Googleが一部の検索結果で最上部に表示するAI生成要約「AI Overview」(AIによる概要、以下AIO)は、外部サイトへのクリックにつながる可能性が低いという。米調査機関Pew Research Centerが米国時間7月22日に公表したレポートで明らかにした。
この調査は、閲覧データの提供に同意した米国の成人900人の情報に基づく。分析によれば、検索結果にAIOが表示された場合、AI要約が生成されなかった検索と比べ、ユーザーがリンクをクリックする可能性が低かった。
Pewは3月、追跡対象デバイスで利用者が訪れたURL、検索エンジンで送信した検索ワード、およびその後の行動を監視した。さらに、サードパーティーのウェブスクレイピングサービスを用いて同じ検索を実行し、リンクやAI生成要約を含むGoogle検索ページ上の全テキストを収集した。6万8879件のユニークな検索のうち1万2593件(約18%)でAIOが生成された。その後Pewは、利用者がクエリを送信した後に最終的にどのURLを訪れたかを確認し、Googleを離れて別サイトを閲覧したのか、それとも閲覧セッションを完全に終了したのかを分析した。
Pewの解析によると、AIOが表示された検索では、ユーザーがGoogle検索結果の従来型リンク(AIO内のリンクを除く)をクリックした割合は8%にとどまった。一方、AIOが表示されない検索ではクリック率が15%に跳ね上がった。AIOが表示された検索のうち、AIO内のリンクがクリックされたのはわずか1%だった。
「われわれの研究目的は、人々がAI生成の検索要約にどのように遭遇し、どのようにやり取りしているかを理解することだった」と、本調査に携わったPew Researchの計算社会科学アナリスト、Athena Chapekis氏は米CNETに語った。「今回の分析は、実際のGoogleユーザーの日常のブラウジングで何をしているかを示すスナップショットだ」
AIOが表示された場合、ユーザーの約3分の2は別サイトへ移動するかGoogle検索ページを閉じており、AI生成結果が検索ニーズを満たしていることが示唆された。また、AIOが引用する情報源ではWikipedia、Reddit、YouTubeが特に多く、Pewが確認したAI要約内リンクの計15%を占めた。政府系サイトも6%と上位を占めており、Wikipediaや政府系サイトが非営利でパブリッシャーとしての制約が少なく、信頼できると見なされていることが理由と考えられる。GoogleはYouTubeを傘下に持ち、自社の主要サービスへのトラフィックも生んでいる。また同社は2月、AI学習用データとしてRedditと数百万ドル規模の契約を結んだと報じられた。近年、RedditはGoogle検索内での存在感も高まっている。
AIによって、人々の検索習慣も変化している。キーワードの羅列ではなく、意図のある完成された文で検索するユーザーが増えており、クエリが長いほどAIOが表示されやすい傾向がある。
「人々はAI搭載の体験に魅力を感じており、Google検索のAI機能によってより多くの質問が可能となり、ウェブサイトとの新たな接点が生まれている」とGoogleの広報担当者は声明で述べた。「この調査は欠陥ある方法論と、Google検索のトラフィックを適切に反映していない歪曲されたクエリセットを用いている。当社は毎日数十億回のクリックをウェブサイトに送っており、指摘されるような総合的なトラフィック減少は確認していない」
パブリッシャー業界はインターネット全体のトラフィック減少という逆風に直面している。2025年はすでにCNN、Vox Media、HuffPost、LA Times、NBCで解雇が相次いでおり、Nieman Reportsによれば過去3年間で解雇されたジャーナリストは約1万人に上る。オンラインのパブリッシャーはGoogle検索への依存度が高く、Googleは世界のオンライン検索市場の約90%を占めている(GlobalStats調べ)。2024年、米判事はGoogleがオンライン検索で違法な独占を行っていると判断し、2025年4月には連邦裁判所が同社のオンライン広告事業も違法な独占状態にあるとした。
Google検索の上部に表示されるAI生成要約は、オンラインパブリッシャーのトラフィック低迷の一因と指摘されているものの、「Google Search Console」ではAIO経由の流入データが明示されないため、これを明確に証明するのは難しい。Googleは検索トラフィックが減少しているにもかかわらず、AIOは「質の高いクリック」、つまり検索意図が明確でサイト滞在時間が長いユーザーをもたらすと主張してきたが、その根拠となるデータは提示していない。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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