最終更新時刻:2010年12月18日(土) 8時00分

ディー・エヌ・エーはなぜ勝ち続けるのか――知られざる“テクノロジー”企業の姿(後編)

ディー・エヌ・エーはなぜ勝ち続けるのか――知られざる“テクノロジー”企業の姿(後編)

CNET Japan Ad Special、文・青山祐輔 写真・津島隆雄

いずれ社員・経営陣の大半はエンジニアにしたい

 ところで、ディー・エヌ・エーには各事業を推し進めて行くのに、社内で共通して掲げるビジョンのようなものはあるのだろうか。かつては事業の中核がショッピングやオークションであったが、その後、モバイル事業が中心となって、モバゲータウンでは“ポータル”と名乗り、現在でもその呼称は変わらない。では、ディー・エヌ・エーの目指すべきビジョンというのはモバイルサービス上のポータルということになるのだろうか?

 「どうなんでしょうね(笑)。事業のビジョンみたいなのを作ると、それに縛られると思うんですよね。たとえばオークションサービスのビジョンとソーシャルネットワークサービスではビジョンが違う。そこ(オークションサービスという事業ビジョン)からはモバゲータウンは生まれなかったと思うんです。」(守安氏)

 成長するドライバーを見つけるために次のビジネスのアイデアを吸収して立ち上げていく。その姿勢は「アイデアの出所はどこでも、誰でもいい」という南場氏の発言と共通する。

 「全員が何を発案してもいいという状態にしていますし、そういう発案をできるメンバーしか集まっていないんです。問題はそれを聞く体制が弱かったりすることです。」(守安氏)

 こういった状況を改善するためのひとつの施策が「DIG」だという。これは「DeNA Innovation Group」の略で、年に1〜2回全社的に新規事業のアイデアを公募するために実施しているイベントのことだ。DIGには社員なら誰でも参加でき、提案されたアイデアは一定のスクリーニングに掛けられ、予選を通過したスタッフには役員などのチューターがついて、よりアイデアを深めていく。そこではエンジニアであっても予算管理や人員管理、システム以外のコストの見方などを学ぶ。

南場智子氏 「今後はソーシャルエンターテインメントにおいて、グローバルリーダーシップを取りたい。(かつて日本から海外に進出していった企業のように)50年ぶりに世界でリードできるような会社になってみせると思っています」と海外進出に意気込む代表取締役社長の南場智子氏。同社はすでに北米と中国でビジネスを展開中だ。

 毎回20本ほどの応募があるうち、決勝に残るのが5〜6本。その中から優勝と準優勝を決める。優勝したアイデアは会社として真剣に事業化を検討するので、優勝がない場合もある。だが、せっかくの制度なのだが、実際にはまだ直接事業化したものその中にはない。

 「でも、そこから何らかの形でアイデアのDNAが受け継がれる。アイデアが20も出てくると言うこと自体がすばらしいし、ほとんどのアイデアにエンジニアが関わっています。」(南場氏)

 まずはアイデアを出すことが先決で、アイデア自体よりもそれを考える社員の姿勢を評価するということだろう。現在はまだ社内で3割程度しかいないエンジニアが事業のアイデアを出してくるということも、南場氏が強調したかったことのようだ。

 興味深かったのが、南場氏も守安氏も異口同音にエンジニアが社員の大半を、あるいは経営陣の大半を占める企業を目指していると言っていたことだ。そこには、サービスを考えて実際に手を動かしてものを作れる人材を求めているという意味がある。インターネットのサービスはコンピュータの技術をサービスとして提供しているに過ぎない。そのために、エンジニアとして開発できること、最低限でも技術で解決できることを発案することを、社員や経営陣に求めているわけだ。繰り返しになってしまうが、これはディー・エヌ・エーがいままで事業を立ち上げて成長の軌道に載せるまで経験したことから学んだことなのだと痛感する。

 「ディー・エヌ・エーはいろいろ事業をやっているから結果として規模は大きく見えるけど、やっぱりベンチャーなんです。蓄積してきた資産や既得権益があるわけじゃないから、頼りになるのは知恵と実行力です。」(南場氏)

 結局、ありきたりではあるかもしれないが、このベンチャー精神のようなものがディー・エヌ・エーという会社全体をひっぱっていくムードを表しているようにも思える。そして「実行力をともなって知恵を出せること=サービスマインドを持ったエンジニア」という図式こそが、勝ち続けている同社の本当の原動力となっているのだろう。

※所属部署名、役職は取材時のものを使用しています。

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