テーザー銃メーカーのAxon Enterpriseは、同社の人工知能(AI)倫理委員会から9人の委員が辞任したことを受け、テーザー銃搭載ドローン製造の計画を中止した。テーザー銃や、軍や警察向けの製品開発で知られるAxonは、銃乱射事件対策の手段としてテーザー銃搭載ドローンを販売しようとしていた。
AI倫理委員会からの反発は、迅速で強力なものだった。
辞任した人々からの声明文には「われわれは皆、頻発する銃乱射事件に対処するために、何らかの行動が必要だと切実に感じている。しかし、技術による警察活動力の強化というAxonの提案は、他にはるかに無害な代替手段がある状況を鑑みると、正しい解決策ではない」とある。
この論議は1年にわたるものだった。Axonは、武装ドローンのアイデアを倫理委員会に提示し、委員会はこのシステムが悪用される可能性に懸念を示した。元のアイデアは、銃撃犯を標的とするドローンの配備だったが、当局がそれ以外の用途にドローンを活用することを阻止することはできないだろう。倫理委員会はその危険性を認識し、このアイデアを否定した。
辞任した人々はこう綴っている。「こうなってしまって残念だ。われわれがこの倫理委員会に参加したのは、それによって警察技術のもたらす害を軽減し、より多くの利益を得て、Axonの方向性に影響を与えられると信じていたからだ。一時期、同社の決定にわれわれの影響が反映されているのが確認できた。製品への顔認識機能の非搭載、ソーシャルメディアサイトから個人情報を収集するソフトウェア開発の撤回、ナンバープレートの読み取りシステムの利用規制に必要な法案の推進など、われわれが変化をもたらしている具体的な証拠を目にした。警察組織ではなく、コミュニティーがAxtonの顧客であるべきだというわれわれの主張を受け、同社はコミュニティーのリーダーを集めて製品やサービスについての見解を共有するグループ、Community Advisory Coalitionを設立した」
しかし、元委員らは、ドローンシステムの開発を進めるというAxtonの決定に落胆した。
「わずか数週間前、倫理委員会の大多数(8対4)が、テーザー銃搭載ドローンのコンセプトを吟味するための予備テストを中止するよう勧告した。そのコンセプトでは、テーザー銃搭載ドローンは、それによって警察官が銃を使わずにすむ場合、つまり人命が失われずに済む可能性がある状況でのみ使われることになっていた。Axonがわれわれの勧告にもかかわらずテストを続ける可能性を認識したので、われわれは責任を持って予備テストを行うために必要となる規制について、強い態度で臨んだ。われわれは、Axonの提案とわれわれの審議に関する公開レポートを作成し始めたところだった」
だが、計画どおりには進まなかった。
「Axonが6月2日、全く異なるユースケースについて発表するとは誰も予想していなかった。その発表は、Axonの目標が、さまざまな学校や公共施設に無数のテーザー銃搭載ドローンを配置し、AI採用の永続的な監視のために起動させるというものだった。この発表から、数年にわたる努力でわれわれが浸透させようとした価値観を、同社が根本的に受け入れていなかったという結論に達した」
武装ドローンやドローンによる監視は物議を醸している。警察官による過剰な武力行使への懸念から、米国自由人権協会(ACLU)などの人権団体は、武装ドローンに強い姿勢で臨んでおり、プライバシー擁護派は、政府機関による広範なドローン監視を恐れている。
Axonはひとまず計画を中止したが、今後この分野で同じように物議をかもす企業が出てくるかもしれない。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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