リクルートの不動産サイト「SUUMO」は、「2022年“住まい”のトレンド予想」を公開した。先に発表した「SUUMO住み続けたい街ランキング2021」でランキング上位の街の特徴を解説しながら、コロナ禍を経て、街に求められていることについて話した。
SUUMO住み続けたい街ランキング2021は、2021年10月に発表されたもの。住み続けたい自治体ランキングでは、1位武蔵野市、2位中央区、3位文京区など、50位までに23区が多数ランクインしているほか、4位逗子市、8位葉山町、鎌倉市、藤沢市、茅ヶ崎市、中郡大磯町と「湘南・三浦エリア」、21位にさいたま市大宮区、22位に浦和区など「さいたま市中心エリア」などが上位にランクインしている。また、14位横浜市都筑区、25位印西市、36位稲城市、39位多摩市と「郊外大規模ニュータウン」エリアも人気が高かったという。
SUUMOリサーチセンター長兼SUUMO編集長の池本洋一氏は「神奈川県は横浜からみなとみらいエリア、埼玉県は大宮区、浦和区などさいたま市が上位と『住みたい街ランキング』に符合する部分が多いが、面白い結果となったのは、横浜市都筑区、印西市、稲城市、多摩市など、ニュータウンと呼ばれるエリアが上位に入ってきている点。ニュータウンの魅力は公園などが計画的に配置されていて緑も多く、商業施設も整っているところ。コロナ禍により街で過ごす時間が長くなったことで、安心安全で快適なまちづくりの良さを実感した人も多いのではないだろうか。自然災害が頻発する中、災害に強そうな土地を選んで開発している点も不安が少ない。こうした理由から、ニュータウンの良さが見直されているのではないかと考えている」とコメントした。
住み続けたい駅ランキングでは、1位は銀座と築地の中間にある東銀座、9位馬喰町、18位東日本橋、21位人形町、24位水天宮前、27位馬喰横山など中央区の駅が多数上位に入ったほか、藤沢市の鵠沼・江ノ島エリアの駅が、2位石上駅、3位鵠沼駅、6位片瀬江ノ島駅、7位鵠沼海岸駅、8位湘南海岸公園駅とトップ10の半数を占める結果となった。
「中央区の地下鉄沿線駅と湘南エリアが上位を独占しているが、特筆すべきは、北参道、代々木上原、千駄ヶ谷、参宮橋、原宿なども人気駅としてランクインしている点。これらの共通点は代々木公園の周りにある駅ということ」(池本氏)と解説した。
池本氏は「街の魅力と住み続けたいという相関関係において強い因子となるのは、安心安全で防災などがしっかりしている点が1つ、もう1つは街の賑わいや個性的な店がある、街が発展しそうといった将来への発展や期待。今回上位の街を取材して見えてきた住み続けたい街の型として5つを分別した」とした。
発表されたのは「都心ローカル型」「郊外中核型」「郊外ニュータウン型」「郊外自然型」「遠郊外特異型」の5つの型。都心ローカル型の代表格は中央区、目黒区、代々木公園周辺エリアなど。
「中央区は、大型の商業施設が充実している一方、昔ながらの文化や古い町並みも残る。地域のお祭りも盛んで、飲食店などは常連客が6~7割を占めるなど、密な付き合いがあることがわかった。こうした環境は顔見知りを作りやすく、それが街に対する安心、愛着につながっている」(池本氏)と分析する。
一方、目黒区は「夫婦+子ども」で住み続けたい街1位を獲得。「子育ての面から見ると、目黒区は待機児童がゼロで、本格的な習い事をさせられるなどのメリットもある。親の目線からすると、目黒、中目黒、自由が丘と人気の街がズラリと並び、人からうらやましがられる場所。どこの駅も商店街があり、個性的でナショナルチェーン以外の店もあるなど満足度も高い。目黒は、子育てよりもカップルやシングルの街というイメージがあるかもしれないが、子育てのメリットを得られつつ、親も楽しく暮らせる。親の満足度も高い街であることが、実は子育ての視点においては重要なのではと気づいた」(池本氏)とした。
郊外中核型の代表格は武蔵野市だ。池本氏は「吉祥寺を中心に歩ける範囲で娯楽や学び、リフレッシュできる場所などが完結する。個性的な商店街があり、多彩な街イベントも企画。街がコンパクトかつ、歩きたくなる街だから、知り合いと会う機会も多い。一方で、200近い市民活動団体があり、街の中長期計画に参加できる仕組みを用意。街づくりにも携われる」と街の一員になる仕組みが出来上がっていると説明した。
郊外ニュータウン型は、千葉、港北、多摩と3つのニュータウンを紹介。「港北ニュータウンは最後発なので、公園から公園を緑道でつなぐなど、うまく作られている。自然環境と商業施設がそろい、暮らしやすい。印西ニュータウンは、地盤が強くデータセンターに向く立地特性を持つ。当初は計画どおり産業集積ができず土地が空いていたが、そこにデータセンターができ、IT関連の人材もやってきて街が活性化している。多摩ニュータウンは早くに作られたため、高齢化問題などが挙げられているが、見直されているところがあるのではと思っている」(池本氏)とコメントした。
郊外自然型では、総合4位、シングル・夫婦のみで1位となった「逗子市」を代表格として紹介。中央区と同様に地域独自のイベントが実施されているのが特徴だという。池本氏は「街の人がクリエイティブでおしゃれな海の家や雑貨を集めたフェスなども開かれている。移住者にも寛容で顔見知りも作りやすい。さらに通勤面でも逗子駅始発が多く魅力的」とした。
遠郊外特異型では、埼玉県で4位にランクインした秩父郡横瀬町を紹介。「よこらぼ」という、まちづくりの実践や実証試験などができる官民連携のプラットフォームを用意し、これまでに177件の提案があり、101件を採択した実績を持つ。池本氏は「横瀬町のインフラを使ってプロジェクトを提案してほしいと企業や個人に呼びかけて始めた。横瀬町以外の人にチャレンジしてもらった結果、町内の人もチャレンジする風土ができた」(池本氏)と話した。
池本氏は「住み続けたい街は、基本に街のインフラがあり、それに住み続けたい街になるための熟成の工夫がある。例えば、海山川といった自然をいかして、イベントを実施したり、保育教育面で先進的なプログラムを作ったりと、熟成の工夫をすることによって住み続けたいと思ってもらえる環境作りをしている」と深堀した結果、見えてきた事実を紹介。
続けて「わかったのは、街に顔見知りができることが、住み続けたいと思う要素に大きく関わっていること。郊外の大型商業モールは利便性は高いが出会いが生まれにくい。人と人が出会い、街で暮らす喜びを提供できるかが重要と考える」とまとめた。
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