数日前まで、筆者はパリに行ったことも、フランス語を話したことも、「Galaxy Z Flip6」を使ったこともなかった。光の都、最新の折りたたみスマートフォン、そして初めて国際線に乗った男。一見、無関係に見える3者をつないだのは「Galaxy AI」だ。
Galaxy Z Flip6(1100ドル、日本では15万9700円)は、「Galaxy Z Fold6」や「Galaxy Ring」とともに、サムスンが7月の新製品発表イベント「Galaxy Unpacked」でお披露目した最新の折りたたみスマートフォンだ。今回のUnpackedはパリで開催された。上司に現地で取材してくるよう頼まれたときは興奮したが、同時に不安になった。旅と仕事を両立できるだろうか。
Galaxy Z Flip6には、新しいヒンジ、新しいディスプレイ、新しいカメラなど、さまざまな見所があるが、最大の特徴の1つ、少なくともサムスンが最も強調していた点はGalaxy AIだ。スマートフォンメーカーはこぞって、AIがいかに生活を便利にするかを熱弁しているが、この主張は正しいのかを確かめたい気持ちもあった。初めてのパリでGalaxy Z Flip6を使ってみるのは、その格好の機会のように思われた。筆者はレビュー用のGalaxy Z Flip6をフル充電すると、パリの街にくりだした。さあ、Galaxy AIのお手並み拝見といこう。
まずは「Fringe」というカフェに向かった。スペシャルティコーヒーが好きなら、パリで必ず訪れたい店の1つだ。フランス語は話せないが、どうしてもコルタード(エスプレッソに少しのミルクを加えたアレンジレシピ)を試したかった。この店が、どんな豆を使っているのかにも興味があった。そこで早速Galaxy Z Flip6を取り出し、AI通訳ツールを起動して注文し、バリスタに話しかけた。
この通訳ツールを使うと、筆者が英語で話した内容がフランス語に翻訳され、バリスタ側から見えるカバーディスプレイに表示される。一方、筆者から見えるメインディスプレイには、バリスタがフランス語で話した内容が英語に翻訳されて表示される。この機能のおかげで、コルタードを注文し、ヨーロッパの小規模なコーヒーロースターについて学び、絶品のコルタードを味わうことができた。しかし、このすばらしい一杯と異なり、通訳ツールはすばらしいとは言えなかった。
カフェで注文をしたとき、スタッフがフランス語で言った単語やフレーズが相手の意図した通りに翻訳されず、おかしな英文が表示されることがあった。対応してくれたスタッフは、自分のアクセントのせいで通訳ツールがうまく機能しなかったと思ったようだが、筆者はGalaxy AIが原因ではないかと考えた。実際のところは分からない。理由が何であれ、AI翻訳のせいでスタッフに決まりの悪い思いをさせたことは申し訳なかった。
一方、このスタッフはGalaxy Z Flip6に大いに興味をそそられた様子だった。リアルタイムで翻訳できる機能のせいではない。折りたためるスマートフォンを初めて見たからだ。1分ほどGalaxy Z Flip6をいじった後、iPhone版はないのかとたずねられた。
レピュブリック広場でスケートボーダーたちの技を撮影した後は、写真を撮るためにサン・マルタン運河沿いを歩いた。目的は、Galaxy Z Flip6に新搭載された5000万画素のメインカメラを試すことだったが、写真への描き込みをもとに画像を生成し、元の写真に違和感なくなじませてくれるAI機能を試すための写真も必要だった。
まずは運河を撮った写真から1枚を選び、「ギャラリー」アプリを開く。写真の下にあるキラキラしたAIアイコンをタップし、「AIスケッチ」ツールが表示されたら、内なる5歳児を召喚して写真に2本の曲線を描き込んだ。運河の上を飛んでいく鳥をイメージしたつもりだ。
その後の処理はAIに任せた。
できあがった写真には、本物と見まがうカモメが加えられていた。これにはすっかり感心したが、この機能を使うべき状況が思いつかない。この記事を書いている時点でも、このツールの存在理由は謎のままだ。子供にとっては楽しいかもしれない。「誰かの顔にヒゲを描く」という昔ながらのいたずらのAI版だろうか。しかし何度か実際に試してみたが、残念ながら何も起こらなかった。
では、そもそも写真を使わず、ざっと描いたスケッチをそのまま一枚の絵に仕上げることはできるのだろうか。これも「AIスケッチ」を利用すれば可能だ。レストラン「Oma」を訪れたとき、Galaxy AIか、それともパリのベーカリーか、どちらがよりおいしそうなクロワッサンを作れるかを試してみた。
落書きをアートに変えるために、まずはサイドナビゲーションバーを開き、内蔵のスケッチパッドを起動した。次に、クロワッサンの輪郭をざっと描いて、ナナメの横線を何本か適当に入れた。そして「生成」ボタンを押すと、クロワッサンの水彩画が数パターン作成された。どれもクロワッサンのように見える(いや、何枚かはクロワッサンというよりエビに近かったかもしれない)。
折りたたみスマートフォンが、雑に描いた落書きを認識し、それが何を描いたものかを理解し、水彩画を生成するというのは驚くべきことだ。自分用のクリップアートを作りたい人にとっては便利な機能だろう。しかし、それ以外の人にとってはどうだろうか。筆者の場合、この機能を再び使うことはないと思う。
パリでは、米CNET用の動画も撮る必要があった。そのため、この日は終日、米CNETの優秀なビデオプロデューサーJide Akinrinadeが同行し、動画を撮影してくれた。Galaxy Z Flip6のポートレートモードでJideの写真を何枚か撮ってみたところ、とてもいい出来だったので、AIスケッチ以外のAI機能も試してみることにした。
Galaxy Z Flip6は、手書きのスケッチを本物のようなカモメに変えられるだけでなく、写真をアート作品に変えることもできる。このツールは「ポートレートスタジオ」と呼ばれ、コミック、3Dマンガ、水彩画、スケッチなど、複数のスタイルが用意されている。
早速Jideの写真をAI処理してみたところ、コミック風のアレンジを大胆に加えたイラストができあがった。しかし問題が1つあった。まったく本人に似ていない、ということだ。本人も「これはない」と同意してくれた。他の生成AIツールと同様に、Galaxy AIも時には失敗するのだろう。生成されたポートレートの1枚は、チャンス・ザ・ラッパーのようだった。
この日は後で、Galaxy Z Flip6やGalaxy Z Fold6をレビューしている他の記者とも話す機会があったが、みな同じような結果になっていた。ポートレートスタジオは確かに笑いを提供してくれた。その点は評価しよう。しかし1100ドルも支払ったのだから、もう少し自分に似た画像を生成してくれてもいいのではないか。
この日は、初めてGalaxy Z Flip6を使いながら、バッテリーの減りも記録した。充電が100%の状態から使い始め、1日の終わりの残量は46%だった。立派な数字だ。蒸し暑いパリで、大量の写真や動画を撮り、さまざまなAI機能を頻繁に使用したことを考えると、驚くべき結果と言っていい。
パリで学んだことは他にもある。例えば、7月のパリは日差しが強く、すぐに日焼けをしてしまうということだ。
Galaxy AIの威力も知った。筆者が描いた2本の線から、本物そっくりのカモメが生成されたときは驚いた。フランス語で話をしたり、コーヒーを注文したりするときも、Galaxy AIに助けられた。その一方で、Jideをチャンス・ザ・ラッパーに変えてしまうなど、おかしな面も見られた。AIには、使用を躊躇させる欠点がいまだ多くあることは否めない。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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