FCNT合同会社は6月17日、都内で新製品発表会を開催し、arrows最上位モデル「arrows Alpha」と、6年ぶりとなるらくらくホンの新機種「F-41F」を発表した。桑山泰明社長は「8年前は10万円強でハイエンドモデルが買えたが、今は約1.7倍になっている。AI時代に広がる未来の体験を、必要十分以上の性能で10万円以下でお届けする」と、新製品の狙いを語った。
arrows Alphaは、同社が「手が届くハイエンド」と位置付ける新フラッグシップモデル。SIMフリー版の市場想定価格は税込8万円台で、2025年8月下旬以降にNTTドコモ(F-51F)およびSIMフリーで発売する。
価格設定について外谷一磨統合マーケティング戦略本部長は「マーケティング調査では10万円ではなく9万円の壁がある」と説明。Google Pixelをベンチマークとしたという。
搭載するSoCはMediaTek Dimensity 8350 EXTREME。同社では「arrows史上最高性能」としているが、QualcommのSnapdragon 8シリーズやMediaTekのDimensity 9000番台と比較すると、明らかにミッドレンジ上位のチップだ。外谷氏は「F1サーキットを超高速で走るより、高速道路を140~150kmで走り続けられる性能を重視した」と、あえてミッドレンジチップを選択した理由を説明。Snapdragon 8s Gen 3も検討したが、AI性能とチューニングの柔軟性、グループシナジーを考慮してMediaTekを選択したという。
実際のスペックは、メモリ12GB(DDR5X)、ストレージ512GB(UFS 4.0)、6.4インチ有機ELディスプレイ(最大144Hz、ピーク輝度3000ニト)、大型ベイパーチェンバーなど、20万円超のウルトラハイエンド機に匹敵する仕様。ただし肝心のSoCがミッドレンジ上位という点で、「ハイエンド」を名乗るには複雑な立ち位置となっている。
本体は幅72mmと握りやすいサイズを追求。カラーはホワイトとブラックの2色展開で、日本市場の7~8割が白黒を選ぶというデータに基づいた選択だ。囲み取材では追加カラーを投入する可能性も示唆された。
防水防塵はIP69に対応し、arrows史上最高レベルを実現した。IP69は80℃の高温水を100バールの高圧で複数角度から噴射する厳しい試験をクリアする規格で、一般的なIP68よりも過酷な環境に対応できる。MIL規格23項目準拠、1.5m落下試験もクリアしている。さらに日本初のスマートフォンとしてエコマーク認定を取得し、部品総重量の約60%がリサイクル素材となっている。
OSはAndroid 15を搭載し、OSバージョンアップ3回、セキュリティ更新5年間を保証。Wi-Fi 6E対応、DisplayPort 1.4対応なども備える。
独自AI「arrows AI」は、自然言語での機能検索が特徴。「海外で通信したい」と話しかければデータローミング設定を、「指が届かない」と伝えれば片手モードを提案する。
2025年秋には通知を要約する機能を提供予定。LINEやSMS、InstagramやXのDMなどに対応し、アプリをまたいだ要約も可能だ。これらの機能は同じレノボ傘下のモトローラ「Moto AI」にも同様の機能が実装されており、対応アプリもほぼ共通。外谷氏は囲み取材で「機能のベースはレノボグループとして開発しているAIのエンジンベース」と、グループ内での役割分担を示唆した。
本体側面のアクションキーは、単押し、ダブルクリック、長押しで最大3つの機能を割り当て可能。標準ではGoogle Geminiが設定されているが、arrows AIなど各種機能に変更できる。Google Geminiや「かこって検索」などGoogle製のAI機能も標準搭載されており、ユーザーは複数のAIエンジンを使い分けることができる。
arrows初となる超急速充電に対応した。同梱の90W充電器により、10分で40%、35分で100%の充電が可能になった。
電池持ちについては、5000mAhバッテリーを搭載。動画視聴200分、音楽ストリーミング150分、SNS閲覧160分、ゲーム90分という1日10時間のヘビーユースでも2日間持続する。発表会では競合他社との比較データも示された。独自チューニングによる内部処理の最適化により、優れた省電力性能を実現しているという。
長寿命化も特徴だ。独自の充電制御技術により、5年後でも初期容量の80%を維持する。さらに充電しながらの使用でも電池に負荷をかけない「ダイレクト給電」機能も搭載した。
背面カメラは広角と超広角のデュアル構成となっている。広角カメラにはソニー製LYTIA LYT-700C(約5030万画素、1/1.56インチ、F値1.88、光学式手ぶれ補正)を採用した。超広角カメラは約4990万画素(F値2.05)、インカメラは約4990万画素(F値2.0)を搭載している。
外谷氏は「(ソニーという)日本のお客様に対して抜群の知名度と、センサー性能として優れているものを採用した」と説明。カメラ性能で「競合他社にようやく並べた」という率直な認識も語った。
AI機能では、集合写真での「グループショット」機能(連続撮影から最高の表情を合成)、動体ブレ軽減機能、最大10倍のAIデジタルズームなどを搭載する。
同時発表のらくらくホン F-41Fは、2026年3月の3G停波を控え、数十万人規模と推定されるFOMAらくらくホンユーザーの受け皿として開発された。
Snapdragon 210搭載の4Gケータイで、メモリ1GB/ストレージ8GB、3.0インチメインディスプレイと1.5インチサブディスプレイを搭載。桑山社長は「(レノボグループとして)企画を通すのにめちゃくちゃ苦労した」と開発の困難さを吐露。ガラケータイプは部品点数が多く、グローバルサプライチェーンが使えないため、「(フラグシップの)arrows Alphaと同じくらいの開発体力が必要」だったという。
2025年8月上旬以降にNTTドコモから発売予定で、今後は数年単位のロングランでの提供を目指す。
FCNTは今後の商品サイクルについて、arrows We2のようなローエンドやarrows We2 Plusのようなミッドレンジは2年スパンで展開する方針だ。一方、ハイエンドは「気持ちとしては毎年出していきたい」(外谷氏)とするものの、市場反応を見ながら判断するという。ウルトラハイエンドや折りたたみスマホも「検討はいっぱいしている」(桑山社長)。
らくらくスマートフォンの海外展開については、「レノボ幹部が日本に来るといまだに言われる」(桑山社長)というほどレノボ本社からの関心が高いという。ただし「サイズ感や持ちやすい形が外国のシニアにフィットするかすらわかっていない」ため、調査から始める必要があると、海外展開のハードルの高さを説明した。
レノボ傘下でグローバルリソースを活用しながら、日本市場に最適化した製品を提供するFCNT。ミッドレンジチップで「ハイエンド体験」を実現するという同社の提案は、高騰するスマートフォン価格に対する一つの回答となるか。
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