サムスンの新製品発表イベント「Galaxy Unpacked」は、新作フラッグシップスマートフォン「Galaxy S25」シリーズから3つのモデルを披露したのち、4つ目の新モデル「Galaxy S25 Edge」のサプライズ予告とともに幕を閉じた。他の3つよりも薄いということ以外、謎に包まれているこの新端末は、いったどのようなユーザーを対象としているのだろうか。
Galaxy S25シリーズの柱となる3モデルは、どれもターゲット層をイメージできる。標準モデルの「Galaxy S25」(800ドル、日本では12万9000円)はエントリーユーザー、「Galaxy S25+」(1000ドル、日本では取り扱いなし)は標準モデルよりも大きい画面と高い性能が欲しい人、「Galaxy S25 Ultra」(1300ドル、19万9800円)はとにかく最高スペックを求める人だ。Galaxy S25 Edgeの価格が分かれば、このラインアップの中での位置づけも明確になるだろう。
「正確な価格はまだわからないが、薄型ボディに最新の機能を詰め込んだプレミアムデバイスになるのではないか。もしそうなら、価格はGalaxy S25シリーズの中で最も高くなるだろう」と語るのは、International Data Corporation(IDC)のリサーチディレクター、Nabila Popal氏だ。
デザインだけを見れば、Galaxy S25 Edgeのターゲットは最先端のスマートフォンが欲しい人々のように思われる。Popal氏は、2024年に発売されたブック型折りたたみスマートフォン「HONOR Magic V3」を引き合いに出す。開けば巨大なディスプレイが現れるにもかかわらず、従来のスマートフォンとほとんど変わらない厚みを実現した超薄型のデザインは消費者とメディアを驚かせた。競争の激しいスマートフォン市場では、薄さは差別化要因になるとPopal氏は言う。つまり、「薄さがトレンド」なのだ。
薄いスマートフォンを開発しているのはサムスンだけではない。報道によれば、Appleも薄型iPhoneを開発しており、2025年のどこかで発売するという。名称は「iPhone 17 Slim」か「iPhone 17 Air」になるとまことしやかにささやかれている。Appleは過去にも「mini」や「Plus」など、特別なサイズのiPhoneを実験的にリリースしてきた。しかし小型のiPhoneは売れ行きが悪かったため、「iPhone 13 mini」を最後にminiラインは廃止された。
薄型のデザインを実現するためには、おそらく何らかの制限を受け入れる必要がある。前述のように、正確なスペックが発表されるまでは、Galaxy S25 EdgeをGalaxy S25シリーズの他のモデルや他のスマートフォンと比較して論じることはできない。しかし詳細なスペックは分からないものの、少なくとも背面カメラは2眼(標準モデルは3眼)であることが分かっている。
スマートフォンメーカーはバッテリー容量を確保しつつ、多くのコンポーネントを搭載するために、スマートフォンの内部空間を最大化する努力を続けてきた。明らかに薄いスマートフォンの場合、当然内部の容積は小さくなるため、バッテリー駆動時間が短くなったり、機能が削られたりする可能性がある。8年以上も前の話になるが、2016年に起きた「Galaxy Note7」の発火問題は、薄型ボディに詰め込まれたバッテリーが原因だった。
サムスンはGalaxy S25 Edgeの薄さを、スペックよりスタイル重視の消費者に売り込もうとしているのかもしれない。これは同社が「Galaxy Z Flip」シリーズでとった戦略でもある。縦折り型の折りたたみスマートフォンは長年、「Galaxy S」シリーズの同等スペックの機種よりバッテリー駆動時間が短いという問題を抱えていたが、2024年発売の「Galaxy Z Flip6」でようやく肩を並べる(Galaxy Z Flip6のバッテリー容量はGalaxy S25の標準モデルと同じ4000mAh)。Galaxy Z Flip6は背面カメラを2つしか搭載していないが、スペックや機能ではなく、斬新なデザインで消費者を引きつけている。
「Galaxy S25 Edgeは、ケースをつけずに薄さを堪能したい人向けの端末なのだろう。ただし、(Galaxy S25)Ultraなどと比べれば、カメラ機能は大きく見劣りがする」と、Moor Insights and Strategyの主席アナリスト、Anshel Sag氏は言う(Galaxy S25 Ultraの背面カメラはメイン、超広角、2つの望遠の4眼構成)。
なぜカメラとバッテリーにこだわるのか。それは、この2つがスマートフォンの購入を検討している消費者が(価格やストレージ容量と並んで)最も重視するポイントだからだ。このことは2024年末に米CNETが実施した調査や2024年3月のDeloitteの報告書をはじめ、多くの調査で示されている。
「確かに、持ちやすいスマートフォンに対するニーズを示す調査結果もある。しかし説得力のある事実として、過去の販売データが示す通り、小さいスマートフォンは売れない。消費者が求めているのは大きな画面であり、長時間持つバッテリーだ」と、Techsponentialのプレジデント兼主任アナリストのAvi Greengart氏は言う。
予告映像を見る限り、Galaxy S25 Edgeは大きめのディスプレイを搭載しているように見える。Greengart氏の疑問は、この薄さを実現するためにサムスンが何をしたかだ。
「耐久性も重要な問題だ。JerryRigEverythingのZachなら真っ二つに折ってしまうのではないか」と、Greengart氏は言う。JerryRigEverythingは、スマートフォンの過酷な耐久性テストで知られるYouTubeチャンネルだ。「この薄さを実現するために、どんな機能が犠牲になったのか(ワイヤレス充電用のコイルは入っているのか)。ケースに入れても薄さを感じられるのか」
そもそも、なぜサムスンはGalaxy S25シリーズのために、他モデルよりも機能が制限される可能性の高い薄型スマートフォンを開発したのか。Galaxy S25 Edgeは、別のスマートフォンを作るためのたたき台として開発されたのではないか、とSag氏は推測する。
「このような薄型端末は、別の薄い折りたたみデバイスを開発するための実験台になり得る」とSag氏は言う。「そうでもなければ、冷却性能、バッテリー、超音波指紋センサー、前面カメラなど、薄さを実現するために妥協しなければならないものが多すぎる」
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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