ディー・エヌ・エーはなぜ勝ち続けるのか――知られざる“テクノロジー”企業の姿(後編)
ディー・エヌ・エーはなぜ勝ち続けるのか――知られざる“テクノロジー”企業の姿(後編)
CNET Japan Ad Special、文・青山祐輔 写真・津島隆雄
始めてのゲームでヒットを飛ばした異色のエンジニアの活躍
武部氏の下でゲーム開発グループのリーダーを務めるのが大塚剛司氏だ。モバゲータウンの重点プロジェクトであり、業績を大きく伸長させたソーシャルゲームを担当し、開発者として「怪盗ロワイヤル」を大ヒットさせた同氏の経歴は異色だ。
大塚氏が新卒でディー・エヌ・エーに入社したとき、そもそもエンジニアではなかった。広告企画職として1年ほど過ごしてから改めてエンジニアへの転向を申し出たのだ。
「はじめの頃はエンジニアにあまり良いイメージを持っていなかったんです。でも1年間、エンジニア出身の上司を見ていて、自分ももっと違う視点でビジネスを見ることができるんじゃないかという思いが強くなったんです。」(大塚氏)
大塚氏は後輩となる新入社員とともにエンジニアの研修を受け、静かに勉強を続けた。そしてモバオクでエンジニアとして経験を積み、1年半後にはモバコレでメインのエンジニアを務めるまでになった。そしてついには新規事業の立ち上げに主要スタッフとして参加することになった。地域情報系サービスとしてアイデア出しから関わり、大塚氏としてはかなりの確信をもって挑んでいた。だが、結果としてユーザーが付かず、幾度かのてこ入れも振るわず、最終的には経営陣によってサービス終了という判断が下された。
最後には「ひとりでもいいから続けさせて欲しい」とまで直訴した。その申し出は受け入れられることはなかったが、この失敗そのものは大塚氏の評価を上げることになった。その後、大塚はモバゲータウンの命運をかけたソーシャルゲームの開発にアサインされた。そして、初めて開発したゲームで「怪盗ロワイヤル」という大ヒットを生み出すこととなる。
コンシューマ向けのサービスは、企画段階で成功の可否が判断しにくい。したがって単に結果だけでなく、そのプロセスも見て評価される。そのプロセスも、ただやみくもに努力するのではなく、きちんとリサーチをしてロジックを組み立てた上で、いかにして準備をきちんとして挑んでいるかが重視される。大塚氏の用意周到さは南場氏も高く評価する。
「私も怪盗ロワイヤルにハマっているので、大塚に『こういうところがよくない』といちいち伝えます。でも、8割くらいは無視されるんです。しかも、ぐうの音も出ないような反論をしてくるんです。『こういう理由で全体としてゲームバランスは保たれてるので大丈夫です』って。個人の感覚とマクロで見ているゲームバランスを、エンジニアとしてユーザー全体の利用を見てリアルタイムで評価しているので、私が言ったできそうなことはすべて準備ができているというわけです。」
現在の大塚氏は、モバゲータウンのゲームシステム開発グループのリーダーを務め、マネージメント業務が多くなっているというが、自ら技術を学んでコードを書くことから再スタートをきってマネージメントまで進んだというのは、ディー・エヌ・エーで仕事を従事するのにエンジニアリングが必要とされているスキルということだったのだろう。
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