中国小米科技(シャオミ)が10月11日、日本での投入を発表した新しいスマートフォン「Xiaomi 14T」シリーズ。前機種「Xiaomi 13T」シリーズでは諸事情により実現がかなわなかった、ライカカメラ監修のカメラを搭載して発売されるXiaomi 14Tシリーズは、非常に高い性能を備えながらシャオミらしいコストパフォーマンスの高さが大きな特徴となっている。
そこで注目されるのは、発売されて間もない米アップルの「iPhone 16」シリーズと比べて“買い”なのか? ということではないだろうか。ここでは既にオープン市場向けに価格が公開されている上位モデルの「Xiaomi 14T Pro」と、同じ“Pro”が付く「iPhone 16 Pro」「iPhone 16 Pro Max」を比較しながら、そのお買い得度を探ってみたいと思う。
ただ、執筆時点でXiaomi 14T Proはまだ発売されていない。一連の比較は実物によるものではなく、現時点で各社が公表している性能などを基にしたものであることをあらかじめご了承頂きたい。
まずは多くの人が注目するであろうカメラに関してだが、Xiaomi 14T Proは広角・超広角・望遠(光学2.6倍相当)の3眼構成で、いずれもライカカメラ監修のレンズを搭載。広角カメラと望遠カメラは5000万画素のイメージセンサーを備えており、高い画素数を生かしてそれぞれ光学2倍、5倍ズームに相当するロスレスでのズーム撮影が可能となっている。
加えて広角カメラは独自の「Light Fusion 900イメージセンサー」を搭載。後述するがチップセットの高い性能も活用することによって、暗所にも強いカメラ性能を実現している。
一方でiPhone 16 Proは、広角・超広角・望遠カメラと3眼カメラである点は共通しているが、こちらは望遠カメラが光学5倍ズーム相当となっており、ロスレスで撮影できるズームの幅は近しいが2.6倍ズームはデジタルズームとなる。撮影の幅という点ではXiaomi 14T Proに軍配が上がるが決定的な差がある訳ではないし、iPhoneも暗所での撮影には定評があるだけに、スペックだけでは大きな違いは見出しにくい。
また動画撮影に関しても、Xiaomi 14T Proが8Kでの動画撮影に対応する一方、iPhone 16 Proは4K画質で120fpsでの撮影が可能であるなど、それぞれに優位性を持つ。全体的に決定的な優劣はつけにくいというのが正直な所だ。
ただハード面でいうと、iPhone 16 Proは撮影をしやすくする独自のインターフェース「カメラコントロール」が新たに追加され、新しい操作性を実現しているほか、ARなどのアプリ製作に役立つLiDARを搭載。こうした点は他のスマートフォンにはない、iPhone 16 Proの大きな優位性といえるだろう。
続いて性能面を確認すると、Xiaomi 14T Proは台湾メディアテック製のハイエンド向けチップセット「Dimensity 9300+」を搭載しており、RAMは12GB、ストレージはモデルによって256~512GBとなる。実際の性能を確認できている訳ではないが、搭載するCPUやGPUなどの性能を確認する限り、クアルコムの最新ハイエンド向けチップセット「Snapdragon 8 Gen 3」に近しい、かなり高い性能を持つものと考えられる。
また、このチップセットはAI関連の処理にも力が入れられており、メディアテック独自の「NPU 790」を搭載している。Xiaomi 14T Proではこれを活用し、オンデバイスでのAI処理を活用した機能にも力が入れられているようだ。
実際にXiaomi 14T Proに搭載されている、Androidをベースとした独自OS「HyperOS」の最新版では、オンデバイスとクラウド双方のAI技術を活用した「Advanced AI」を搭載。オンデバイスのAI技術を活用したものは一部に限られるものの、画像の編集や生成、翻訳や文字起こしなどといったAI関連機能を発売当初から、しかも日本語に対応した状態で利用できる点は大きな優位性となるだろう。
