ここにきてキヤノンの株価面での強さが際立ってきた。先週の7月13日には、それまでの年初来高値だった6000円(6月23日)を更新し、その後も堅調な値運びが続いている。キヤノンの株価面での強さの背景を探った。
外国証券のアナリストは「4月の第1四半期(2005年1〜3月)決算発表時に、キヤノンは2005年12月期通期の連結業績を上方修正したが、来週後半にも予定されている6月中間決算(同1〜6月)の発表に伴って、通期の業績が再度上方修正される可能性が高い」と指摘している。
キヤノンの今12月期通期の連結業績は、第1四半期決算発表段階で増額修正され、連結経常利益を従来予想の5800億円から5930億円(前期比7%増)へ、純利益も同3590億円から3670億円(同6%増)とそれぞれ過去最高益更新水準へと上方修正されたが、第2四半期(4〜6月)も、デジタルカメラ部門で一眼レフタイプが順調な拡大をみせていることや、プリンタ部門でも高機能の複合機がビジネスユース向けに好調な推移をみせ、これに液晶露光装置の回復も寄与しそうだ。
さらに、為替レートが想定(1ドル=105円)に比べて実際の円相場が、かなりの円安で推移していることから、調査機関の多くが再増額修正を有力視しているわけだ。このため、最終的には経常利益、純利益とも前期実績に引き続き、前の期に比べて2ケタ増益となる可能性も十分ありそうだ。こうした、今12月期の連結業績の増額含みが背景となり、内外の機関投資家から株価の先高を見込んだ買いが流入しているようだ。
さらに、時価(6050円)で試算した連結予想PERは14.6倍と依然割安水準にあるのをはじめ、7月9日申し込み現在の東証の信用倍率も0.71倍と売り残が買い残を大きく上回り、信用取引の取り組み面からも買い方有利との見方が浮上している。
もう1つ、注目したいのは、キヤノンが6月23日に生産革新活動の説明会を開いたことだ。同社は1998年以降、経営革新活動に取り組んできた。その中心が生産革新活動で原価率は1998年以降、6%もの改善を見せた。コストダウン額は2002年度が1155億円、2004年度が821億円、2005年度は700億円を見込む。生産革新活動といえば「生産部門」でのメリットが知られているが、同社はさらに進化させ、開発、物流までも「革新」を広げている。キーデバイス、キーパーツ、金型などの内製化で競争力の一段のアップを目指す。トヨタの「カイゼン」には及ばないものの、コストダウンの更なる追及が同社の高収益体質を支えていることは確かなようだ。
さらに、一部市場関係者のあいだで指摘されるのは、東証株価指数(TOPIX)の浮動株化採用(※)に伴うキヤノンへの買い需要の発生だ。それでは、どうしてこのTOPIXの浮動株化がキヤノンの株価上昇につながるのか。わかりやすく言ってしまえば、時価総額の大きな銘柄(当然TOPIXへの組み入れ比率も大きい)のなかでキヤノンは浮動株の比率が他社と比較して多いため、浮動株が算出の対象となった場合、従来に比べて組み入れ比率が拡大するのではないかとの期待が発生しているためだ。このため、今後機関投資家などがリバランス(銘柄入れ替え)の買いを入れる可能性があるとの思惑が背景となり、これが株価上昇につながっている。
TOPIX浮動株化に伴って動く資金は、インデックスファンドやETF(株価指数連動型上場投信)、年金資金などを考慮して「8兆円強」「10兆円」、あるいは「14.2兆円」とも試算されているが、いずれにせよ「これだけ影響の大きい指数が浮動株基準に移行することは今までにないこと」(大手証券アナリスト)としている。TOPIXの浮動株化での影響を見てみると、一般的には企業グループの親会社などには有利とみられ、NTTやキヤノン、武田薬品、ソニー、野村証券、トヨタ自動車などにはプラス要因とみられている。一方で、マイナス影響を受ける銘柄群は、グループ子会社のNTTドコモやヤフー、セブンイレなどや、浮動株の算出方法次第で大手銀行もマイナス影響を受ける可能性がありそうだ。(超眼)
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