3月11日の東日本大震災から8カ月も経つが、いまだ復興が進んでいるとはいいがたい状況が続いている。人々の関心も以前よりはだいぶ薄くなっている感もある。
今回はヤフーからの情報提供、協力を受けて「検索データ」から東日本大震災を振り返ってみた。
協力していただき、実際にデータを分析したヤフーのR&D統括本部 編集本部 検索編集部の池宮伸次氏は、「過去にこれほど検索が爆発的に増えたことはありませんでした。貴重なデータを共有して、今後どう検索サービスに生かせるかということでまとめました」としている。
それでは、順を追ってみていこう。資料1は、1分単位で計測した「地震」の検索数の推移だ。2010年年11月30日に起きた小笠原諸島西方沖の地震(マグニチュード6.9)と、2011年3月11日の東日本大地震の時のグラフを比べた。通常は地震発生直後に急激に検索数が上がり、20分以内にその検索が収束する傾向にあるが、東日本大震災の時は1日中、さらに2日目に渡っても検索が続いていた。これは、過去の地震とはまったく違う点だ。
資料2は、3月11日当日の「地震」の検索数推移に地震情報を重ねたグラフだ。地震発生の14時46分から6分後がもっとも検索された。本来であれば地震直後の検索がもっとも多くなる傾向にあったが、地震の規模が大きすぎたということでピークがずれたとみられる。
資料3は、地震発生当日の3月11日の「地震」検索を地域分布で見たもので、被害の大きかった東北からの検索がほとんどなかった。これは地震と同時に東北が停電してインターネットが使えなくなったためだろう。小さいが、右下の地図は2011年3月9日に同じ震源で地震が発生した時で、本来はこのようなマップとなるのがこれまでだった。
資料4は、2006年1月1日~2011年9月25日のおよそ6年近くの「地震」検索数推移をみた。過去6年間でもっとも高いのが、2008年5月8日午前1時45分の茨城県沖地震(マグニチュード7.0)だったので、今回の東日本大地震の規模の大きさが一目でわかる。
下のグラフは、この期間の中で2011年3月1日~2011年9月25日を抜き出して拡大した。余震があるたびに高くなっていることがわかる。
資料5は、ひと月ごとに「地震」を含む検索ワードの上位10件を抜き出した。月が進むにつれて「地震予知」や「地震雲」など、地震を事前に察知したいニーズの高まりがわかる。
資料6は、「津波」について調べた。3月11日地震発生14時46分~23時59分の1日中の「津波」ワード検索数の推移だ。津波の情報が発令されたのが15時ちょうどで、グラフでは赤い縦線の部分。本来であればこの前後に検索数のピークがくる傾向だったが、実際には検索数のピークは16時10分前後だった。警報情報をインターネットで調べるというユーザーがあまり多くなかったといえる。地震に関しては地震発生の直後に検索のピークを迎えるが、津波に関しては発生から1時間以上ずれている。津波警報や速報を能動的に探す人はあまりいなかったということになる。
資料7は、「津波」と「地震」の検索数を比較した。地震を100とすると、津波の検索数は6.7しかなかった。津波を能動的に調べる人は圧倒的に少なかったのだ。
資料8は、3月11日に「津波」を検索した数の地域分布情報。東北からも検索はあったと思われるが、停電の影響などで正確なデータは把握できていない。しかし、東北以外で「津波」を検索することが多かった地域は、静岡県、三重県、和歌山県、徳島県、高知県、宮崎県など、太平洋の沿岸部と沖縄県で、影響を受ける懸念があった地域といえる。この半面、内陸部や日本海側はあまり検索されなかった。
そして、地震発生当時の検索数全体を調べたときに、被災地からの検索数よりも圧倒的に関東からの検索が多かった。それは、電気も使えるし人口も多いので、そうなるのは当然だがその中にも特異な傾向があった。
東日本大震災の発生初日にもっとも検索されたジャンルは、交通情報関連だった。資料9は、3月11日当日の検索ワード上位100位までをジャンル分けして、それぞれの検索数の合計をグラフにした。「鉄道」「道路」「通信」などが含まれているが、ほかの「地震」「SNS」「検索・ポータル」「ライフライン」などに比べて、圧倒的に「鉄道」が多かった。特に、関東は運行情報をもっとも多く調べられた。これは地震と停電問題が重なり、首都圏のほぼすべての交通機関が影響受けたことで、過去に例を見ない混乱となったためだ。
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