テレビ朝日の株価がここにきて戻り歩調を鮮明にしている。1月18日には、“ライブドアショック”の余波を受けて一時、29万7000円まで売り込まれたものの、その後は反発に転じ、現在の株価は32万円水準まで回復、2006年1月6日につけた2005年来高値の33万9000円の突破もようやく視野に入ってきた。こうした株価回復の背景について探った。
視聴率競争が一段と激しさを増す中で、テレビ朝日の健闘が続いている。2005年1年間の視聴率では、プライムタイム(午後7〜11時)で13.2%と健闘をみせて、在京民放大手5社のなかで、フジテレビの14.3%に次いで第2位に浮上する躍進をみせた。ゴールデンタイム(午後7〜10時)、全日(24時間)でも、フジテレビ、日本テレビに次いで3位の地位を獲得した。プライムタイムでの単独2位は1959年の同社開局以来初の快挙。こうした、視聴率の上昇に伴って広告収入も順調な拡大をみせている。
2006年3月期の連結業績は、2月2日の第3四半期の決算発表に伴って、従来見通しに比べて上方修正され、売上高は、従来予想比20億円プラスの2480億円(前期比2.5%増)、経常利益は同6億円プラスの161億円(同18.5%増)、純利益も同2億円プラスの89億円(同20.6%増)と好調な推移となる見通しだ。最近まで在京民放大手5社のなかでは“万年4位”が定位置となっていた同社だが、完全に上放れしたかたちだ。
最近の同社の好調ぶりの原点ともいえるのが、2002年春からスタートした「全社変革推進運動」だ。基本的には、番組制作費を抑えつつ視聴率の向上につなげる戦略が開花している。これと併行して連結対象子会社のテレビ朝日ミュージックの音楽事業や、テレショップ事業、DVDソフトの販売なども好調に推移している。
昨年の放送業界は、ライブドアによるニッポン放送の買収を巡るフジテレビとの対決や、楽天によるTBSへの経営統合提案など、M&A(企業の合併・買収)攻勢にさらされ、株式市場でも関連銘柄の株価が乱高下した。しかし、こうした話題の一方で、視聴率競争を巡っても大きな近く変動が起こりはじめている。
2004年まで、視聴率3冠(プライム、ゴールデン、全日)で長期間継続してきた日本テレビが、ドル箱だったプロ野球の巨人戦の視聴率低迷などにより、フジテレビに首位の座を奪われた。そのフジテレビにしても、ライブドアによる買収劇に伴い巨額の出費を強いられたうえに、東京地検特捜部の強制捜査を受けた後もライブドアの株式12.7%を保有しているという大きな爆弾を抱えている。TBSについても、視聴率ではテレビ朝日に抜かれて4位に転落。楽天との経営統合を含む提携交渉も今後の不安材料ともいえる。
こうした中で、テレビ朝日は好調な業績推移をみせており、第3四半期の連結経常利益が148億5100万円(前年同期比30%増)と、今回上方修正した通期の連結経常利益予想の161億円に比べて、すでに進ちょく率が92%と非常に高い水準になっていることから、今期の業績は、最終的にはさらなる上方修正となることも十分射程圏となっている。
今後の株価は、2006年1月6日につけた2005年来高値の33万9000円を更新してくると上昇に拍車がかかってくることも十分期待できそうだ。当面、35万円台乗せを目指した展開に期待が持てそうだ。
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