大富豪同士の戦いがひとつ終わったが、両者の戦争はまだ続いている。Jeff Bezos氏とRichard Branson氏が、7月にそれぞれ宇宙の入口に達し、短時間の宇宙滞在を果たしたばかりだが、それはひとまず忘れよう。注目すべきなのは、Bezos氏のBlue OriginとElon Musk氏のSpaceX、この両社の間で続く熾烈(しれつ)な闘争だ。しかも、勝負のオッズは、地上と宇宙を分ける架空の境界線、「カーマンライン」よりもはるかに高くなっている。その確執はついに、米航空宇宙局(NASA)を巻き込み、人類が再び月を目指す「アルテミス計画」に支障をきたす可能性も出てきた。
アルテミス計画は、早ければ2024年に宇宙飛行士を月まで運ぶことを目指しており、NASAは4月、その手段としてSpaceXと同社の宇宙船「Starship」を選定した。対抗馬だったBlue OriginとDyneticsは弾き出された形だ。Blue Originは、米政府会計検査院(GAO)に対する抗議が退けられたことを受け、米国時間8月16日、連邦裁判所にNASAを提訴した。
「Blue Originは、米連邦請求裁判所に対し、NASAの有人着陸システム(HLS)採用プロセスにおける瑕疵(かし)の是正を求めて訴状を提出した」と、同社は声明の中で述べている。「公平性を回復し、競争を確保して、米国が安全に月に戻れるよう、この調達プロセスとその結果に見られる問題に対処すべきである」
月着陸のミッションに向け、NASAがHLSの契約先を1社しか選定しなかったのは、確かに予想外だった。NASAの幹部は、開発競争を促すために複数社と契約したいという意向を示していたからだ。その後NASAは、2社と契約できるだけの予算が連邦議会で承認されなかったと説明している。それを受けた抗議の中でBlue OriginとDyneticsは、1社分の予算しか確保できないことが明らかになった時点でNASAはプログラムの条件を見直すべきだったと主張。さらに、NASAがSpaceXと最終価格に関して不適切な交渉を持ったと申し立てている。SpaceXは3社のうち最も入札価格が低かった。
こうした抗議をGAOは退けており、16日の提訴は非公開だったものの、Blue Originの提議によると、同社はGAOに提出したのと同じ情報を、「追加の機密情報」とともに引用する予定だという。
要するに、Blue OriginがNASAを提訴した理由は、NASAと連邦政府がMusk氏およびSpaceXに便宜を図っているから、ということだ。
宇宙をめぐってこうした敵対関係が展開するというパターンに、覚えはないだろうか。ご存じなければ説明しよう。
かつて、Musk氏とBezos氏は宇宙分野をめぐって友好的なライバルだったこともあると伝えられている。
2004年には、2人が一緒に食事をしながら写真に収まったこともあった。どちらの宇宙事業もまだ始まったばかりの頃だ。その会合からしばらくして、2008年にはSpaceXが「Falcon 1」の打ち上げテストに初めて成功する。一方、Blue Originはその4年の間に小型のテスト機で低高度の飛行テストを何度か実施した。
1/ In 2004, Elon Musk and Jeff Bezos met for a meal to discuss space.
— Trung Phan (@TrungTPhan) March 1, 2021
It was one of their few in-person interactions.
The conversation they had perfectly captures the different approaches they've taken to space exploration.
Here's the story pic.twitter.com/g8hAsEj3d4
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