Motorolaは、スマートフォンに簡単な指示を伝えるだけで、ほぼどんなことでも実行できるようにしたいと考えている。これは、米国時間10月15日に開催された親会社レノボのカンファレンス「Tech World '24」で披露されたビジョンで、人工知能(AI)を使用して現実世界のタスクを実行するというものだ。アプリを手動でスワイプして、タップ操作で詳細を指定する代わりに、簡単な指示を伝えるだけでコーヒーを注文できる。そんな日が来るかもしれない。
Motorolaのアイデアは、AIを通じてスマートフォンの操作方法を変えようとしているテクノロジー企業の最新の事例にすぎない。Googleは同社のデジタルヘルパー「Gemini」をアップグレードし、画面上のコンテンツに関する質問に答える機能やほかのアプリと連携できる機能を追加した。Appleもまもなく、「iPhone 16」シリーズと「iPhone 15 Pro」向けに、改良された「Siri」をはじめとしたAI機能群「Apple Intelligence」の提供を開始する予定だ。
ただし、Motorolaのコンセプトは、AppleやGoogleの取り組みとは多少異なる。Motorolaが行っているのは、同社が「Large Action Model」(大規模アクションモデル、LAM)と呼ぶテクノロジーの実験だ。LAMはユーザーの周囲の環境を理解することが可能で、クエリーに対して、単にテキストや画像ベースの応答を生成するのではなく、さまざまなアクションを実行できると期待されている。
こう聞くと、rabbit inc.がハンドヘルド型デバイス「rabbit r1」で使用しているとするテクノロジーに似ているようだが、rabbit r1は期待外れの製品だとして、多くの批評家に酷評されている。スタートアップ企業のBrain.AIも、スマートフォンでタップやスワイプを何度も行う代わりに簡単な指示を伝えるだけで、フライトの予約などのタスクを実行できる同様のテクノロジーを披露している。
LAMの背後にある目標を説明するとき、Motorolaが挙げていた例の中にこんなものがあった。ユーザーがアイスアメリカーノを注文すると、MotorolaのAIが一番近いカフェを自動的に見つけて、ドリンクの準備ができたら通知してくれる、というものだ。このコンセプトを紹介する動画では、女性が「アイスアメリカーノを注文して」とワイヤレスイヤホンに話しかけると、LAMがスマートフォンでそのアクションを実行していた。
Motorolaによると、このテクノロジーはタクシーの予約やオンライン予約などのタスクにも使用できるという。将来的には、アラームの設定やプレイリストの選択といった日常的なタスクの自動化に利用できるようになる、と同社は考えている。Motorolaのプレスリリースによると、例えば「Uber」の配車を手配したい場合、行きたい場所を伝えるだけで、MotorolaのAIシステムがユーザーの位置情報を利用して、残りのタスクをユーザーに代わって処理することが可能だという。このAIシステムを使用すればするほど、ユーザーの好みをより深く理解できるようになるはずだ、とMotorolaは言う。
このコンセプトは、スマートフォンやそのほかのスマートデバイスをよりプロアクティブなものにしようという、大きな取り組みの一部である。
Future Today Instituteの創設者で最高経営責任者(CEO)を務める定量的フューチャリストのAmy Webb氏は米CNETとの過去のインタビューで、今日のスマートフォンについて、「大部分において、やりとり、プロセスは今でも手動で行われている。ユーザーは画面を見て、テキストを入力しなければならない」と述べている。
ただし、Motorolaのこのテクノロジーは現時点では概念実証にすぎないため、今後同社から発売されるスマートフォンに搭載されるのか、搭載されるとしたらいつなのかは不明だ。しかし、それと並行して、MotorolaはほかのAI機能の開発も進めている。
通知の要約を表示する「Catch me up」や画面上の情報を保存する「Remember this」など、すでに発表済みの「moto ai」ソフトウェアツールは現在ベータ段階にあり、招待の人数は年間を通じて拡大する予定だ。スマートフォンやPC、タブレットをもっと簡単に統合できるMotorolaのプラットフォーム「Smart Connect」も、自然言語でデバイスを操作する機能やデバイス間で個人データを共有する機能がアップデートで追加される予定だ。
Motorolaの発表は、大手テクノロジー企業各社がスマートフォンのソフトウェアにAIを注入して改革しようとしていることを示す兆候の1つだ。しかし、スマートフォンの世界市場で合わせて約37%のシェアを誇るAppleとサムスン(International Data Corporation(IDC)調べ)も、前者がOpenAI、後者がGoogleと提携して、それぞれのAIの目標を積極的に追求している。つまり、この市場において比較的小規模なプレーヤーであるMotorolaのような企業が注目を集めるには、本当に魅力的な機能やサービスを提供しなければならない。
AIが大々的に宣伝され、大きな注目を集めているにもかかわらず、消費者にスマートフォンをアップグレードしようと思わせるほど強力なスマートフォン機能は、まだ登場していない。その証拠に、米CNETが先日YouGovと共同で実施した調査では、回答者の4分の1は、AI機能を便利とは感じておらず、これ以上AI機能がスマートフォンに統合されることは望んでいないとしていた。
しかし、Motorolaのようなコンセプトが現実のものとなれば、こうした状況は変わるかもしれない。この1年で登場した生成AIの多くは、基本的に、写真編集や言語翻訳、画像作成など、かなりニッチな用途を対象としている。そのような生成AIツールと比べると、ユーザーの代わりにさまざまなタスクを実行してくれるアシスタントというのは、意味のある価値をもたらしてくれるのではないだろうか。もちろん、意図したとおりに機能してくれたらの話だが。
Motorola showcases the versatility of tomorrow’s AI at Lenovo Tech World ‘24この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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