自動運転車は既に、自らの目で見て自ら判断を下すようにまでなった。だが、間もなく登場する5Gネットワークで動く新しい技術は、また別の高度な機能を実現しようとしている。相互に対話する能力だ。C-V2Xは、スマートフォンの世界に迫っているのと同じ5Gネットワークを利用できる通信技術で、他の車との通信をはじめ、交通信号など道路上の機器との通信も実現することにより、機能と安全性を向上する。
車がその位置や速度、進行方向をブロードキャストするだけではない。そのような技術は、既に現行の4Gネットワークでも一部で実現されている。5Gを利用する新技術では、一時停止の交差点で優先通行を譲り合ったり、車線の合流のタイミングを図ったりすることが可能になる。つまり、人間のドライバー同士が交わすアイコンタクトと同じことを、デジタルで再現しようというのだ。信号と通信することで、青信号に合わせて運転速度を加減できるようになる。車同士が通信して、隊列走行する車の数を増やし、燃料効率を向上することも可能だ。
この技術は、衝突の危険性や路面凍結などの警告という形で、当初は従来型の車に役立つはずだ。だが、自動運転車をもっと高機能に、そして実用性を高めるうえで真価を発揮すると推進派は言う。スマートになっていけば、自動運転車は自ら判断できるようになり、制御を人間の手に戻したり、事故を避けようとして速度を下げたりしなくて済むようになる。
「C-V2Xは、感覚を与えることによって、自動運転技術の潜在能力をフルに引き出す」と、5G Automotive Association(5GAA)の最高技術責任者(CTO)を務めるMaxime Flament氏は述べている。
C-V2Xは、20年ほどの歴史を持ちながら散発的な成果しかあげていない狭域通信(DSRC)という取り組みを追い越す勢いだ。「V2X」は、車があらゆるものと通信することを表している。つまり、車車間(V2V)、車とインフラ間(V2I)、車と歩行者間(V2P)だけでなく、それ以外のものも含まれる通信だ。「C」は、スマートフォンと同じセルラーネットワーク技術を用いることを意味している。
C-V2Xを推進している業界団体5GAAは、8社が参加して2016年に創設された。Flament氏によると、現在の加盟企業は120社、複数の業種にまたがって大手も参加しているという。
自動車業界からは、Audi、BMW、Daimler、Ford Motor、General Motors、本田技研工業、現代自動車(ヒュンダイ)、日産自動車、Volkswagen、Volvoなどが参加している。ハイテク業界ではIntel、サムスン、Qualcommなど、車載電子部品業界ではAlpine、Continental、Boschなどが名を連ね、ネットワーク端末メーカーとしてはNokiaやEricsson、キャリアとしてはAT&T、T-Mobile、Verizon、Vodafoneなどが加盟している。
C-V2Xは、現在の4Gネットワークで既に利用されている。移動体通信の標準を策定している業界団体3GPPが、4Gネットワーク上で基本的な運転情報をブロードキャストできるように、C-V2X技術の一部を採用したからだ。3GPPの「Release 15」は、2019年後半に登場が予定されている5G標準に合わせて更新されており、車で使える動画や地図のダウンロードがサポートされる、とNokiaでV2X事業責任者を務めるUwe Puetzschler氏は話している。
だが、2020年中頃に予定されている「Release 16」では、C-V2Xのさらに進んだ機能に対応し、複数の車が最適な形で交差点の通行を調整し合う機能などが盛り込まれる、とPuetzschler氏は説明する。そのために必要なのが5Gの高速レスポンス、業界で言うところの低レイテンシーだ。Puetzschler氏によると、Release 16ではレイテンシーが数十ミリ秒から10ミリ秒にまで短縮されるという。乗用車やトラックを隊列走行させるのにも、そのくらいの速さが必要になる。
5Gでは、転送できるデータの量も4Gより増えるので、ビデオカメラやレーダーなどから入力されるセンサーデータも共有できる。「大型トラックを追い越したい場合には、そのトラックの前方からセンサーデータを得られれば便利だろう」(Puetzschler氏)
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