4月に日本法人となるSynology Japanを設立した、台湾に本社を置くSynology(シノロジー)が、10月17~18日にかけ、イベント「Synology 2019 Tokyo」を都内で開催した。国内では今回で4回目となる。
17日はメディア向けの内容で、台湾本社からCEOのDerren Lu氏が来日して同社のビジョンや事業展開について語った。18日はユーザーイベントとなっており、企業向けと個人向けの二部構成で展開。Synology JapanのJones Tsai代表などが登壇した。
ここでは、Lu氏やTsai氏が語った、同社の事業戦略と、新しいアプリケーション、年末年始にかけて発売を予定する新製品、インタビューなどを紹介する。
世界最大のNASベンダーとなったSynologyにとって、「2018年は大変喜ばしい一年だった」と振り返る。同社のNASは累計600万台の販売を記録。サーバビジネスにおいてこの数字はかなり大きな数字であり、同社の製品が市場で支持される品質と認知の高さを示している。さらに、第3四半期に至るまでに前年比20%以上の売上増を達成。日本市場においては同40%以上を記録した。
CEOのLu氏は「日本のユーザーから支持を得られたおかげであり、日本法人のチームが努力した成果だ。Synology Japanを起ち上げたことは最善の決断だった」と胸を張る。
Synologyでは市場のニーズを追いかけていくうえで、社内で大きな意識改革が必要だったという。この数年間、新しい製品のイノベーションが企業の価値に直結してきたが、今後はそれに安定性、セキュリティ、サービスを加え、より高い価値を提供しなければならないと考えるようになった。
Lu氏はその象徴的なプロダクトとして、同社NAS製品のOSである「DiskStation Manager(以下、DSM)」のアップデートを挙げる。最新のDSM 6.2では、より高い安定性を実現するため、2万5000ものテスト項目を設けて合格する作り込みが行われた。単にラボでのテストに限らず、本物のサーバ環境でも世界中のボランティアの協力により、7万1000台ものNASがテストに参加。エンタープライズグレードのOSとして厳格な完成度を実現したという。
セキュリティに関しては、社内に専用のセキュリティチームを設立し、2017年、台湾のNASベンダーとして初めてCNA(CVE Numbering Authority)の認定を受けた。2018年はセキュリティ対策チームの国際コミュニティ「FIRST」のメンバーに加入し、より迅速なセキュリティ対応が可能になったとする。
サービスについては、テクニカルサポートチームを増強。日本も含め、世界中で150人以上のテクニカルサポートのチームを組織し、日々改善を続けている。Synology Japanの設立も、サービス改善の一環に位置づけられる。
Synology Japanを率いるのは、代表取締役のJones Tsai氏。Tsai氏を起用するに当たっては事前に慎重な人選が行われたとのことで、初年度の成績はその甲斐のあるものになったと言えそうだ。
今後の展開にも触れた。同社事業の核である「ストレージ」に関しては、すでに好調と表現できる状況になっている。今後も事業を発展させていく上で重要になるのが、「ネットワーク」「クラウド」「バックアップ」だ。
その具体的な内容について、Synology Japanセールスマネージャーの田野久敏氏が解説した。
今回、Synologyの戦略的なポジションのプロダクトとして、特に力を入れて紹介していたのが、現在開発中の「DSM 7.0」だ。2019年以降の提供となる。
DSM 7.0ではOSを通じてユーザーエクスペリエンスをどう提供するかに主眼が置かれており、「NASはデータの保存をするためだけのもの」という概念を覆すべく、さまざまな工夫が盛り込まれる。NASをより使いやすく便利にするのはもちろんだが、セットアップやトラブルシューティングを容易にし、NASの導入における敷居の引き下げにつなげる。
たとえば、ログインページはサービスごとに異なるデザインで表示でき、ユーザーが操作に迷わないよう配慮している。このログインページには企業のロゴを表示するといったカスタマイズも可能だ。
対話ガイド付きのデザインにより、現在のマシンの状況が分かりやすくなっている。ログインのときなど、バックグラウンドで処理が行われているような場合、従来はローディングの文字が表示されるだけなので、処理が終わったのかどうか分かりづらい。DSM 7.0では円形の矢印が回転するなどのアニメーションにより、現在処理が続いていることがはっきり視認でき、操作ミスを軽減する。
また、DSM 7.0ではマルチガイダンスデザインを採用する。これはエラーが発生した時に、何が起きて、どう対処すれば良いのかエラーメッセージと同時にユーザーインターフェースに表示する機能だ。エラーコードが表示されても、ユーザーはすべてのコードを覚えているわけではない。表示されるたびに検索したり、取扱説明書を引っ張り出してきたりして時間を奪われる。マルチガイダンスで対処方法が表示されれば、ユーザーはエラーのたびに自分で対策を検索しなくて済む。
DSM 7.0に含まれる機能の1つ「DS finder」を利用すると、LANケーブルを挿すだけでDSMのインストールなど、NASのセットアップがスマートフォンからも行えるようになる。生成したQRコードが表示され、それをスマートフォンでスキャンすることでログインも簡単に行える。ゲストにログインIDを発行する場合など、管理者とゲストの双方の手間を省ける仕組みだ。
ハードディスクに不具合の生じる時期を高精度で予測検知する機能も備え、不具合の出る可能性の高いハードディスクをスムーズに交換するための機能なども用意している。
さらに「Synology Drive」も提供する。これはWindows 10の標準機能である「Windows Cloud Filter」を利用するファイルストリーミング機能で、通常はネットワーク上のファイルのプロファイルだけを取得し、必要に応じて実体をダウンロードする。容量がシビアなSSD搭載PCなどで、ローカルのディスク容量を抑えられるわけだ。
ビジネス向けのバックアップ機能として、「Active Backup Suite」も提供する。これはデータがローカルにあろうがクラウド上にあろうが、すべて一元的にバックアップする機能で、Offie 365やG Suiteといったクラウドツールを利用するユーザーは重宝するはずだ。情シス担当によるバックアップの一括管理・リストアはもちろん、必要に応じてユーザー自身がバックアップデータにアクセスしてリストアでき、情シス担当の負担を軽減できる。
ここで紹介したSynologyのアプリケーションの最大の特徴は、すべてがSynologyのNASユーザーに対して無償で提供されることだ。「当社のNASを一台導入することで、トータルコストがどれほど削減できるか想像してほしい。働き方改革のとっておきのソリューションになるはずだ」と田野氏は言う。
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