コスト削減策など改革進展が高評価
2005年の上半期を記事で振り返った(関連記事)あとは、株価のパフォーマンスでIT・インターネット業界を動向を見直そう。
大型ハイテク株やIT・インターネット関連株の上半期のパフォーマンスを調べると共に、新規上場(IPO)株の動向も探った。業績の推移と共に振り返る。なお、企業の選択などはすべて編集部で行った。
それでは、まず大型ハイテク株から見てみよう。上半期騰落率ランキング(表1)を見ると、一部の銘柄を除いてかなり低調な株価推移を強いられたと判断せざるを得ない。22銘柄中、上昇したのは約4割にあたる9銘柄だ。さらに、2桁の上昇率を示したのは3銘柄しかない。22社の平均騰落率は▲2.58%とマイナスだ。参考までに、主な米企業も表2に示した。
表1:2005年上半期大型・主力ハイテク株騰落率ランキング
(2004年12月30日〜2005年6月30日、単位:円、%)
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(すべて権利落ち修正済み、編集部調べ)
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表2:米国2005年上半期大型・主力ハイテク株騰落率ランキング
(2004年12月31日〜2005年6月30日、単位:ドル、%)
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(すべて権利落ち修正済み、カッコ内は株式分割、編集部調べ)
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この株価面での低迷について外国証券のアナリストは「もちろん、各社の足元の業績見通しが芳しくなかったというのが一番の要因であることは確かだが、2004年のアテネ五輪の開催を先取りして株価も盛り上がったデジタル家電関連景気の反動が依然として尾を引いている面もありそうだ」と指摘している。
今回のランキングで上昇率17.13%でトップとなったのが三菱電機だ。三菱電機の2005年3月期の連結決算(米国会計基準)は、売上高3兆4106億円(前々期比3%増)、営業利益1206億円(同30%増)、税引き前利益1023億円(同21%増)、純利益711億円(同59%増)と、非常に好調な決算となった(関連記事)。
FA機器や自動車電装品などを手掛ける産業用メカトロニクス部門が前々期比10%増の723億円。家庭電器部門は海外中心にエアコンが、国内では冷蔵庫などがそれぞれ好調で同11%増の256億円となった。さらに、2004年3月期には赤字となっていた電子デバイス部門も、パワー半導体などの好調が寄与して営業利益段階で黒字に転換した。2006年3月期の連結業績見通しについては、売上高3兆4500億円(前期比1%増)、営業利益1300億円(同8%増)、税引き前利益1200億円(同17%増)、純利益750億円(同5%増)を見込んでいる。
しかし、三菱電機が7月28日に発表した、2005年度第1四半期(4〜6月)連結業績は、営業利益が前年同期比20.3%減の209億円になった。電力プラントなどの重電システム部門や携帯電話などの情報通信システム部門が悪化したのに加え、FA(ファクトリー・オートメーション)システム事業などの産業メカトロニクス部門が減益になったため。売上高は同1.8%増の7379億円、純利益が同10.5%減の111億円。しかし同社は、中間期業績見通しを変更していない。
三菱電機の大きな特徴は、各事業部門とも順調に利益が出せる収益体質を構築つつある点。典型的なのは、コスト削減策だ。同社は2007年3月期までの2年間で、グループの資材や部品の調達コストを2割削減する「AΣ(エーシグマ)21活動」を提唱している。鋼材などの材料価格の高騰が続いているが、2年間で3000億円のコストを削減して収益を下支えする。
いわゆる総合電機といわれている各社の収益を圧迫し続けてきたのが、電子デバイス部門だが、三菱電機ではこの部門の収益改善の見通しがたってきたことが注目される。大きな特徴の1つとして、自動車電装化に伴う動きがある。ハイブリッド車の普及拡大に伴って、こうした用途向けのIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)の本格立ち上がりが期待されている。
また、株価が一時6000円を上回り(7月20日の6130円)、上場来高値圏の頑強な推移をみせているのがキヤノンだ(関連記事)。同社の2005年12月期通期の連結業績は、第1四半期決算発表段階(4月末)で増額修正し、連結経常利益を従来予想の5800億円から5930億円(前期比7%増)へ、純利益も同3590億円から3670億円(同6%増)へとそれぞれ過去最高益更新水準へと上方修正した。しかし、7月27日には、2005年12月期の連結業績予想を見直し、営業利益を4月末公表の従来予想を60億円下回る5780億円(前期比6.3%増)に下方修正した。
一方、売上高は300億円多い3兆6800億円(同6.1%増)、経常利益を10億円増の5940億円(同7.6%増)に上方修正した。為替の円安傾向が業績にプラスに働くものの、予想を上回る価格下落の進行で営業利益の下方修正を強いられた。最終利益の予想は3670億円に据え置くとしている。小幅ながら営業利益が下方修正されたことで、株価は8月に入って調整が続いている。
注目したいのは、キヤノンが1998年以降、経営革新活動に取り組んできたこと。その中心が生産革新活動で原価率は1998年以降、6%もの改善を見せた。コストダウン額は2002年度が1155億円、2004年度が821億円、2005年度は700億円を見込む。生産革新活動といえば「生産部門」でのメリットが知られているが、同社はさらに進化させ、開発、物流までも「革新」を広げている。キーデバイス、キーパーツ、金型などの内製化で競争力の一段のアップを目指す。トヨタの「カイゼン」には及ばないものの、コストダウンの更なる追及が同社の高収益体質を支えていることは確かなようだ。
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