ジョブズ、孫正義--カリスマを継ぐ難しさとは

2011年3月3日 17時00分

 AppleのCEO、Steve Jobs氏が3月2日のiPad 2発表会に出席しました。医療休養中とされていましたが、「今日は休んでいたくなかった」と述べ、いつもどおりのプレゼンテーションを披露しました。

 とはいえ、Jobs氏が医療休暇を取るのはこの7年間で3回目。Appleは内密に後継者計画を立てているようです。2月23日に開催された株主総会では、この後継者計画を開示せよという株主から要望が上がりましたが、結局、この議案は否決されました。

 一方、日本ではソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏が大々的に後継者育成プロジェクトを推し進めています。自身の後継者を発掘、育成するために「ソフトバンクアカデミア」を開校しました。

 カリスマ経営者の後継者選びにはどのような課題があるのでしょうか。また、パネリストの皆さんのなかには創業者の方も多くいらっしゃいます。自身の後継者問題について考えたことがありますか。ご意見をお聞かせください。


  • 小川浩(@ogawakazuhiro)
    小川浩(@ogawakazuhiro)さん (株式会社リボルバー CEO)
    カリスマ創業者の後を継ぐというのは、非常に困難であることは言うまでもありません。SONYも盛田さんの遺志を引き継いでいるとはとてもいえません。もちろんホンダやトヨタのように何代かにわたってリーダーが変わっていっても、企業体として有力であり続けることは可能だし、ディズニーのように強烈なカリスマの持ち主だった創業者の影響を敢えて薄めていくことで逆に発展している企業もあります。

    つまり、カリスマ創業者の後継者にとって重要なことは、その創業者の良いところをうまく抽出し、エッセンスを活かしつつも、その強烈な個性が実はもたらしている悪影響(創造時には有効であるけれど、事業の発展期には有害になりかねない手法など)を巧妙に捨てていかねばならない、ということです。それは難しいけれど、決して不可能ではありません。
    逆にやってはいけないのは、創業者を超えようと焦るばかりに、良い部分さえも否定してしまってオリジナルのやり方を生むことに固執することです。

    日本古来の芸能の教えに「守・破・離(しゅはり)」という言葉があります。
    まず師匠の教えを守り、次にそのやり方を少しずつ自分なりのやり方に替え、そして最後は師のもとを離れて独立する。それが最善という意味です。
    この言葉どおりのやり方をうまく踏襲できれば、後継者が仕損じることは本来はないはずです。まあ、簡単なことこそ難しいんですけどね。人は(特にカリスマ創業者の後を継げるほどの優秀な人であればあるほど)自尊心や虚栄心についつい負けてしまいがちだからです。

    具体的にいうと、スティーブ・ジョブズの後を継ぐ方が、孫さんの跡を継ぐよりはまだ易しい気がします。ジョブズのやり方はシンプルで分かりやすい。製品開発やマーケティングにおけるAppleならではの要諦はロジカルですから、ティム・クックは「守・破・離」さえ心に刻めさえすれば、無事引き継げるでしょう。デザインへのこだわりや美学はジョナサン・アイブに、一任する勇気があれば大丈夫でしょう。
    孫さんのケースは、ちょっと違います。あれだけの巨額の投資を矢継ぎ早に行い、無理を通せるような正にカリスマ的な手法(というより、結果を恐れない強引さ)を真似できる人はほとんどいないと思います。僕なら毎晩きっとうなされてしまうでしょう(苦笑)。
    今のAppleは成功の方程式が確立され、かつ論理的であるので、まだ経営しやすいけれど、ソフトバンクの現在の経営を引き継げる人は、世界でもそうそういない気がします(笑)。


    2011-03-06 13:59:21

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