ついにiPhoneとAndroid間を無料で電話番号だけで動画や写真を送れるようになる。
といっても「すでにLINEがあるじゃん」とお思いの人も多いだろう。確かにLINEアプリを使えば、相手がiPhoneだろうがAndroidだろうが、無料で動画や写真を送り合える。ただ、相手のLINE IDをあらかじめ知っておく必要がある。
また、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが提供する「+メッセージ」や、楽天モバイルの「Rakuten Link」といったメッセージアプリもある。とはいえ、これらもあらかじめ相手がアプリをインストールしていないと利用できないという制約がある。
今回新しく始まる、iPhoneとAndroid間を無料、かつ電話番号だけで動画や写真を送受信できるサービスは「RCS」というものだ。
RCSはもともと世界のキャリアが導入を進めていたが、グーグルが普及に積極的に関与するようになった。さらにグーグルや欧州からの圧力によって、アップルがようやくRCSに対応したのだった。
これまでiPhoneには「iMessage」アプリがあり、iPhone同士であれば写真や動画を無料で送り合えていた。しかし、iPhoneからAndroidに送る場合は「テキストのみ」というさみしい状況であった。
今回、iPhoneがRCSに対応したことで、AndroidとiPhone間であっても高精細な写真や動画を送り合えるようになる。iPhone側は新たにアプリを入れる必要は無い。
ただ、RCSの利用には国内キャリアの対応が必要だ。
そんな中、RCSに積極的な姿勢を見せているのがKDDIだ。
KDDIは2024年5月、RCSをベースとした「Google メッセージ」アプリをAndroidスマートフォンに標準搭載していくと発表。
さらに、3月からはiPhoneユーザーに対してRCSのオプション提供を試験的に始めている。実際、日本国内でiPhoneにおけるRCSは正式サービスにはなっていないが、開発者向けに提供されている次期バージョン「iOS 18.4」で、auやUQモバイルのiPhoneユーザーはRCSを使えるようになっている。
iOS 18.4の正式リリース以降、Androidユーザーは「Google メッセージ」アプリから、iPhoneユーザーは「iMessage」アプリから、電話番号で高精細な画像や動画を無料で送り合えるようになる。
では、なぜKDDIはこれまで他のキャリアと共に「+メッセージ」を訴求していたにも関わらず、RCSに乗り換えるようなことをするのか。
そもそも、+メッセージは「LINE対抗」という意味合いが強かったサービスといえた。かつて、ケータイが全盛だった頃は「iモードメール」や「EZwebメール」といったようにキャリアが提供するメールサービスが圧倒的なシェアを誇っていた。
しかし、スマートフォンの時代になると、ユーザー間のメッセージのやりとりはLINEが掌握してしまった。ユーザーとの接点を逃したキャリアとしては面白くないわけで、3社が手を取り合って+メッセージを始めたというわけだ。
しかし、2011年にLINEがサービスを開始したのに対して、+メッセージは2018年と7年も遅れでの開始だった。2024年4月現在で4000万人のユーザーがいるとされる+メッセージだが、時すでに遅く、必ずしもアクティブに利用されているとは思えないのが現状だ。
では、KDDIは+メッセージは失敗だと捉え、早々に「見切り」をつけてしまったのか。
KDDIで代表取締役社長を務める高橋誠氏はRCSに注力する理由として「+メッセージでもいいが、インフラが高い。RCSなら安くなる。それが一番の目的。iPhoneがRCSに対応したのも大きい」と語る。
キャリアとしては、+メッセージを送受信するためのインフラを整備する必要がある。しかも国内キャリア専用の設備になるため、設備投資はどうしても高くなる。
また、+メッセージは企業がユーザーに対して、ダイレクトにメッセージを送れるマーケティングツールとしても利用できるが、費用がかかる割にユーザーが少なく効果が薄いという弱点もある。
RCSになれば、iPhoneユーザーにもリーチでき、費用対効果が高まると期待される。単にユーザー間のメッセージツールだけでなく、企業向けのマーケティングツールとして販売するにはRCSのほうが期待できるというわけだ。
KDDIではこのRCSに、グーグルのAIサービス「Gemini」、さらには衛星通信の「スターリンク」を組み合わせてサービスを提供しようとしている。
「今後、衛星とスマホの直接通信できるようになる。衛星経由での高速データ通信は今のところできないが『Gemini経由での処理』は可能になりそう。例えば電波が届かない山の中などで『この近くに泊まりたい。どうしたらいい?』とGeminiに問い合わせると答えが衛星経由で返ってくる。そこにちょっとした写真が添えられていたりする」(高橋社長)
KDDIではRCSをベースに様々なサービスを載せていく考えのようだ。
もともと、高橋社長は1999年にEZwebを作った張本人だ。RCSに様々な企業がサービスを提供し、ユーザーは企業とメッセージを通じてサービスを享受できるようになりそうだ。
「このあたりは、モバイルインターネットに取り組んできたときの血が騒ぐ。APIを公開して、いろんなプレイヤーを連れてきて、利用できるサービスを広げていく。そのほうが断然面白い」(高橋社長)。
ちなみに、他社がRCSに対応するかといえば、ソフトバンクはやはり傘下にLINEヤフーを持っているだけに、そのあたりのサービスはLINEが引き続き担っていくのだろう。楽天モバイルはRakuten Linkを持ち、+メッセージにも近寄らなかったことを考えると、あくまで独自の路線を貫きそうだ。
そんななか、NTTドコモがRCSに対して、どんな判断をするかが注目と言えそうだ。
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