「600W」と大きく印字するのは簡単だが、実際にその性能を出せるかは別の話だ。
自分は毎年、多くの充電器をテストしている。優秀なものもあれば、がっかりするものもある。ZDNETでは基本的に“当たり”だけを紹介しているが、ときどき読者から「この製品どう思う?」と聞かれることがある。
そんな中、最近注目されているのが「600W GaN充電器」だ。そこで2台買ってみた。1台あたり99ドルとそこそこするが、Ugreen Nexode 300W(140ドル)に比べれば安いと思ったからだ。Nexodeは5ポート300W、一方の本製品は8ポート600W。スペックだけ見ればお得に感じる。
ただ、私にとって最初の危険信号は、「なぜ無名の企業が同製品を商品化できたのか」という点だ。Anker、Ugreen、Belkin、Baseusといった大手メーカーは600Wという高出力の製品を投入していないからだ。また、実績や信頼性に乏しいメーカーの製品にはそもそも懸念がある。
そして、いざ使ってみたところ嫌な予感は的中した。USB-Cポートの1つは140Wを出せたが、もう1つの「140W」ポートは65Wで止まってしまった。100Wポートも1つは完全に機能しなかった。さらに、機器を抜き差しするたびに充電器がフリーズし、コンセントを抜いて「再起動」させないと動かないことも多かった。
これはどう見ても使いものにならない...。いろいろ試しても公称の600Wには遠く及ばないし、挙動も不安定だ。そこで、本体を分解して内部を調べてみることにした。
分解してまず目に入ったのが、謎の塊だった。一見すると熱伝導用のグリスのようにも見えたが、実際の匂いや手触りは窓のコーキング材に近く、オイリーな残留物が付く感じだった。それなりに重みもあり、重り代わりに入れてあるのかと思うほどだった。これを取り除くと、本体は信じられないほど軽く感じた。
これが「600W充電器」とは思えない作りだ。
基板を見ると、設計もいい加減だ。専門的な話は省略するが、電圧部と低電圧部の絶縁が甘く、故障したときに入力の交流電圧がそのまま出力側に流れる危険性がある。加えて、使われているトランスやレギュレーターも600Wを供給できるような仕様には見えない。
外装のカバーも簡単に外れるので、机から落ちて衝撃を受けるとカバーが外れ、高電圧部分がむき出しになる恐れがある。下手をすると触って感電しかねない。
総合的に見て、この充電器は使いものにならない。性能的でも安全性という観点でも大問題だ。
自分が外部バッテリーや充電器、ポータブル電源をテストしているのは、まさにこういう理由からだ。製品やパッケージ、あるいは本体に印刷されているスペックは簡単に誇張できるが、実際にそれを実現するのはまったく別の次元の話だ。
もし高出力の充電器を探しているなら、UgreenのNexode 300WやAnker Prime 250Wのように、実績があるメーカーの製品を選ぶのがいい。これらは信頼のおける企業が作る、確かな品質の充電器だ。
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この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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