米RealNetworks最高経営責任者(CEO)、Rob Glaserの純資産が、2000年初頭に50億ドルというびっくりするような額に達したとき、同氏はようやく、Bill Gatesを見返したという感慨を味わうことができた。
同僚たちが、頭が良く、対抗意識が強いと評するGlaserは、米Microsoftのマルチメディアシステムグループのバイスプレジデントまで登りつめた野心的な若い幹部だった。エール大卒業生であるGlaserは、1993年にMicrosoftを去り、当初、Progressive Networksと呼ばれていたRealNetworksを創業した。
当時、それは賢い動きのように見えた。マルチメディアソフトのサプライヤとして、RealNetworksは、ドットコム時代の絶頂期に自社の評価額が急上昇していくのを目撃した。
しかし、バブルがはじけた時、前のボスに勝つという、Glaserの野心も潰えてしまった。それ以来、RealNetworksは調子を取り戻すのに悪戦苦闘し、インターネットケーブルテレビ局として同社を立て直すことを余儀なくされたが、これにはコンテンツストリーミングビジネスにMicrosoftが参入し、競争にさらされたことも大きく影響している。
「Microsoft時代からRobを知る者なら誰でも、彼がBill(Gates)に対して何かを証明しようとしていたことを知っていると思う」とかつて同僚だったある人物は語っている(マイクロソフト幹部であるこの人物は匿名でのコメント引用を求めた)。「RobがRealを立ち上げた際に、彼のなかで大きな部分を占めていたのは、自分ひとりでも大きなことをやれると証明することだった」(同人物)
この人物は、GlaserがRealを創業した動機付けについて、同氏がMicrosoftのマルチメディア部門の責任者になれなかったことにあると説明した。
「Billはマルチメディア部門を率いる責任者として、RobではなくNathan(Myrhvold)を選んだ。だからRobはMicrosoftを辞めた。この人事は、Billがマルチメディア関連の取り組みを1人の人間に任せたいと考え、そしてその人間がNathanだったから、大きな政治的争いとなった。Robはあの時以来、Billに対して間違った人間を責任者に選んだことを無意識にも証明しようとし続けている」(同人物)
Peter Harterは、かつて米Netscapeでチーフロビイストを務め、Microsoftを相手に回してブラウザー戦争を戦った人物だが、そのHarterも、Glaserのビジネス上の野望には、個人的な要素が幾分混じっているという点に同意している。
「彼はいつも肚に一物(いちもつ)のある人物で、Billくらいの大物になりたがっていた」とHarter。「彼はとても有能だ。これまでずっと成功してきており、自分の会社をうまく経営してこれたため、おかげでたくさんの人間が豊かになれた」(Harter)
早口でまくしたてる、がっしりした体格のGlaserは、マスコミに自分の会社を売り込むとなると、物怖じしない。ビジネスに対する乱暴なアプローチも、RealNetworksの初期の成功にはそれが不可欠だったと述べる人々からは賞賛を勝ち得ている。
また同氏は、かつてのボスを攻撃することにもためらいを見せないできた。
Microsoftの商習慣に関する政府の独占禁止裁判が始まるちょうど数カ月前の1998年の夏、Glaserは上院小委員会の前で証言し、Microsoftに打撃を与えた。同氏は、Realの類似の製品を無効にするために、Microsoftが自社のメディアプレーヤーを不正な操作を加えたと主張した。Microsoftは、この非難をかわし、問題はソフトウェアのバグによるものだと反論した。
今回、Glaserは告発を一歩進め、Microsoftを相手取って、同社がデスクトップ分野での独占状態を悪用して、自社のメディアプレーヤーを普及させたとする、独占禁止訴訟を起こした。
「RealがかつてのNetscapeと同じ目に遭ったかどうかを皆が問うという意味では、この訴訟はブラウザーを巡る独禁法訴訟の再現だ」とある元同僚は語った。「いまRealは、当時のNetscapeと同じ苦情を述べている。結末のほうも同じようになるのかどうか、私にはわからない。但し、Robが傷ついていることは(今回の提訴で)明らかになったはずだ」(元同僚)
RealNetworksでの、誰がボスであるか疑う余地のない同氏の絶対的な管理スタイルを嫌い、ここ数年のあいだに、何人かの幹部が同社を去っている。Glaserは、その知性を高く買われているが、同時に気が短いことで恐れられてもいる。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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