登場してからまだ2週間ほどしか経っていない「Apple Intelligence」。「iOS 18」と「macOS Sequoia」でこれまでにリリースされているその機能のほとんどは、通知の要約を生成するなどのテキスト関連と、メールを作成するときの入力の修正支援、賢くなった「Siri」の応答などに集中している。だが、生成人工知能(AI)を使って画像を処理する機能が1つある。「写真」アプリに新しく追加されたクリーンアップという機能だ。
クリーンアップは、画像を解析し、ユーザーが消去したいと考えそうな部分を提案してくる。背景の人物や車などを消去したうえで、消去した部分は周囲と同じようなパターンで埋める。修正の跡がほとんど判別できない場合もある一方、笑えるくらいお粗末な仕上がりになることもある。いろいろな種類の写真でこのツールを試してみた結果、クリーンアップの最大限の効果が得られる目安が概ね分かってきた。
意外にも、「iPhone」と「iPad」の写真アプリにはこれまで、クリーンアップのように小さな邪魔な部分を消去するツールが存在しなかった。「Mac」には基本的なレタッチツールがあって、一部の領域の修正は可能だった。対応するMacでは、クリーンアップがその機能に取って代わることになる。
注意してほしいのは、クリーンアップがApple Intelligenceの機能の1つであるということだ。対応する機種を使ったうえで、Apple Intelligenceのベータ版を利用できる状態でなければならない。該当するのは、Siriとデバイスの言語が米国英語に設定され、「iOS 18.1」が動作する「iPhone 16」シリーズと「iPhone 15 Pro」「iPhone 15 Pro Max」、「M1」以降のプロセッサーを搭載し「iPadOS 18.1」が動作するiPad(および「A17 Pro」プロセッサー搭載の「iPad mini」)、M1以降のプロセッサーを搭載し「macOS Sequoia 15.1」が動作するMacだ。
ほとんどの写真編集アプリに用意されている修正ツールは、近接するピクセルまたは類似のピクセルをコピーし、修正したい部分をそれで埋めるという仕組みだ。例えば、空に写ってしまったレンズフレアやゴミを除去したいといった場合には、優れた性能を発揮する。
クリーンアップツールは生成AIを利用する。AIで画像の全体を解析し、選択した部分を何で埋めるのが最適かを推測する。例えば、木の前に立っている犬を消去したい場合、生成AIは背景にある木の質感や木の葉について有している知識に基づいて、穴埋め部分を生成する。あわせて、光量や光の向きも考慮する。
生成AIの「生成」とは、画像を作成する方法に由来している。消去した部分を埋めるピクセルは、文字どおり無から作り出されるということだ。ソフトウェアは、ランダムなドットのパターンから作り始め、素早く生成を繰り返した末に、同じ場所に現れているはずと判断したパターンを作るのである。
ただし、生成AIを使うレタッチツールの成果は「状況によって変わってくる」の典型であることを覚えておこう。筆者が試したときも、難しい構図で良好な結果が得られることもあった反面、簡単に生成できそうに見えた部分でも残念な結果に終わったこともある。
クリーンアップツールで写真を修正する方法には、2つのアプローチがある。まず、機械学習を利用して、背景の人物や車など削除対象の候補を提案してもらうという方法だ。あるいは、消去したいと思う部分を自分でドラッグして、その部分を処理するよう写真アプリに指示する方法もある。手順を1段階ずつ説明すると、以下のようになる。
クリーンアップツールを使うのは主に、邪魔な部分を消去するときだろうが、そのほかにも利用できる機能がある。写っている特定の人物のプライバシーを守ることも可能だ。
対象の人物の顔を円で囲む。円を塗りつぶさなくてもかまわない。その円の中をなぞるようにスワイプする。囲んだ人の顔にモザイクパターンが適用され、顔が判別不能になる。
場面や領域によってクリーンアップがうまく機能することもあるので、どんなところで重点的に使うべきかを把握しておくといいだろう。
筆者が試した限り、概ね以下のような条件の修正は特に成功率が高い。
全般的に、ドラッグして囲むときには、消去したい部分の反射や影まで一緒に囲むようにしよう。ありがたいことに、写真アプリは大抵の場合、そうした部分まで取り込んで、消去する対象として認識してくれる。
選択する対象によっては、クリーンアップでうまく消去できずイライラしてしまうこともある。以下のような場合だ。
対応するデバイスがあってベータ版プログラムに登録しさえすれば誰でも使えるとはいえ、クリーンアップアップを含むApple Intelligenceの機能は、技術的にはまだベータ版であることを忘れないようにしよう。
良好な結果が得られることはあるものの、Appleが今後のリリースで改善してくれると期待したい点もいくつかある。例えば、置き換えられた部分が不自然で、AIによる修正とは思えないこともある。実際にそこにあったものを判別して置き換え部分を生成するアルゴリズムの処理が向上することが望まれる。
ユーザーエクスペリエンスにもまだ課題がある。クリーンアップツールによる消去に満足できない場合、取り消すか、編集をすべてリセットするしか選択肢がない。取り消して再試行した場合でも、既に処理したのと同じ結果にしかならない。これと対照的なのが「Adobe Lightroom」で、修正操作のたびに3つの候補が提示され、候補が気に入らなかった場合は、違う仕上がりを生成させることもできる。
Appleのクリーンアップや、類似する他のAIベースの消去ツールは、ユーザーが期待する水準のせいで苦労しているという面もある。実際に素晴らしい性能を発揮しうることが分かったので、どんな編集機能についてもハードルが上がっているのだ。ツールが混乱して、全く違うピクセルを当てはめてしまったときは、もっとうまく処理してくれることを期待してしまう。次のリリースでは、それが実現することに期待したい。
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この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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