とりわけAI関連の機能に関して言えば、iPhone 16 Proなどが対応するアップルの「Apple Intelligence」の提供時期が遅く、日本語の対応は2025年になるとされている。iPhone 16 ProにもAI関連の処理性能を向上させた、高性能の「A18 Pro」が搭載されているのだが、その性能をすぐフルに生かせない点は少なくとも日本においては不利だ。
それ以外の機能・性能面を確認すると、Xiaomi 14T Proは6.67インチのディスプレイを搭載し、最大輝度は4000ニトで144Hzのリフレッシュレートに対応。iPhone 16 Proと比べ全体的に高い性能を持つが、一方でiPhone 16 Proは画面サイズが2種類存在し、6.3インチのiPhone 16 Proと6.9インチのiPhone 16 Pro Maxの2つから選ぶことが可能だ。
海外では一般的に大画面であるほど有利とされるが、日本では小型なスマートフォンのニーズも根強く、大画面であることが必ずしも優位性につながる訳ではない。利用者の選択肢の幅広さという点で、iPhone 16 Proに軍配が上がるだろう。
多くの人が気にするバッテリーに関しては、iPhone 16 Proの容量が非公表となっているので比較しづらい部分もある。ただ、Xiaomi 14T Proはバッテリー容量が5000mAhと大きいだけでなく、120Wの急速充電にも対応しており、19分で100%という驚異的な充電速度も維持。加えて新たにワイヤレス充電に対応するなど、弱点をしっかり補ったことで優位性は大きく高まったといえるだろう。
一方でボディ素材に関しては、Xiaomi 14T Proが本体カラーに「チタンブルー」「チタングレー」「チタンブラック」と、チタニウム素材を採用したiPhone 16 Proを意識したカラーを取り入れているようだ。ただ実際の本体フレームに用いられているのはチタニウムではなく、アルミニウム合金である点に注意が必要だろう。
最後に価格について触れておくと、Xiaomi 14T Proのオープン市場向けモデル(いわゆる“SIMフリー”)の価格(以降、価格は全て税込)は、ストレージが256GBのモデルで10万9800円、512GBのモデルで11万9800円となる。iPhone 16 Proの価格はストレージが128GBのモデルで15万9800円、256GBのモデルで17万4800円。iPhone 16 Pro Maxは同じストレージ256GBモデルで18万9800円となる上、512Gモデルではいずれも20万を超えていることから、価格差は圧倒的といえるだろう。
ここで1つ断っておきたいのは、Xiaomi 14T Proはシャオミの中では最上位のモデルではないということ。シャオミのフラッグシップモデルは「T」が付かないモデルで、日本で発売されたものであれば「Xiaomi 14 Ultra」がそれに相当する。Tが付くシリーズはどちらかといえば、「iPhone 16」などiPhoneのスタンダードモデルに近い位置付けなので、本来であればそちらと比較するのが筋、ということになる。
ただここまで触れてきたように、性能面だけを見れば、Xiaomi 14T ProがiPhone 16 Proにある程度対抗できる性能を持ち合わせていることが分かる。それはシャオミが、消費者が重視する要素に重点を置いて性能を大幅に強化する一方、そうではない点は徹底してコストを抑えるメリハリによって、高いコストパフォーマンスを実現することに非常に長けているからこそでもある。
そのためApple Payの完成度や、衛星通信によるSOSが可能な点など、ソフトウェアやインフラ面も含めた総合力でいえば依然iPhone 16 Proに多くの優位性があることは間違いない。
Xiaomi 14T ProがiPhoneにある程度対抗し得るハード性能を持ちながら、圧倒的に安い価格を実現していることは確かなだけに、スマートフォンにある程度の知識を持ち、なおかつ物価高騰でより価格を重視するようになった消費者が、こうしたモデルを選択する割合も今後高まっていくのではないだろうか。
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