NASAが資金提供した新しい研究によると、「スターリンク」のような通信衛星が寿命を迎えて大気圏に再突入する際に、地球のオゾン層を減少させる可能性がある。同研究はGeophysical Research Lettersに掲載された。
スターリンクなどの人工衛星は寿命を迎えると大気圏に突入して燃え尽きるが、その際にアルミニウム酸化物の小さな粒子を残す。これが紫外線を吸収するオゾン層まで落ちていく。南カリフォルニア大学の研究チームは、2016年から2022年にかけてこうした酸化物が8倍に増えたことを突き止めた。
この増加分がすべてスターリンク由来というわけではない。スターリンクが最初の衛星を打ち上げたのは2019年5月だからだ。しかし、今低軌道上に圧倒的に多く存在しているのはスターリンク衛星だ。
低軌道上にはおよそ8100の人工物体があるが、そのうち6000以上をスターリンクが占めている。さらに1万2000基の追加打ち上げを予定しており、将来的には最大4万2000基まで打ち上げる可能性があるとSpace.comは伝えている。
これらの衛星はだいたい5年くらいで寿命を迎える。たとえば重量約250kgの衛星の場合、大気圏再突入時に約30kgの酸化アルミニウム微粒子を放出する。スターリンクの衛星はだんだん重くなっており、最新型は約1250kgにも達する。
アルミニウムは主に約50~80キロ上空で放出されるが、それがオゾン層あたりまで降りてくるには30年かかる。2022年時点でも、燃え尽きた衛星が原因で大気中のアルミニウム量が自然値より29.5%増加しているとのデータがある。だが、研究者たちは、このままではさらに悪化すると警告してる。
「特に今後大量に衛星が打ち上げられる予定であることが心配だ」と、研究著者の1人であるジョセフ・ワン氏はCNETにコメントしていた。「年間で自然値を640%以上も上回る過剰な量になると予想している。そうなると相当まずい」
他のオゾン層破壊物質と異なり、アルミニウム酸化物は反応中に消費されず、大気中に長い間残り続ける。そこでオゾン層を継続的に傷つけ、最終的には高度がさらに下がっていくまで30年もかかる可能性がある。
もしスターリンクが計画どおりに規模を拡大したら、毎年8000基以上の衛星が大気圏に突入して燃え尽きることになる。研究者たちがこの衛星数の増加を見込んだ予測モデルを当てはめると、放出されるアルミニウム量は360トン、つまり自然値の640%増にもなり得るらしい。
この新しい研究で特に注目すべきなのは、まだ未解明の部分が多い点だ。「衛星の再突入が環境に与える影響は、現状ほとんどわかっていない」と研究では述べられている。
スターリンクは打ち上げ開始から4年で、人類の歴史でこれまで打ち上げられた衛星の40%を占めるに至っていて、今後はさらに7倍も増やす計画だ。ライバルのAmazonによる「プロジェクト・カイパー」も、今後3232基の衛星打ち上げを予定している。
Natureに掲載されたある記事では、「10万基の衛星が上空にある状態は、『現実的に可能』という話ではなく『かなりの確率でそうなる』」と指摘していた。その理由のほとんどは、SpaceXやアマゾン、OneWebといった民間企業が、高速インターネットを提供するために続々と衛星を打ち上げているからだ。
環境保護庁(EPA)によると、過剰な紫外線は皮膚がんや白内障、免疫力低下を引き起こす可能性があるし、農作物の収量低下や海洋食物連鎖の混乱にもつながるらしい。
研究者は「再突入数がさらに上がるなら、この研究で明らかになった問題点をもっと深く探るのが欠かせない」と呼びかける。
スターリンクはCNETのコメント要請に応じなかった。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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