」であり、それぞれドキュメントやディレクトリがある「図書館」的な見方でしたよね。こうした過去の文献を調べるような点では、先ほど話がでたGoogleやYahoo!、MSNが得意な分野で、私自身もこうした大手の検索を利用しています。ここへさらに、着々と変化する最新情報や現在の「ライブなウェブ」としての考え方を加えると、ウェブの使い方はもちろん、人とのかかわり方も変わっていくでしょう。これがTechnoratiの分野です。私が目標としているそのポイントをおさえてもらえれば、Technoratiの利点はより理解してもらえるのではないかと考えます。

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