Teslaの最高経営責任者(CEO)のElon Musk氏は、米国時間4月22日に開催された「Autonomy Investor Day」セミナーで、同社の新しい完全自動運転技術に関する詳細情報をいくつか明らかにした。現在、Teslaの電気自動車に対する世界的な需要、株価の継続的な健全性、同社の経営陣(Musk氏も含む)の安定性について、疑念が高まっている。自社の自動運転技術について詳しく説明するという計画は、そうした中で立てられたものだ。言い換えれば、Autonomy Investor Dayは、異彩を放つ自動車メーカーであるTeslaの歴史において、極めて重要なイベントになることが見込まれていた。そして、Musk氏が述べた主張のいくつかを基に考えると、その予想は正しかったようだ。
4月3日、TeslaはAutonomy Investor Dayを開催する計画を初めて発表した。当初の開催予定日は4月19日(金曜日)だったが、その後、「投資家のフィードバックに基づいて」4月22日(月曜日)に変更された。
Teslaの最初のプレス発表によると、同社は「自動運転ソフトウェアおよびハードウェアの開発において大きな進歩を遂げており、それには、現在生産段階にあり、将来の無線ソフトウェアアップデートを通してFull Self-Driving(完全自動運転:FSD)を可能にするTeslaのFSDコンピューターも含まれる」という。Musk氏は4月15日、「完全自動運転にアップグレードできない自動車を2019年に買うのは、1919年に自動車ではなく馬を買うようなものだ」とツイートして、大きな賭けに打って出た。
Teslaは、イベントに参加した投資家たちに最新バージョンの「Autopilot」を体験してもらうため、試乗も実施した。そこでは、現在まだ開発中の機能のデモも行われた。
ほかの自動車メーカーやサプライヤーは、野心的なスケジュールに尻込みして、山積する技術的な課題に対処するために生産期間を引き延ばしているように思えるが、Tesla(特にMusk氏)は、このような段階で完全自動運転技術を約束したことで、批判を浴びている。
例えば、TeslaがFull Self-Drivingと呼ぶ同社のハードウェアには、自動運転車の開発を競うほかのほぼすべての企業が安全で信頼できる運転のために必要と考えている中核技術が含まれていないようだ。Musk氏はプレゼンテーションの中で、2019年中にTeslaの完全自動運転システムの機能実装が完了すると考えている、と述べた。さらに、2020年第2四半期までに、同システムはユーザーが乗車中に注意を払わなくてもよくなるほど強力になる見通しだ、と言い添えている。最後に、この調子でいけば、Teslaは2020年末までに米国政府から規制に関する承認を得られると考えている、と語った。
Teslaの一連の完全自動運転技術では、前向きに設置されたレーダーと超音波センサーに加えて、カメラのネットワークも利用して、車体の周囲の環境を監視する。Audiのような自動車メーカー、MobileyeやWaymoのようなテクノロジー企業など、この成長分野におけるほかのすべての主要企業は、極めて細かい3Dマッピングだけでなく、LiDARセンサー(レーザーレーダー)も使用するプロトタイプを開発している。だが、Teslaはそのような技術を見せておらず、Musk氏は、過去にLiDAR技術に否定的な考えを示したこともある。代わりに、Teslaは同社のFSD技術を駆動するために自社で開発した新しい人工知能(AI)チップセットという形で、大きな進歩を遂げたことを示した。
Teslaが自動運転を容易にするために使用することを計画しているセンサーを別にすれば、同社のハードウェアソリューションは驚くほど強力であるようだ。完全自動運転(FSD)コンピューターパッケージは、冗長性を備えたカスタムチップを利用して、ハードウェアのそれ以外の部分から提供される大量の情報を処理する。Teslaが一から設計したこのコンピューターパッケージは、そうした処理を実行しつつ、このシステムが車両の全体的な走行距離に及ぼす影響を減らすために、使用電力も最小限に抑える(このケースでは100ワット以下)。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス