Google Pixel 9シリーズを徹底解説--日本への本気度が伝わるが残念な点も

 グーグルがスマートフォン「Google Pixel 9」シリーズで、日本市場に攻勢をかけている。

 現在、スタンダードな「Google Pixel 9」に加え、上位モデルの「Google Pixel 9 Pro」と大きいサイズの「Google Pixel 9 Pro XL」、折りたたみの「Google Pixel 9 Pro Fold」の4モデルが発売中で、キャリアではNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクが取り扱っている。

  1. 日本市場を意識した「Pixel 9」シリーズ--更なるシェア拡大へ
  2. 独自開発の新チップ「Google Tensor G4」でAI機能強化
    1. 生成AI「Gemini」標準搭載--日本語未対応機能も
    2. カメラ機能をチェック--撮影向けAIの実力は
  3. ハード面での強化も

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日本市場を意識した「Pixel 9」シリーズ--更なるシェア拡大へ

 「Googleストア」でのそれぞれの直販価格(以降、価格は全て税込)は、Pixel 9が12万8900円~、Pixel 9 Proが15万9900円~、Pixel 9 Pro XLが17万7900円~、Pixel 9 Pro Foldが25万7500円~。世界のGoogleストアの販売価格を調査したMM総研によれば、この価格はPixel 9シリーズを販売する22の国・地域の中でも1~3番目の安さという。

 一方キャリアでも、ソフトバンクで「新トクするサポート(プレミアム)」を利用すると、Pixel 9の実質負担額が1万9836円(「早トクオプション」を適用して13カ月目に端末を返却する場合)など、攻めた価格設定が注目を集めている。円安が続いているにもかかわらず、日本でPixel 9シリーズが安く買えるのは多分に戦略的なもので、グーグルが好調な日本市場で、さらなるシェア拡大を狙っているからにほかならない。

 たとえば今回、Pixel 9 Pro シリーズは前モデルから大きくサイズを変更している。前モデル「Google Pixel 8 Pro」は、ディスプレイが約6.7インチのワンサイズだったが、今回は約6.3インチのPixel 9 Proと、約6.8インチのPixel 9 Pro XLの2サイズ展開になった。グーグルによれば、これは高性能かつコンパクトなスマートフォンを求める、日本市場を意識した変更とのこと。前述の価格もそうだが、このサイズ展開からも、日本市場にかけるグーグルの本気が伝わってくる。

(左から)Pixel 9、Pixel 9 Pro、Pixel 9 Pro XL、Pixel 9 Pro Fold (左から)Pixel 9、Pixel 9 Pro、Pixel 9 Pro XL、Pixel 9 Pro Fold
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 今シリーズでは、Pixel 6以来の大きなデザイン変更も行われている。前モデルまでは背面から側面にかけてのエッジがラウンド状になっていて、握ったときに角があたらないデザインだったが、今モデルでは前面、背面、側面のいずれもフラットになった。一方で、4つ角はより丸くカットされ、正面からの見た目がiPhoneに近づいた印象だ。

 背面カメラの出っ張りも、前モデルまでは端から端まで横断するバー状だったが、今モデルではフラットな楕円形になっている。背面のガラスは指紋が付きにくいさらっとした触り心地で、側面のメタルフレームはポリッシュ仕上げ。さらに背面カメラ部分のメタルはマット調だ。サイズの近いPixel 9 Pro XLとPixel 8 Proを比べると、実際には0.3mmほど薄くなっているのだが、両面がフラットで角がある形状となった分、持ったときには少し厚みを感じる。

 狭額縁になった影響か、たとえばPixel 9 Pro XLのOLEDディスプレイは、前モデルの約6.7インチから約6.8インチへと、ほんの少し大きくなっている。QHD+(1344×2992)の解像度や、コンテンツに応じて1~120Hzをサポートするリフレッリュレートなどは前モデル同様。一方で最大輝度は2000ニト(ピーク輝度3000ニト)、コントラスト比は200万対1以上と、太陽光下で見やすよう、より明るくなった。

 折りたたみのPixel 9 Pro Foldではさらに、前モデルの「Google Pixel Fold」から、外側、内側のディスプレイサイズやアスペクト比が、大きく変更されている、折りたたんだ時はPixel 9 Proと同じ約6.3インチで、アスペクト比は20対9。開くと、前モデルではやや横長の7.6インチだったが、今モデルではほぼ正方形の8インチ(2076×2152)のOLEDディスプレイが利用できる。画面が大きくなっただけでなく、ベゼルもぐっと細くなっているので、その分だけ迫力や没入感が増したように感じる。ヒンジの構造も変更されていて、より軽い力でパタンと気持ちよく開けるようになった。

 Pixel 9シリーズではカラーバリエーションも増えていて、Pixel 9、Pixel 9 Pro/Pro XLは4色展開。Pixel 9 Pro/9 Pro XLでは写真の「Hazel」のほか、「Porcelain」「Rose Quartz」「Obsidian」が選べる。Pixel 9 Pro Foldは、写真の「Obsidian」のほか、「Porcelain」の2色が用意されている。

独自開発の新チップ「Google Tensor G4」でAI機能強化

 どの機種もチップセットにはグーグルが独自開発する、「Google Tensor G4」を搭載。最新のAndroid OSがいち早く利用できるのに加え、オンデバイス処理とクラウドを併用して、多彩なAI機能が利用できるのが、Pixelシリーズの大きな特徴だ。今シリーズではカメラに、AIを用いた新たな撮影モードが追加されているほか、被写体の位置や大きさ、背景を自由に変えられる「編集マジック」でできることも増えている。音声の自動文字起こしや通話のスクリーニング、通訳や「かこって検索」といった機能に加え、グーグルが開発する生成AI「Gemini」を標準搭載する。

生成AI「Gemini」標準搭載--日本語未対応機能も


 Geminiでは、音声またはテキストで投げかけたさまざまな質問や要望に答えてくれるほか、マルチモーダルに対応しているので、たとえば写真を使って指示をすることもできる。食材をまとめて写真に撮って、それらを使うレシピを提案してもらうといったことも可能だ。

 Pixel 9 Pro/Pro XL、Pixel 9 Pro Foldには、Geminiの有料版「Gemini Advanced」や2TBのオンラインストレージが利用できる、「Google One AI プレミアムプラン」(月額2900円)が、6カ月間無料となる特典も用意されている。

 Gemini Advancedでは、最新のAIモデルを使用できるほか、一度に処理できる情報量も多くなる。指定すれば自分の「Googleドキュメント」「Gmail」内の情報も参照でき、画像のほかにドキュメントファイルやデータファイルをアップロードして、要約したり、欲しい情報を引き出すこともできる。

 Pixel 9シリーズが発表されたイベント「Made by Google」では、このほかにも、通話アプリに統合された文字起こし機能「Call Notes」や、スクリーンショット内の情報を簡単に検索できる「Pixel Screenshots」、画像を生成できる「Pixel Studio」などの機能が利用できるとアナウンスされている。

 だが残念ながら、これらのAI機能は今のところ日本では使えない。Geminiとより自然に会話ができる「Gemini ライブチャット」という機能も提供されているが、これも10月現在は、言語を英語に設定しないと利用できない。グーグルでは10月3日付のブログで、今後数週間以内にGeminiライブチャットが40言語に対応すると明らかにしているが、日本語はサポートされるのか。日本市場に攻勢をかけているのに、まだ日本では使えない機能が多いのは、なんとも歯がゆく残念なところだ。

タップすると会話画面に切り替わる タップすると会話画面に切り替わる
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カメラ機能をチェック--撮影向けAIの実力は


 一方でカメラでは、AIを活用した新しい機能が利用できる。ただしハードウェアそのものは、前モデルから大きく変わっていない。たとえばPixel 9 Pro/9 Pro XLの、50メガピクセル(F1.68)の広角、48メガピクセル(F1.7)の超広角、48メガピクセル(F2.8)の光学5倍望遠のという構成は前モデルとほぼ同じ。

 Pixel 9 Pro Foldも、48メガピクセル(F1.7)の広角、10.5 メガピクセル(F2.2)の超広角、10.8 メガピクセル(F3.1)の光学5倍望遠と、いずれも明るさや画角に多少の違いはあれど、劇的な進化は見られない。

 対してソフトウェアではいくつかの進化があり、撮影モードにAIを用いた「一緒に写る」が追加されている。これはその場で撮影する2枚の写真を合成することで、シャッターを押す人を交代しつつ、一緒に写したかのような写真が撮れるというもの。

 「一緒に写る」モードにしてシャッターを切ると、撮ったシーンの残像が表示され、それに新たな被写体を重ねることで、撮影者を交代しつつ集合写真が撮れる。2枚の写真を合成して、1枚にするしくみだ。

「一緒に写る」モードで1枚目を撮影 「一緒に写る」モードで1枚目を撮影
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「一緒に写る」モードで2枚目を撮影 「一緒に写る」モードで2枚目を撮影
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合成された集合写真(Pixel 9 Pro Foldで撮影) 合成された集合写真(Pixel 9 Pro Foldで撮影)
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 たとえば2人で一緒に記念写真を撮りたいけど、セルフィーだと風景が収まらない。だけど、近くにシャッターを押してくれそうな人がいないし、スマホを置いて撮れそうな場所もない、といったシーンで重宝しそうな面白い機能だ。

 カメラではこのほかにも、パノラマ撮影の方法が変更され、夜景のパノラマの撮影が可能になったほか、AIを用いた超解像ズームがさらに進化し、高倍率ズームでも実用に耐える写真が撮れるようになっている。前述の通り、編集マジックでできることも増えていて、画角などもあとから自由に調整できる。定評のある夜景写真も、より明るく印象的な写真が撮れるようになった。スマホのカメラは今、ハードウェアの競争からソフトウェアの競争へとシフトしているが、そのことをより実感できるアップデートとなっている。

パノラマ夜景がきれいに撮れる(Pixel 9 Pro Foldで撮影) パノラマ夜景がきれいに撮れる(Pixel 9 Pro Foldで撮影)
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ハード面での強化も

 もちろんハードウェア的な進化もある。たとえば今回、指紋認証は光学式から超音波式に変更されている。また前モデルではアップデートでの対応だった、DisplayPort Alternate Modeでの映像出力にも対応。USB type-C端子から、有線接続によるダイレクトな映像術力が可能になっている。

 最新のAI機能を備え、ソフトウェア的、ハードウェア的にも進化を遂げたPixel 9シリーズ。円安の中でも価格を抑えるなど日本市場への本気度が感じられる一方で、日本語ではまだ使えない機能も多いので、このあたりが早くキャッチアップされることに期待したい。

 もうひとつ、日本において気になるのが「スマホ用電子証明書搭載サービス」、いわゆるマイナンバーカード機能への対応だ。デジタル庁から発表されている情報では、2025年の2月以降の対応となっていて、他機種に比べるとやや遅い。ちなみにマイナンバーカード機能がiPhoneで使えるようになるのは、来年の春頃になる見込み。

 また、iPhoneの本格的なAI機能である「Apple Inteligence」が日本で利用できるようになるのも、2025年以降と少し先になっている。AIではアップルを大きく先行するグーグルだが、日本でもこのまま先行し続けることができるのか。「Made by Google」でアナウンスされた新しいAI機能が、いつ日本語で使えるようになるのかは、その観点からも大事になってくるだろう。


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