AIは誰の利益を優先しているのか--ウェブの父が投げかける根本的な問い

Jon Reed (CNET News) 翻訳校正: 編集部2025年03月13日 14時13分

 生成AIツールやエージェント、自律型ロボットに関する議論が盛り上がるSouth by Southwest(SXSW)で、ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)の考案者であるTim Berners-Lee氏は、あらゆる場面でAIを活用するというビジョンが実現するなら開発者が取り組むべきシンプルな問いを提示した。

Tim Berners-Lee氏 Tim Berners-Lee氏
提供:Photo by Suzanne Cordeiro/AFP via Getty Images

※クリックすると拡大画像が見られます

 「問題は、それが誰のために働くかだ」と、Berners-Lee氏は米国時間3月11日、テキサス州オースティンで開催中のSXSWにおけるロボット工学に関するパネルディスカッションで語った。

 チャットボットなどのAIシステムへの信頼は、今回のSXSWにおける議論の中心的テーマになっている。これには、合成データの利用やAI業界の規制方法についての議論も含まれる。

 Berners-Lee氏の問いは問題の核心を突いている。企業は自社のAIモデルを、信頼性が高く正確でバイアスのないものにできるかもしれない。しかし、それらが大企業によって開発された以上、開発元の利益を優先しているのか、それともユーザーの利益を優先しているのかという疑問は常につきまとう。

 Berners-Lee氏は医師や弁護士を引き合いに出した。医師は大学や医療システム、あるいは開業医として勤務しているかもしれないが、患者の利益のために尽くす義務がある。弁護士もクライアントの最善の利益のために行動する義務がある。しかし、旅行の計画や商品の注文を手伝うAIアシスタントはどうだろうか。それはメーカーの収益を伸ばすように誘導するよう訓練されているかもしれない。

 「私はAIに、私のために働き、私がしたい選択を実現できるようにしてほしい」と同氏は言う。「何かを売ろうとしてくるAIは望んでいない」

 AIアシスタントに対し、最も得な商品を探すよう頼んだとき、本当に自分にとって最善の商品を探してくれるのか、それともAIにとって最善の商品なのか。ロボット工学の専門家が集まるパネルディスカッションで、Berners-Lee氏は利益相反の可能性を考えるよう呼びかけた。

 「常にAIに『誰のために働いているのか』と尋ねるべきだ」と同氏。「あなたの関心や意思決定において、いったい誰の利益を追求しているのかと」

初期のウェブに学ぶ

 Berners-Lee氏は、現在のAIを取り巻く環境を90年代初頭のワールド・ワイド・ウェブの黎明期になぞらえている。当時、MicrosoftやNetscapeなどの企業が研究者や活動家たちと手を組み、オープンなインターネットの基盤を構築するためにワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C)を発足させた。

 「こうした企業は共にウェブを構築していて、われわれはそれを一緒に作り上げた」と同氏は語った。

 しかしBerners-Lee氏によると、こうした協力体制は現在の生成AIの世界では起きていないという。各社が競い合い、「超知能」を目指して先を争っているが、W3Cのように標準を策定する機関は存在しない。Berners-Lee氏は、AI開発者たちに同様の組織、または欧州原子核研究機構(CERN)のような組織を作ることを提案している。

 「核物理学の分野ではそのような体制があるが、AIには存在しない」(同氏)

この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

Amazonで現在開催中のセールを見る

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画広告

企画広告一覧

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]